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勇者ギルド in 魔術学園都市 49




「ふんで俺に助けを求めてきたと」




 ラプサムは不機嫌そうに言った。七星派の重鎮は自分が座っていた椅子をラプサムに譲り、ラプサムにひれ伏せていた。


 ラプサムの背後にはレミアとヘレンがその男を睨むように立っていた。


 マフィアのドンの雰囲気をもったラプサムが呆れた表情になっていた。


 七星派は魔王教を支援する代わりに、魔王教の魔王を呼び出す秘術について研究していた。


 その支援というものが、彼らの活動には参加はしてはないが、金や場所の提供を行っていたということだ。


 というのも魔王教の魔王を呼び出す手段が七星派からすると精霊を呼び出す、もしくは作る手段ではないかと睨んでいたので人造精霊を作り精霊を完全に掌握しようという流れだった。


 だが、その願いも魔王教が勇者に正しくは、妻に手を出し、結果的に子供が流産し、勇者の怒りを買った。


 そのため、勇者は復讐鬼となり魔王教の者たちを次々に殺していったのだ。これを世間に向けて勇者が発表しても勇者は“勇者の剣”を返上し、堕ちるということを宣言した。


 経緯を考えれば、子供を殺された親だ。そうなってしまっても世間では認められることだろう。


 そして少し調べれば、自分との繋がりもすぐにでもわかることなど目に見えていた。


 世界を救う勇者に手を出したものの協力者なのだ。どんな理由があっても許されることではない。殺されても文句は言えない。


 だが、そこはわずかな伝手を頼りにラプサムを頼ったのだ。


 あの勇者が軍や傭兵如きに倒されるとは思わない。それほどの実力を今回彼は示してしまった。


 彼の手元にはあの最強の剣とも言われている勇者の剣がないというのに、その強さを証明したのだ。


 同時に勇者の剣などなくてもこれほどのことができると・・・


 それは同時に七星派の危機をさしていた。


「そうだ。我々が死ねば、お前の発言権もなくなるぞ」


「そうか」


「そうだ」


 ラプサムはあまり興味がなさそうな感じであった。冷たい目で見つめていた。


「で?」


「へっ?」


「だから、この国に対して発言権がなくなったからってなんなんだ?」


「お前は“七星”の持ち主だろ?」


「元な。“七星”の代わりに駄々っ子をもらったからな」


「それでもお前は・・・」


「そうか、俺も世界に力を示さないとな」


 ラプサムは立ち上がった。


「あいつが“炎帝”なら、俺は“氷王”だ」


 密かに言われているガルドルの二つ名を呟き、ラプサムは嬉しそうにその名を言った。


「何を言っている?氷王?お前はすべての属性を支配するのでは?」


「そんなの別の奴にやらせろよ」


 ラプサムはめんどくさそうに言った。


「ばかな、“白雪”を使いこなしているつもりか?あれは呪われた武器だぞ。持ち主を永遠に凍らせ続ける・・・」


 すると床に霜が降りていた。


「凍らせる?誰を?」


 ラプサムが言った。何故か、床だけが凍っていた。凍った床が跪く男の体温をどんどん奪っていた。


「なんだこれ?」


「ああ、凍るのはお前のようだな」


「バカな永遠に凍り付かせる能力をコントロールし続けているのか?」


「いい訓練になるぜ。このじゃじゃ馬は」


 ラプサムは言った。


「交わっている時も怒ってやってくるくらいだらな」


 そういうとレミアの顎を撫で、ヘレンの足をすっと触った。


「えっち」


「・・・」


 レミアは言葉で返し、ヘレンは恥ずかしそうにした。二人とも拒否するようなことはなく、自らすり寄る感じすらある。


「ふざけんな」


 とうとう、怒って立ち上がった。


「平民での貴様らを此処までにしたのは誰のおかげだと思っている。貴様が“七星”に選ばれたから今まで我々は協力をしたまでだ。その恩を忘れおって!」


「というか、俺、いや、俺らが“勇者”パーティーに入ると決まった地点で魔王教と手を斬らなかったあんたらの落ち度だと思うが・・・」


「だとしてもだ。何故、俺がここまで頼んでいるのにそれを受け入れてくれない」


「というか、資金提供くらいであいつがお前らに手を出すとは思えんが・・・」


 ラプサムが言った。


「俺やフェミンが調べているなら資金の出先を調べ、すべて殺すこともできるが、アレスはそこまではやらんだろうな。ただ、あんたらが出てくるなら話が違うだろ」


「お前らは協力はしていないと?」


「アレス個人の復讐だ。俺はすくなくとも協力はしていない。お前らの相手で忙しかったからな」


「そうか・・・」


「いちいち、呼び出すなよ。ああ、俺でも今のアレスを相手にすんのは面倒だからな」


 ラプサムが言い終わると目を細めた。


「ほう、おもしろいな・・・」


 すっと、ラプサムの前に二人の男女が現れた。アレスとトキアの二人である。


「殺気がすげえなあ。アレス」


「彼らに協力する気は?」


「義理がないわけではない。協力をしてもいいが、お前が相手だとな」


 ラプサムは困ったように言った。


「僕も自分の力を試したいと思っていたんですが、なかなか強敵がいなくて・・・」


「魔術学園都市の最高峰はガルドルか、俺だからな」


 ラプサムがのんびりと返した。


「じゃあ、こんなのどうかしら、ラプサムと私たちが全力で戦って、アレス達を止めるから、あなたはこの場は必死に逃げなさい」


「そうだな。ギルド内での実力を確かめないとな。アレスは剣を失ったし、俺の方が強いかもよ」


「安心してください。僕にはこの刀がありますから」


 とアレスは黒い刀身の刀を見せた。


「蛮族の武器じゃねえか。大剣使いが使えるのか?」


「むしろ、勇者の剣が僕の体格に合わなかったと思いませんか?」


「ああ、ちょっと、振り回されてるもんな」


「いきますよ」


「俺もお前に本気を出す」


「がんばって、王女様は私たちが何とか抑えるから」


 レミアが言った。ヘレンも静かにうなづいた。


「ひぃ」


 男は逃げ出すべく、窓から逃げて行った。ちなみにここは塔の五階それなりの高さがあるが彼もそれなりの腕の魔術師だ、死にはしないだろう。 


「さて、始めるか」


「ええ」


 元“勇者”と元“七星”がぶつかった。


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