勇者ギルド in 魔術学園都市 48
「これが真の俺だ!」
それは嬉しそうに叫んだ。
シロキ・カズヤは自信満々だった。そして、その力は数倍に膨れ上がっている。
「見せてもらったぜ。メディシン家とその力。おそろしいなぁ」
男が嬉しそうに叫ぶと三人向けて何かをした。ようだった。
「はあ?なんで今ので死なねえ?なんで、切られねえ?」
思った通り力が働かなったらしくカズヤが驚きの顔になった。
「いや、俺がいるし」
といいだしのは“嵐”の名を持つ騎士だった。
「そもそも、ここの空気を支配しているのは俺だ。お前が使ったと思ったとしても、実質俺が支配しているから発動すらしてないぞ」
「何を・・・っていうことをきかない。なんで?」
「だから、支配」
メディシン卿夫人姿が消えた。カズヤの顔色から余裕が消えた。
「うそだろ?なんで、俺もあんた並みに動いてんのになんで俺は斬られている?」
カズヤは腹の傷を見て悔しそうにしていた。
「早く動けるのと、私のように動けるのは違う」
いつのまにかメディシン卿の背後に立った夫人は嬉しそうに笑い、メディシン卿の肩に手を置いた。
「くそう、なんでだよ。俺は強くなったんだろ?くそう、いけ俺の怪物!」
三人の背後に黒い怪物が立ち上がった。立ち上がった瞬間、あっさりバラバラにされてしまう。
「何?」
「驚くなよ。俺の力が使えるなら、これくらいやってもらわないとな」
“嵐”がため息をつくように言った。
「ふざけるな!なんだよ、お前ら。強すぎるだろ?人間なのか?」
「いやあ、俺まともだから」
“嵐”が困ったように言った。そして、後ろを見て人間を辞めているのはこいつらといいたげである。
「義兄さんの方が世間では人間をやめているんだから、そんな風に言わないでよ」
「そうですよ。たった、一人で万軍を撃破できるのは義兄さんだけですよ」
と、やたらと距離の近い夫婦が言った。妻、夫ともどもいいたい放題だ。それを見て、“嵐”は大きくため息をついた。
「いやいや、お前らに言わると心外なんだよな。俺が倒せるのは人間限定だし、お前らみたいにやたらとでかい化け物は倒せんぞ」
「御冗談を・・・」
「ええ」
義兄の言葉に納得できていない二人だった。どっちが化け物かと言い合いになっている。カズヤを放置して・・・
「ふざけんな。お前ら、俺を前にして・・・」
カズヤは全身に力をためようとした。だが、力が膨れ上がらない。魔力が霧散していくのだ。
「これはいったい・・・」
「もういいかい?」
気が付けば、目の前にメディシン卿がいた。いや、黒い騎士が立っていた。
いつの間にか黒い騎士の鎧をまとっていたのだ。一見誰だがわからないが、一人いなくなって一人が現れた。普通に考えるならいなくなった人物と同一と考えるべきだろう。
「いつのまに、そんな姿に・・・」
「ひみつ」
メディシン卿は黒い鎧の拳を突き出した。それと同時にカズヤの体を黒い槍が突き抜けていた。
「くそう・・・なんで俺が死ぬんだよ」
「運命」
メディシン卿が言った。
「チートじゃないのかよ。魔王ってのは、なんで、お前らみたいなモブに負けんだよ。俺が・・・俺が主役だろ?なあ、違うのか?」
カズヤはそういうとその身が黒いちりとなって消えた。
「ふざけるな」
その一言を残して、カズヤは消えて言った。
「悪は去った」
“嵐”はのんびりといった。
「あんなことがあって、それだけですか。相変わらずですね」
「義兄らしい」
「ふっふふ、正義はなった。さて、帰るぞ」
「お先にどうぞ、私の方が早く着くので・・・」
「くっそう」
かまってくれなくて寂しくなったのか、義兄は家を猛烈な勢いで飛んでいった。きっと、奥さんがうまいこと癒してくれるはずだ。
「久しぶりだね」
「明日は二人でゆっくりできる?」
「もちろん。俺の仲間は優秀だからね」
「じゃあ、デートしよう」
「埋め合わせはするよ。今日までの分の」
「楽しみ」
二人の夫婦はうれしそうにほほ笑みあった。