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勇者ギルド in 魔術学園都市 44




「結局、最初は英雄譚かもしれないけど。最後の方は適当じゃない」




「まあ、幻獣召喚できるやつがいたかのう」


 “魔王の剣”の持ち主のことをいう。


「というか、トールと合わさると随分とすごいことになってない?」


「ソンナコトハナイデスヨ」


 アレスの目線から逸らすようにトールは言った。


「この剣というか、刀は使わせてもらうよ。僕の復讐のためにね」


「ああ、それでもかまわない。切るイメージはソレできた」


「そうなのか?」


「その刀身には切り裂くという能力が付与してある。あらゆるものを斬ることができる。ただ問題は俺にも神というものがイメージができないとそれを斬るとイメージが湧かないんだよ」


「なるほどな。“勇者の剣”か、実際にあったことのある“魔王の剣”に見せてもらえば?」


「その手があったか。それで神をイメージできれば、切るイメージもできるか」


 アレスはそういうと立ち上がって、剣を受け取り抜いた。


「確かに目の前にあるものが斬れそうな気がするね」


 するとアレスの前に猫のようなものが姿を見せた。形は猫だが、鱗に覆われているそんな奇妙な生き物だ。


「良質な魔力を感知。魔力の流れがよいですね」


 猫はしゃべった。


「あなたが主様ですか」


「よろしくな」


「ハイ、よろしくです。ところで主、誰を斬りますか?」


「そだな。面白いものがたくさんいるようだね」


 アレスが目を細めて言った。アレスはただ刀を振った。


「さすがです。新たな主、私を使いこなすとは・・・」


「君は実にいい刀だよ」


 屋根に猫が歩いたような音がした。


「僕を襲撃とはいい根性だ」


「あら、敵襲があったんですか?」


「屋根裏部屋に隠れていたよ。暗殺者がね」


 アレスは暢気に言った。


 すると屋根を突き破って一人の男が姿を見せた。黒いローブを着た男だった。


「暗殺者ギルドのものだね。しかも、魔術系の・・・」


 男はアレスにそういわれ後ろに飛んだ。男がいたあたりに巨大な鰐が現れた。それは泥でできていた。その鰐は姿を見せた瞬間すぐに泥に戻る。


「魔女と悪魔か」


 アレスとトキアをみてそんなことを口にした。


「僕の太刀をよけるとはなかなかの使い手だね。フェミンさんクラスだよ」


「ほう、黒猫フェミンを知っているのか。だが、俺の方が強いからな」


 男はそういうとアレスたちに向かって、毒霧口からを放った。


 それをアレスが魔法防御壁で防ぐ、だが、男の本命は違った。アレスの前に立ちアレスを下から切りつけた。


 だが、アレスはその太刀を黒い刀で受けて見せる。男は目を見張ったが蹴りをすぐに放った。


 アレスはその蹴りをよけるために距離をとった。


 それを見て男はトキアに切りつけようとしたが、次の瞬間、背中から出血する。


「何?」


 男は倒れながらアレスを睨んだ。


「さっきみたいなことができるんだから、距離関係ないでしょ」


 アレスが暢気に言った。


 これが勇者。冷静すぎるだろ。男は泣きそうになりながらいった。それを悔いてももう遅い。


 男の生命は失われてしまうのだった。暗い闇の中でこの依頼を受けたことを大きく後悔したのだった。




 やはり、一般人が勇者に挑むのは無謀だったのだ。




 それを悟ったとしてももう遅かった。




「どうでもいいが、お前強くない?」


「どうでもよくないと思うけど。これくらいできないといけない気がするけど・・・」


 トールの突っ込みにアレスが突っ込みで返すという奇妙な絵だった。


「元勇者よ。お主、“勇者の剣”などなくても強くないかのう」


 ちょっと、引き気味にリリィが言った。


「斬撃を飛ばす能力がその刀にあったとして、目視なしでできるのか?」


「ああ、僕は霧と視覚を同調できるから、屋根裏に薄い霧を張ったんだ。彼らからしたらジメっとしただけだろうけど」


 それを聞いてリリィは顔をひきつらせた。


「えっと、つまりお主は精霊と契約していたのか?」


「そうだけど」


 アレスがしれっというとリリィは焦った顔になる。


「待て待て、精霊との契約はかつては勇者の契約だったはずだ。おいそれとできるものではないはず」


「ちなみに私はアレスと同じ精霊を共有してるんですよ」


 トキアがうれしそうにアレスと腕を組みながら言った。


「二人の愛で精霊と契約しました」


「なんじゃそれ」


 リリィが思わず言った。


「精霊と契約するにはそれぞれ特殊な条件がありまして・・・泉の精霊は自然に共有精霊になるんです」


 トキアが嬉しそうに言った。


「そうだね。僕らのは特別だからねえ」


 アレスが遠い目になって言った。なんとなくうれしそうだったので、いい思い出というやつなのだろう。たぶん。


「僕はあれはトキア以外とはできないね」


「私もアレス以外とはしたくないです」


「ね」


「ね」


 二人はニコニコしながら言った。


「仲いいことはいいことなんじゃが、しかしどう言った条件なのかも気になるのう。そこまでいくと・・・」


「えっとね」


「一時間、ずっと二人でキスをしながら精霊の泉に潜っていることです」


「意味がわからんな」


「つうか人間、一時間も潜れんだろう」


「そこは空気の層を二人で作って包み込んで・・・」


「まてまて、精霊の契約ってたいていがそんな馬鹿な条件なのか?」


 リリィが目を点にしていった。


「そんなもんですよ。一番有名な“光の戦乙女”だって、剣の打ち合いに勝つという条件だったはず」


「精霊の多くは霊体で、剣で撃ち合うのですら、剣を魔力を覆い・・・って、おぬしらそれよりも難しくないか。明らかに」


「まあ、精霊の契約ってそんなもんですよ」


 アレスが暢気に言ってのけた


「まあ、それを乗り越えた先に我らよりも強い力。魔王に対抗できる力というわけなのだから仕方ないのかもしれんのう」


 リリィが頭を抱えた。


「それって難しいのか?」


「我ならできるが、人間どもには特殊な訓練をしなければできんだろう。そんな長時間安定的に魔力をだすなんて普通はできんからのう」


 リリィはアレスを見た。


「どんな訓練をすれば、そのようなことができるのだ?」


「師からすれば・・・」


「お菓子作りです」


 トキアが嬉しそうに言った。


「愛さえあれば、不可能ではないのです!一時間おいしくなるように魔法を練るなど・・・」


「何を言っておる。こやつ」


「まあ、それが一番楽というか、いい方法なんだよね。今のところ・・・」


「こいつら、頭がおかしいぞ。主よ」


「いや、こいつらの異常性は今に始まったことではない。たぶん」


 トールが断言するように言った。


「ところでお前らのステータスにある魔吸空間って何?」


「ああ、僕らの仲間になるなら教えてあげるよ。師が思いついた画期的な魔法理論だよ」


「なんだよそれ。ところで、お前の師って本当に何者だよ」


「かつて、“神の薬師”と呼ばれ、現在は“光の戦乙女の契約者”だよ」


「マジか!」


 トールが興奮したように言った。座っていたのに今は立ち上がっている。


「ぜひ紹介してくれ!“神の薬師”は生産職の憧れなんだ!」


「わかった」


 トールの言葉にアレスは嬉しそうに答えた。





 トールの頭から抜けていた“神の薬師”逸話の一つに勇者を助けた伝説を、“小さな英雄”の話に飲まれたその話のことを彼はすっかり忘れていた。


 そう“神の薬師”が“勇者”の恩人であったことを・・・


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