友の剣 11
「ふんでよ。どこにいくんだ。大将」
エイルがのんびりといった。エイルの傍らには大女がいる。
白鯨と言われるとんでもない化け物が人化したものだ。なんでも、武器の材料になるらしく、エイルの主の一人が呼び出した。
こいつだけは言うことを聞かずその場で対戦が始まったのだが、トール言う錬金術師が作った石弓が活躍し、白鯨を捕獲、トールが意味の分からん奴に紹介された精霊のおかげで捕まえることができた。
紹介されたのは雷で体を生成された虎だった。与えられた試練が1時間虎の気持ちいいところを撫で続けろという試練だった。
霊体の虎を撫で続けろというのはやばかった。しかも、魔力を全身で覆いながら、電撃を受けないようにしてひたすら撫でるのだ。
終わった後、さすがのトールでも死にそうになったが、その効果はハンパない。雷の様に空を駆け回ることができるし、そのスピードで動くことができるのだ。
あの天から光と共に降ってきた黒騎士には感謝しかない。あれはいったい何者なのだろうか?
力を得た状態で挑んだが、全く勝てる気がエイルはしなかった。エイルの腕で剣を挑んでも全く剣術でも、雷獣を纏った状態でも敵わなかった。
雷のようなスピードをもってしても対抗できなかった。圧倒的な魔力障壁とその剣の腕。本当に何者なんだろうか・・・
「えっとね。トール君が試作品を完成せるからね」
なんでもバイコーンの角を手に入れ、白鯨の髭、ブラックドラゴンの鱗、ブラックドラゴンの翼を練りこんだ武器を作ったらしい。
すごいものだな。
「それをお届けにあがるだけだよ」
「ということは今はフリーと?」
エイルがいうとセイラは頷いた。
「けど、魔術学園都市に行かないといけないけど、その前に先に勇王国の方にヤキをいれないとね」
「ああ、なるほど」
最近仲間になった便利すぎる男のために行くらしい。こいつのおかげで幻獣が仲間になった。
人型の幻獣は知能もあるし、なかなか便利な能力を持っている。つうか、勇王国の勇者たちはトールの有能性に気が付いていなかったようだ。
というか、トールもブラックドラゴンに対して使ったのが初めてだったらしいから、仕方ないと言えば仕方ない。
幻獣が召喚できる奴と、幻獣を人化できる奴のコンビ。これだけで十分国に対抗できるような気もする。まあ、世の中には規格外というものもある。
“嵐”とか、竜王国とか・・・
エイルたちの主である“聖女”はかなりお転婆で淑女とは思えない行動が多い。というか規格外だ。
ゆえにこんなメンバーが集まったと言えるのかもしれないのだが・・・
「ということで、勇王国の王都に向かう予定だけど・・・」
「できた!」
そんな背後でそんな元気な声が聞こえた。武器づくりというのには随分と短時間できたものである。
「本当はちゃんと打った方が魔力が込められ強いのだけど・・・素材がいいからな」
そこには黒い刀身の刀があった。
「刀というやつだな」
「ああ、ブラックドラゴンの鱗を刀身にし、それをここいらの大地から採れる鉄分とゴルゴンの蛇を混ぜたもので固め、鞘には柄には白鯨の髭を巻いた。頑丈かつ切れにくい。でもって、柄本体はブラックペガサスの羽とイーオンの牙を使い衝撃を受け止めつつも折れにくい素材にした」
「すげえなあ」
感心したように言った。
「これと契約することで呪い&毒耐性がつく優れものだ」
「契約?」
エイルは思わずつぶやいた。
「ああ、ちょっと意思を持っちまったみたいで、主と認めたものに力を貸すようだぜ」
トールは嬉しそうに言った。
「ふっふふ、こいつができたから、ちょっとアレスに渡してくるわ。いくぞう、リリィ」
「お主、魔術王国に乗り込みに行くのか?」
「魔術王国?魔術学園都市のことか・・・」
「そうそう、それじゃ」
「アレスがいるらしいからな」
「えっと、アレスさんに渡したら、あんたらも勇王国にいくのよ。私たちはハクちゃんにのっていくから」
ハクちゃんとは召喚獣にした白鯨のことである。この子もリリィと同じような仕様である。
ちなみに幻獣白鯨とは空気よりも軽い可燃性の高い空気などで体を膨らました空飛ぶ白い巨大ワニのような生き物なのだが、膨らんだその姿がクジラに似ているのでそうと呼ばれているのだ。
白鯨には何人も人が乗ることができ、ハクはその性質を利用して、パーティーごと空中に運び出すことができるのである。
ハクちゃんにのるということはハクが白鯨に戻ったり、その力で運ぶことができるのである。
「わかった」
トールはそういうと刀を持って、リリィと一緒にどこかに飛んでいった。トールならある程度方向が分かってそうなのでいずれ付くだろう。
「まあ、わからなかったら、村によればいいしね」
とセイラは暢気に言った。
「まあ、リリィと一緒なら大抵のことは大丈夫でしょ」
サミットものんびりといった。その言葉にフィリナも頷いた。
「さあ、私たちもいくわよ」
セイラは腰に手を当てて誇らしげに言った。
「そうはならんやろ」
「どういうことだ?」
「明らかに時間軸がおかしくないか?」
「ごめん、ここに来るまで少々迷った」
「ああ、そういうこと。それは仕方ない」
「ふむ、風の向くまま、気の向くままに」
「これだから迷った」
「仕方ない」
「まるで我が悪いようだな」
「「「うん」」」
「いずれにせよ。いいタイミングだったよ」
「たまたまだ。その際にお前が勇者の剣を捨てるとはな。びっくりしたぜ」
「まあ、今までの獲物とは性質が違いそうだけど、使わせてもらうよ」
「使えるのか?」
「使いこなして見せるさ」
アレスは嬉しそうにほほ笑んだ。