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友の剣 9




「あんたがトールか?」





 ネヴィルがのんびりとつぶやいた。


「五体満足のようね。ドラゴンと戦っていたみたいだけど、無事に乗り切ったみたいで何よりね」


 セイラが嬉しそうに言った。


「この女は?」


「綺麗だが、性格がいかんせん・・・」


「聖女に対して失礼じゃない?」


 セイラが思わずトールとリリィの二人に突っ込みを入れた。トールとリリィとは参道の帰り道に出会った。


 ちなみにトールがトールであることを教えてくれたのは魔王の剣だ。


「あんたが錬金術師トールか」


 ネヴィルはトールに向かって訪ねた。トールをそれを聞いてリリィを見た。


「ふっふふ、貴様らが偉大なる主を探す話の分かる人間だな」


「話が分かるかどうか知らんが、お前らを探していたな」


「目的は“神殺しの剣”か」


 トールが静かに言った。


「目的を知っているということは・・・話を・・・ってあんたどこで聞いたんだ?」


「いや、俺、聖都にいたし、そこでアレスともあったしな」


「・・・何それ」


 セイラが目を点にした。


「私が動かなくても自力で帰ってこれったこと?というか、なんで、わたしたちよりも移動が速いのよ」


 トールが隣にいるリリィを見た。


「ふっふふ、偉大なる我の力のためだ。こう見えても、我はご主人より、姿を変えてもらったドラゴンであるからな」


「へえ」


 ネヴィルがリリィをよくみると・・・


「お前、アレスさんと似てないか?」


「き・・・気のせいだ」


 トールが珍しく動揺したように言った。


「ふっふふ、地上まれにみる美勇者と同じようである素晴らしい我の姿に惚れたか!」


「惚れんが・・・」


「そうだよ。ネヴィルには私がいるんだからね!」


 すぐ否定するネヴィル、のっかるセイラ。


「聖女というのは痴女であることが条件なのか?」


「違うがな」


 ネヴィルが困ったように言った。


「まあ、おそらくそうではないだろうが、“聖女”の歴史は古いからな。“勇者”並みにな。昔は神に祝福されたと言われていたが、神が人間如きの前に出てくるとはおもえんだが・・・」


「ふーん、おそらく“精霊”と契約したもののことだろうと“魔王の剣”が言っている」


「“魔王の剣”?」


「魔王を作り替えた剣だ。かなり強いぞ。魔王の魔力を内蔵し、魔王の精神と知恵が宿っている」


「それは剣の形をした魔王では?」


「意思があっても自分では力を振ることができず、魔法すらまともに唱えられない。そういうものだ」


 ネヴィルの説明を聞いて、トールはため息をついた。


「マジで生き物を剣にしたんだな。とんでもない錬金術の腕だな」


「主よ。それが、我の主であり、主の先々代の前世の魂の母だ」


「そうなのか?」


「そして、その錬金術師は自らを剣に変え、“勇者の剣”として、勇者と共に戦い続けている」


「その通りだ。ちなみに母を腹ませたのが“魔王の剣”の元になる男だ。つまり、夫婦ではないが、そういう関係、故に俺はこの剣の持ち主としてお前の補助を行う流れになった」 


「それについてきたの」


 セイラが嬉しそうに言った。


「その聖女の護衛だ」


「そういうことです」


 後ろで黙っていた二人が、ようやく切り出した。話しながらも警戒を解くことのない二人だった。


 前の二人はそういうことを後ろにいる二人に任せているようであった。


「それにしても、奇妙なものがあるけど」


 フィリナがトールが作った大筒の残骸を指さしながら言った。


「あれは俺が作った大砲の類だ。一発撃つと壊れてしまう劣化物だが、威力はドラゴンにダメージを与える程度はあるぞ」


「それはなかなかね」


 フィリナが感心したように言った。


「普通の魔法使いでもそんな火力は出せないんだけど。どうやったのか、個人的に気になるわね」


「僕から乗り換えかい?フィリナ」


「サミットから乗り換えるわけないでしょ。それにあなたとわたしは“こ・ん・や・く・しゃ”よ」


「そだね」


 サミットは静かにうなづいた。クールなタイプだが、婚約者のフィリナには甘々なようだ。というか、空気が甘々だ。


「いいもんいいもん、私にはネヴィルがいるんだからね!」


「淫乱聖女。ここが山のど真ん中だからってくっ付くな!」


 とかいいつつもネヴィルも決してセイラを邪険にしないのはテレのためだろう。


「なんなん、こいつら」


 トールがどっと疲れるものを感じて思わず言った。


「なんじゃ、我といっしょにやるか?」


「凄くやりたくない」


 トールが嫌そうな顔になって言った。悪い連中ではないが、どこか抜けているそんな印象のパーティーだと思った。






「仕方ない」


「ええ、それは仕方ないですわ」


「お前らならそうだよな」


「まあ、この二人には何を言っても、馬に説法といったところじゃろうな」


「そういうことだ」


「トールひどくない?僕らをなんだと思っているの?」


「愛のためにすべてを捨てた奴ら?」


「そんなに褒めないで。ね、トキア」


「子供は失ってしまったけど、私たちの愛は失われないわ」


「あの子のために、また、子供を作ろう。そして、幸せな家庭を作るんだ」


「そうね。パパ」


「だよね。ママ」


「なんなんだ。こいつら」


「我に言われても困るぞ」


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