僕と勇者の出会い 6
僕と勇者のであい6
「彼女は僕の妻になる人だ」
薬屋は質素な服装で王に向かって、同じように質素な服の妻をワルシャル竜王国国王に紹介した。
彼女の実家に頼めば、それなりに貴族的な様式のものを用意できたが、二人はただの庶民であることをしめすように質のいいだけの服でやってきた。
庶民が貴族の様式の物を切るのは悪目立ちする。
しかし、元がいいのでそうした服装でも薬屋の妻は貴族の夫人には負けない美しさを持っていた。
「勇者を助けていただき、ありがとうございました」
応対する王はゴテゴテの装飾がある服で着飾っていた。権威を示すためだ。
だが、その王もその礼儀は薬屋に対して、尊敬の念を感じるものであった。
自国の客人の恩人として不自然の無いものであった。
「僕のような平民出身のものが、このような場に呼ばれるのは、大変うれしいことでございます」
そんなワルシャル王に対して、薬屋は元騎士団の名に恥じないきちんとした態度で応対する。
妻もそれに合わせて、夫婦の仲睦まじさと、貴婦人を思わせるには十分な応対をしてみせた。
そう、この二人は王族や貴族が多数いる、この場にいても違和感がなかった。
そんな二人を見て、この場に呼べたことを王は内心満足していた。
「くるしゅうない薬屋。良き働きをした」
「いえいえ、一介の薬屋にはもったいなきお言葉」
実は二人は自分たちの国を代表して王とあっているのだ。
庶民の二人が国王に会える機会などは通常はあり得ない。だが、国の方で王とあっても問題なしと、薬屋の成果を考えれば当然のことだが、代表として王に恩人としてあうことができたのだ。
この出来事が小さな英雄の1ページに加わるかどうかはわからないが、国の人々が薬屋を密かに勇者のような英雄に仕立てようとしていた。
本人の知らないところで。
小さな英雄は騎士団に入り、騎士団内にいた悪い魔法使いを聖人から受け継いだナイフで倒す、という話が小さい子達の間で広まっている。
作家達は彼が異国の勇者を助け、どうするのかを非常に楽しみにしているのだ。
これもその一環だろう。
「お主も素晴らしい夫をもったな」
「もったいなきお言葉」
「なかなかの武勇をお持ちのような」
「おたわむれを」
彼の武勇の事は知らないが、小さな英雄の話は親が小さい子供たち聞かせるにはいい話である。そのモデルが彼ということぐらいは知っている。
妻もなんとなくは聞いているが、白々しく笑った。
そんな空気だが、小さな英雄のモデルであることを知らぬ、無能とも言える貴族たちは彼らを見つめて、不穏な空気を送る。
場違いだと・・・
彼らが常日頃、子供たちに聞かせる話のモデルが、こんな所にいるなんて思わないだろう。
なんだ、あの貧相なナイフはとか思っていても、それが聖剣の謳われるナイフなんて誰も思わない。薬屋のナイフはとある冒険者からもらったお古のナイフなのだ。それを丁寧に手入れし、今もいざという時に使っている。
オークションに出したら、どれほどの値打ちがでるか、わからないものだ。
その薬屋本人は、さすがあのフェイルズを近衛にしている国だと思っていたりする。里が知れると・・・
もちろん、ほめていない。
「今日はゆっくりとしてくだされ、あなたは恩人だ」
王は嬉しそうに言った。
「「ははっ」」
二人は息の合った綺麗なお辞儀をした。
ここまで息の合う夫婦というのは珍しい。