表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/190

勇者ギルド in 魔術学園都市 41




「“七星”を返す?」




 思わぬ言葉が返ってきて、男は目を大きく開いた。


「ああ、俺じゃあ、お前らの期待には応えられない」


「バカな、それではどうするつもりだ?」


「何をだ?」


「それがなければ、お前はまともに戦えないはずだ」


 その男は断言するようにいった。ラプサムはそれには肩を竦めて答えた。


「別に魔剣が“七星”である必要はないんだよな。俺」


 ラプサムは質のいいソファーに座りながら、ふんぞり返りかえった。。


「俺以外の奴にやらせるのがいいだろう。俺も25を超えて、三十路に向かっている。そんな俺よりも10代とかの学生に持たせた方がいいに決まっているだろ?」


「“七星”では届かないというのか?」


「まあ、それだけじゃあ、無理だな」


 淡々とラプサムが返した。


「“七星”派をつぶす気か?」


「まあな。そのつもりでもある。というか、俺はお前らに関わりあいたくはないしな」


「何をしっている?」


「精霊の支配」


 それを聞いて男が立ち上がった。


「貴様らが精霊を支配し、暴虐のかぎりをつくしているのを知っている」


「いや、違うな。お前らが恐怖したのはある男の存在だ」


 それを聞いて、男の顔色が急に変わった。


「“嵐”だろ?お前らが恐怖し、恐れたのは・・・」


「・・・そうだ。われわれはあの男が言うことが信じられなかった。魔王という精霊を呼ぼうとして、われわれから反発を受け、闇に消えた男。それから、突如、全世界に名前を轟かした“嵐”という風の精霊使い」


「まあ、“嵐”は精霊使いとして優秀なだけではないがな」


 ラプサムは肩を竦めて言った。


「あの戦場を支配する正に嵐のようなあの男に多くのものが憧れ、そして同時に絶望を覚えたものだ」


「それほどまでにあの海戦はでかかったか?」


「・・・そうだ。やつが自分の国を粛正することによって、大きく軍の力が減ったと我々は思った。だが、それ以上におそろしいものがいた。あれは嵐の魔王だ」


「そこまでなのか?」


「そうだ。たった、一人の男に30分もしないうちに1万はいた兵の半数が死亡し、敗走が決まった。戦うことなどできなかった。気が付けば、次々に死んでいく仲間を見て、次は俺ではないかという圧倒的恐怖。あれはあそこにいなければ、わからない恐怖だ」


 男は震えた。


「だからだ。だから、われわれはあの力が欲しくなり、精霊の力を望んだのだ。そして、支配してあの男のように使用することができれば、あの力を得ることができる。あの男のように・・・」


 それを聞いてラプサムは大きくため息をついた。


「無理だ」


「何?」


「あれは長年の努力の積み重ねで出てきてるとんでもない技術だよ」


 ラプサムは言った。


「お前は見たことがあるのか?」


「見たことはない。体験したことはない。だが、それに近い技術を知っている。そして、それを知って、噂に聞くあれのように扱えるなんて思ったことはない」


「何?」


「奴は300人の兵士を同時に操っているんだ。それも一人一人が高度な技術を持っている。人でないゆえに、人以上の腕を持たせたりしている。そんなことが一体一体にできるのだ。そこに行きつくまでどれほどの鍛錬を積んだのか俺は知らない」


「何?」


「“嵐”は天才ではない。愚直までの努力家なんだよ。故に誰よりも強く、誰よりも恐ろしい。戦場は奴にとってはホームグランドのようなものだ」


「バカな」


「一対一なら、何とかなるかもしれないが、戦場では奴には会いたくないな。正直」


 ラプサムは肩を竦めて言った。


「でも、強くなれるのだろう?」


「奴の精霊の力は風を支配すること、物を音速で運ぶことだ」


「それだけで、あの力が操れると?」


「風で剣を作る。それを風で操る」


「それがどうした?」


「風で剣を作り、それを風で操りながら、もう一つ風の剣を作り、それを風で操る」


「風使いなら、多くのものができることだな」


「やつはそれを風で自分の感覚を広げながら、精霊の魔力を借りながらその数を増やしていった。そして、その一つ一つが達人級だとしたら?」


 それを聞いて、目の前の男が血の気が引くような気がした。


「あの兵士はただの兵士ではない。すべてが“嵐”の分身であり、その技量は本人でもあるのだ」


「バカな」


「義弟曰く。300人分の訓練がフィードバックされて本人的にはかなりいい修行になるらしいぞ」


 それだけで血の気が引くような気がした。ありえない。そんな言葉が頭中に木霊した。


「あれは“嵐”が使うから強いのだ。“嵐”でないと使いこなすことすらできない。奴はそれに完全に慣れている。普通の人間それをしたら、情報量で死ぬ。それだけだ」


 ラプサムが突き放すように言った。


 男はそれでうなだれた。


「元が強くなければ、あれには届かんと?」


「そういうことだ」


 ラプサムは静かに言った。


「まあ、俺もガルドルも奴ぐらいになってやるから安心しろ」


 明るく言った。それを聞いて、男は顔を上げた。


「炎身を手に入れたと?」


「ちょっと、違うがそれに近いものを俺は開発した。ガルドル様様だぜ」


 ラプサムはそういうと“七星”を置いていった。


「代わりにスノードロップがほしい」


 それを聞いて男はいぶかしげな顔になった。


「スノードロップは所有者を凍らせる魔剣。その力はすべてを凍らせる。お前では使えない」


「そうか?俺も奴に並びたいからな」


 ラプサムは言った。その顔は余裕であふれていた。


「それに俺はじゃじゃ馬の扱いが得意なんだぜ」


 ラプサムは嬉しそうに言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ