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勇者ギルド in 魔術学園都市 40




「俺は奴には戦う力はほとんどないと思っている」




 いきなり、メディシン卿がそう切り出した。


「その根拠は?」


 ラプサムが訪ねた。


「奴が人任せに行動をしているいるからだ。自分で動くようなことがほとんど見られない」


「しかし、絶大の力を持っている可能性も高いだろう?」


「俺たちと比べてか?」


「そうだ。例えば、指一本動かすだけで世界を滅ぼせるような力としたら?」


「だとしたら、この世界を欲しがっている意味がわからない。そんな一握の砂にしかすぎない世界で奴は何をしようとしているのだ?」


「遊びかもしれない」


「しかし、勇者に負けすぎでは?一時的には世界を支配することができた。だが、それでも奴は止まることはなかった」


「何か目的があるとしたら?」


「というのは?」


「この世界の神になることができる。だが、今はその力が足りない。それには現在の神を倒す必要がある」


「世界を手に入れても神にかなうことがないとわかったとか?」


「だが、魔王を呼び出し続けている。おそらく、この魔王を呼び出し続け、7人に魔王を固定したことに何らかの意味があるはずだ」


「きまぐれかもしれんぞ」


「ああ。そうかもな。だが、このままでも事態は何も好転しないのは確か、何か奴をおびき出せるようなエサが必要だ」


「その点については大丈夫ですよ」


 ラプサムとメディシン卿の話に割って入ったのはアレスだった。


「神を殺す剣ができれば、奴は動き出すと思います。その剣を手に入れて、現世界の神を倒し、自分が神になるために・・・」


「そういうことか」


 メディシン卿は鼻で笑った。


「神を殺す剣を作ることで、神を名乗るものがそれを求めて出てくると・・・」


「それを使ってヤツを殺すのか、奴がそれを使って、現、神を倒すのか・・・」


 アレスは静かに言った。


「これは賭けだと思う。だけど、奴を倒すのか、神に身の危険が及ぶが、それを許すのか・・・」


「いずれにせよ。面白い結果になるね」


 メディシン卿はそういうとラプサムを見た。


「まあ、賭け事は嫌いじゃない。俺たちは勇者だ。俺たちの蛮勇をみせてやろうじゃないか!」


 ラプサムは腕を広げていった。


「しかし、そんなことをしても大丈夫なのか?」


 フィンが心配そうに言った。


「そんなことを神が許すと?」


「う~~ん、わからないけど、僕らは先に進むしかない。これはきっと避けられない道なんだと思う。いつかは向かい合わなければいけない」


 メディシン卿はフィンを見つめた。


「運命というやつさ」


 フィンの顔をじっと見つめてメディシン卿は言った。


「運命・・・」


 フィンは周りを見回し、一人の男を見つめた。魔王を名乗り自分のことを好きだと言い出した奇妙な男。


「運命か」


 その男は以前のような力を取り戻し、暴れることができる。その力はかつてのあちらのためではなく、こちらのために使われようとしていた。


 何の因果か、再び、剣を手に取っていた。


 対して訓練などを積んでいないの戦う羽目になっている。いちゃいちゃしている元王女、元勇者の二人を見た。


 この二人のせいで再び剣をとることになった。責任をとってほしいものだが・・・


 フィンはそんな不可能なことを思った。なぜなら、たやすく多くの人が望み憧れる勇者の剣を手にしたのだ。


 誰でもきっとうらやましがることだろう。


 だが、フィンにはそんな気分にならなかった。普通の女の子として育ちたかったし、恋もしたかった。


 魔王に恋されるなど、普通の恋愛など不可能だろう。いろいろな意味で。


 やっかいことばかり、自分のもとにやってくるような気がフィンはした。このどうしようもない怒りに近い感情を誰にぶつければいいのだろうか?


 バシ!


「いってえ」


 シドはいきなり頭をはたかれて大きな声を上げた。


「なにすんだよ」


「なんとなく」


「理不尽!」


 シドは抗議の声をあげたがフィンは気にすることなく、その辺の椅子に座った。


 シドのことなんか気にしてませんという感じを出していた。


「てめえ、ざけんな!」


 シドが怒鳴ってくるがフィンは無視をした。それから、今日、作るお菓子について考える。


 まあ、それでも渡せば、こいつの機嫌が直るだろう。そういう単純な男だ。


 お菓子作りは魔法の修行の一環なのだ。集中力をあげるための修行だ。こいつばかりは才能ではどうしようもない。


 地道な努力を重ねるだけだ。


「お菓子作ってあげる」


「はあ」


「それで我慢なさい」


「・・・たくさん頼んだぞ。燃費が悪いからな」


「わかった」


 私の大量に作るお菓子の失敗作を食べてくれる頼もしい彼の言葉である。フィンは苦笑いをした。




 素直じゃないな。




 そんな感想をフィンは持った。ついでに、ちょっとかわいいと思った。 

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