勇者ギルド in 魔術学園都市 33
「ドレクさんや」
「なんだい、フェミンさん」
「カップルがまた増えやがったんですが・・・」
「知るか!」
ドレクとフェミンがミラクとピルクの監視をしながら言った。
魔術大会は無事にピルクが優勝し、勇者パーティーの存在感を見せつけた。準決勝のパールはどこか調子が悪いというか、疲れた様子で本来の力を出せなかったように思えた。
本来の力が出せたら、光るものがあったが、何故か、それがなかった。
「期待薄いな」
ガルドルやラプサムのような強者が出てくると思っていたが、なかなかそうはいかないようだ。
ちなみにガルドルは今大会に出ている都市ぐらいで聖王国の大会で優勝をしていたりする。そんなものが出てこなかったようだ。
「そうでもないさ」
不意に現れたのは、メディシン卿だった。
「ダンナ」
「へえ、センセイはいい人材を見つけたの?」
「魔王と影使いかな。彼らはしばらくはここの生徒してもらうことになるだろうねぇ」
「なんで?」
「まあ、良き師と実績をあげてもらうため、ピルクとミラクの二人は数か月後には卒業だからね」
現在は5月、二人の卒業は7月となっている。9月には新年度が始まる。
「ふんじゃあ、予定としては勇王国が回り終わった後に二人とは合流の流れか」
「まあね。その前に二人には精霊と契約してもらうから、もしかしたら、合流が早くなるかも」
ドレクの予想にメディシン卿が割って入り込む。
「天才君はどうなの?」
「彼は精霊と契約してないからね。わからないけど、ただ、僕の理論の一端は知っているようだね」
「ほう。その子達って契約したんだ」
そこにきて、フェミンが少し驚きの表情を作った。自分たち以外に契約したことが意外だった。
「彼らは精霊と契約しないとその精霊が悪いものになってしまう可能性が高かったから・・・」
それを聞いて、ドレクとフェミンが顔を合わせた。
「それって危険な奴じゃあ・・・」
精霊が落ちたものを悪霊という。悪霊は割とたちの悪いモンスターとして知られ、そのほとんどが通常武器が聞かないしかも人々に大きな被害を与えるものになる。
そんなものがこの町に発生していたとは思わなかった。
「だから、精霊王の使いから契約を早くするように言われたんだ」
「見ないと思ったら、センセイはそんなことをしていたの?」
「それはついで。僕が追っているのは魔王達の方だから」
「あれか」
クローンとかいうやつで多数存在する魔王の影を追って、メディシン卿は動いていた。そういうのは本来はラプサムが担当するはずだったが、ラプサムはここの上層部の意向でいろいろと忙しかった。
アレスもアレスの方でいろいろと大変な目にあっている。大変というか、悲惨なとか言いようのない目にあっている。
メディシン家のリーサルウェポン、その1、その2を呼ぼうかと言っていたが、遠慮している。
メディシン家関係者がくるだけで、大抵の事件は解決してしまうのだが、今回は勇者ギルドだけで解決しようと努力をしているのだ。
「なかなか、尻尾を出さないんだよね。まあ、今のところはその辺をふらふらしているだけだが、アレスが今回の件で大分怒っているからね」
メディシンは肩をすくめた。
「まあ、身が軽くなってしまったトキアも来るみたいだし、あの二人に今回の件は任しておいた方がいいだろう」
ストレスの発散になるかもしれないし。
という意味を言わなくても含む言葉にメディシン卿の言葉はなっていた。
それに二人は静かにうなづいた。
「魔王は自称じゃなくなった?」
「まあ、そういうことだね。その知識も技量も魔王だろうね。彼はもしかしたら、僕らのもとにくるかもしれない。新しい勇者を連れて・・・」
「ほう。魔王が勇者を連れる。面白い展開だな」
「ふざけている場合じゃあないと思うけど。勇者ギルドに元勇者に魔王がいるのよ。おかしくない?」
「新旧でよくね」
「ドレク・・・それ笑えない」
フェミンが呆れたように言う。
「でも、9人では少なかったギルドだ。何人増えようともいいじゃないか。スポンサー様がなくなったけど・・・」
「大丈夫」
「どうしたフェミン」
「センパイそういうの得意だから・・・」
フェミンの自信ありげな様子を見て、ドレクとメディシン卿の二人は顔を合わせ笑顔をこぼした。
「“七星”様の采配みせてもらおうか」
「ですな」
メディシン卿の言葉にドレクが嬉しそうにうなづいた。