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勇者ギルド in 魔術学園都市 29




「契約したい子がいる?」




 メディシン卿は目を細めて言った。


「“七星”以外でこの町にいると?」


 メディシン卿はそれに訪ねた。そこには一人の男が立っていた。服を着こんでいるが、その足は羊やヤギの蹄だった。


「パックを寄越したということはなかなかの子ということかな」


「君は少々見張られているらしい」


「それは初耳だね。誰に・・・いや、言わなくてもわかるか。俺が一日ここにいないことがまずくなるような相手か」


「そういうことになるね」


「それは面倒だ。どんな相手に目をつけられていることやら・・・思い当たる節が多くて困るよ。特にここ魔術学園は」


「君はここでは完全なアウェーだからね。君のあれは個々の人たちにとっては衝撃以外の何物でもないからね」


「少し考えれば、わかる可能性があるんだよね」


「だが、君が生み出したそれは一気に十年は魔法を進めてしまった。もしかしたら、百年は進めたかもね」


「そういうものかね」


「まあ、それでも僕らの方が優秀なのは変わらないけど」


「違いない」


 メディシン卿は苦笑いをして答えた。人間と精霊では持っているいる魔力や扱える魔力量が段違いなのだ。


 メディシン卿が魔王に対抗できる力を持っていられるのも、精霊と契約し、その力の一部を使えるからだ。


「で、その契約したいものと対象はなんだんだ?」


「影と言われている」


「シャドウ?聞いたことがないな」


「君の恐怖の魔王と同系統だと思っていいよ」


「精神にかかわる精霊か」


「そのシャドウの正しい名前は、“思春期”または“青き無謀”、“青春の影”とも言う」


「なるほど、恋の病じゃないだけましか」


「まあ、その違いが僕にわからないが、そういう精霊がいるようだね。この町に」


 パックは肩をすくめて言った。


「その子はとある女性と契約したいらしい。名前はパール・ゴールドライオン」


「俺たちの仲間以外で、名前が上がるのは初めてだな」


「これは依頼に近いからね」


「“魔王”時以来といっていいかもな」


「そういうことになる」


「放っておくと危険なのか?」


「僕らは危険ではないのだけど、彼女にとっては危険だろうね。彼女の周りを不幸にしていくだろう」


「それはそれは、厄介なストーカーだな」


「そうなってしまうと魔物に落ちてしまうかもしれないしね。向こうに使われる前にこっちに引き入れる。王はそう判断したようだよ」


「精霊王直々の判断か、それは尊重しないとな」


「他の子は忙しそうだし、この件は君に依頼したい」


「俺自身も厄介な案件を抱えているんだけどな」


 量産型魔王について調査をそれとなくしている。といっても、適当にうろついて、その影を探しているだけなのだが・・・


「その件とも全くかみ合わない・・・いや、思ったより遠そうだね」


「それはそれは、余計な手間だ」


「何もかもがつながっているなんて、都合のいいことがあると思っているの?」


「思っちゃいないさ。つながっているなら、奴らが明らかに連携が取れていないわけで・・・」


「ただ、その件にはかかわっていないが別件では関わっているから」


「ほう」


 メディシン卿は目を細めた。


「それは初めて聞いたな」


「君は独自で情報網が持ってないからね。だから、仲間が必要なのだけど」


「そだな。一人じゃあできることが限られている」


「よく言うよ。その気になれば、この町の闇も支配できるのだろう?」


「その気になればな。そのために命を削るような真似はしたくないんだが・・・」


「まあね」


 すると、パックがはっとした顔になった。


「おや、他に面白い存在がいる。なるほど、その件も教えておこう」


「嫌な予感しかないんだが?」


「この町にも“魔王”がいる」


「俺が持っている魔王とは違うようだな」


「そうだね。あれは躾用の恐怖の魔王だよ。この町には死んだはずの魔王が生きているという伝説があるようだよ」


「伝承か、人を駆り立てる何かってことか?」


「僅かな可能性に賭ける希望というヤツだろうね」


 それを聞いて困った顔になったメディシン卿。


「それは魔王の形をした希望というやつか」


「そういうころだ。性質はなどは闇だが、本質は希望だから、光属性になってしまうやつ」


「光と闇を備えた精霊か」


「そういうこと。さっきの青春の影とは大違いの性質だね」


 それを聞いてメディシン卿はため息をついた。厄介そうな仕事が増えたと言えた。


「そちらは放置してても問題はないはずだが・・・魔王信仰が厄介なのか」


「君の縁がそれにひかかっているよ」


 パックが嬉しそうに言った。


「ふざけるなと言いたいが、まあ仕方ない。それと契約したい奇特な奴もいると・・・」


「その二人は縁で繋がっているから大丈夫。君も合えば、魔王という希望の件はわかると思うよ」


「わかりたくもなくても、わかるってことか」


 メディシン卿は光よりも相棒になってしまっている精霊のことを思い出して嫌な気分になった。


「だって、自称魔王だし」


「ああ」


 メディシン卿はそんなものはこの学園内で一人しか知らなかった。別に知りたくなくても、それは悪目立ちしていたからだ。


「面倒だな」


 メディシン卿は天を見上げて嫌そうに言った。

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