勇者ギルド in 魔術学園都市 26
「あいつら調子がいいな」
のんびりと試合を眺めながら、ドレクが言った。
「まあ、当然でしょうね」
双子は現在魔術大会に出ていた。二人はヘレンよりある魔法をもらっていた。
魔術式を直接破壊する気弾だ。
気弾とは魔力をぶつける聖拳技の基本にして奥義の魔法だ。大気より取り入れた膨大な魔力を打ち出すという魔法だ。
それを簡単な術式を入れ込むより効率的に魔力を吹き飛ばす魔法に変えたのだ。
これは魔法が魔法が不得意なミラクにも使うことができた。それはピルクにも使えた。
ピルクは大気から取り込むようなことはなく、自前の魔力でそれを使用することができた。補助として、大気より取り入れる方も覚えている。
ミラクはそれに加えて、魔術防壁を無効かする気弾も使用できるようになっていた。
これは魔吸空間の応用でできた魔法だ。参考にしたのは、もちろん、ガルドルの炎身だ。
“盗みの気弾”とヘレンたちと名付けている。見る人が見れば、わかる魔法なのだが、魔吸空間の概念がわからないとその魔法を使うことすらできないのだ。
防げると思っていた気弾がそうでないのだ。それでミラクに負けるものが多かった。
あっさり、天才と称されるものを倒したり、自称魔王なんかも倒したりしている。
「それにしても面白いな。自称魔王かよ」
ドレクはくっくくと笑いながらいった。そいつは特に魔力が強いわけではないが、それでも技量はかなりのものだ。
ミラクのそれを初手でかわし切ったのはそいつだけだし、ミラクに魔吸空間を使わせたのもそれだけだった。
「チートかよ」
とか、文句を言っていたが、勇者ギルドのメンバーを少々なめていたようにも思えた。
「あいつ面白いな」
「女じゃないわよ」
「知ってる」
ドレクの様子を見ながら、フェミンが冷たい目で言った。最近、二人で行動することが多い。
それも仕方ないことだろう。
ドレクは遠距離の障壁魔法が得意であり、フェミンは危険感知のプロに加えて、レミングを従えている。
護衛にはぴったりの二人というわけだ。
ドレクがその気なれば、外部からの魔力介入が不可能といわれている魔術大会中にも関わらず魔力防壁を張ることなんて余裕である。
それほどまでに卓越した技術を使えるようにはなっていた。
この一週間で。
ミラクとピルクはそれなりに嫌がらせを受けていたが、その嫌がらせをフェミンとドレクは練習と称して防いでいた。
植木鉢が落下とか、モップを倒したりとか、不思議な力、ドレクの魔法防壁で防いできたのだ。
こまごまとしたプレイに対して守ってきたことにより、ドレクの腕が上がってしまったのだ。
最初はそれらの行為に憤りを覚えていたフェミンだが、ドレクのサポートが凄すぎて、呆れている。
「まあ、順調に勝っているようで何よりだ」
「アッシドの弟子だっけ?あれ凄いじゃない」
「あれよりも“天才”はすごいらしいが・・・」
「まあ、ミラクに不意を突かれたからね。仕方ない」
フェミンもあきれた様子で言った。
「運がなかったな」
ドレクが憐れむ様子で言った。ミラクの実力を知っていたら、善戦している可能性が高ったが、そうも上手くいかなったようだ。
その点、自称魔王君は頑張った方ともいえる。
ミラク相手に一番持ったともいえる。
「あとはたいしたことはないな」
「まあ、あんたにとってはね」
「短剣はできたんだろ?」
「まあね」
フェミンは少し悔しそうに言った。
そんなフェミンの頭をドレクが嬉しそうに撫でた。
「十分じゃねえか、あとはソレを大きくしていくだけだ」
そんなことをされて、うれし・・・がんばって、嫌がる素振りをフェミンは見せた。
「やめなさい。セクハラよ」
「ひでえなあ」
ドレクは苦笑いをしていった。その顔を見て嫌がっていないのは知っていたので、彼女の名誉のためにドレクはそれ以上は追及しなかった。
「まあ、ピルクが優勝かな」
「ミラクもなかなかやるわよ」
「じゃあ、俺は前評判どおり、ピルクで」
「ミラクよ。何をかける?」
「デザートは?」
「あんたも好きよね」
「またまた、フェミンも好きだろ?特にかわいいの」
「・・・うっさい」
フェミンは顔を赤くして答えた。それでだけで十分にバレバレだった。