勇者ギルド in 魔術学園都市 24
「見つけた愛しの君」
シドはそういうとレイナに近づきながら言った。
「え?」
レイナが戸惑うのをよそに、フィンの前にきれいに膝まつき、その手を取り、シドはそれにキスをした。
「御身が危機に瀕したとき、私がすぐに駆け付けましょう」
「え?」
フィンがそんな騎士の誓に近いそれをした。それを見て起こったのは自分を無視して、そんなことをこんな人が多い場所でやったのだ。
付き人以下の自分。屈辱的だった。
「ふざけないで!」
レイナはそういうと膝まつくシドを足蹴にした。だが、それではシドは全く動かなかった。
「お嬢様、いけません」
フィンがその行動を嗜める様に言った。
「おっと」
レイナもここが大衆の場ということに気が付き、やめた。大衆の目が少々冷たい。
「私を無視して、私のメイドに手を出すとはいい根性ね。シドとか言ったわね。所詮は平民なのね」
「平民が貴族様に婚姻を言うわけにはいかんでしょ」
シドはゆっくりと立ち上がりながら言った。ヒールで蹴られたのに特に痛がっている様子はなかった。
「ふーん。第3塔のホープとか言われているけど、頭はバカのようね」
「よく言われる」
「なるほどね。そんなことを言われても気にしないと?」
「別に俺の前に立ちふさがるのであれば、壊すのみだが、そうでないなら、気はしないな」
シドが傲慢な素振りを崩すようなことなく言った。
「随分と自信家のようね」
「それは正しくはなく。俺はその力もあるし、実力も持っている」
「僕に勝てないけどね」
と、シドの背後にレンが立っていた。
「“天才”」
「お褒めに預かり光栄ですね。レイナ嬢」
レンは丁寧にあいさつを交わした。目上の人間に足しての礼儀はできるようの思えた。
「お前は特別だろ?」
「そうでもないさ。君の方がもっと特別だろ?」
「段違いと言ってほしいな」
「君の嫌いな聖拳技ができてからいいなさいな」
「あれは得意ではないというか、前世ではあんな風な魔法の使い方してないからな」
「それがないと厳しいよ。今の君の魔力量なら」
「・・・ちっ」
シドは舌打ちをした。
何の話をしているかわからなかったが、魔法について話をしているらしい。天才同士の話に凡人はついてこれないということなのだろうか?
「あなたたちは何を言っているの?」
「秘密」
レンが言った。それ以上は聞くなと言っているようだ。
「ふーん。で、フィン。こいつはどうする?」
「物わかりの悪いガキにはお仕置きが必要かと思いますが、お嬢様とは魔術大会いずれ当たるかもしれません。その時にお嬢様が圧倒すればよいのでは?」
フィンが冷たく言った。
「残念、振られたようだ」
「今日はこの辺でいいだろう。初対面だしな」
レンが言ったのに対し、シドもそれを気にした様子はない。
「寛大なお心感謝いたします・・・と言っておけばいいか。ではな、また」
シドはそのまま歩き出した。レンがその後をついていった。
「なんなのよ、あれ?」
「マオウ・・・」
「魔王?」
フィンの口から出た言葉に、レイナが訝しげな表情を作る。
「いえ、なんでもありません。ところで、私がそんな言葉を?」
「ええ、自称魔王に対して言ったのよ」
「自称魔王?そうですか・・・」
フィンが首を傾げていた。レイナは肩をすくめた。
「私たちが望むのは・・・」
「本物の魔王ですもんね」
フィンの言葉にレイナは深く頷いた。