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僕と勇者の出会い 3

僕と勇者の出会い3



 光を見た。



 背後から火の魔法で僕は撃たれた。


 ワイヴァーンの飛行訓練だった。


 ワシュタル国の騎士団をつれての辺境と言われる森の空の旅だった。


 この森はワシュタル国からすれば、他国なのだが、滅多に人の来れぬ秘境の一つらしい。


 時折、巨大な足音のようなものが森からし、とんでもない森だなと思っていた。


 この森に落ちたら死ぬなと思っていた。


 ここで落ちたら、ほぼ助からないと騎士団の団長であるフェイルズは言った。


 その通りだと思った。


 こんな深い森に落とされて助かる見込みなんてなかった。


 故に慎重に飛んでいたつもりだった。しかし、まさかの裏切りによって落とされたのだ。


 フェイルズは騎士団の団員からも信頼の厚い男で、かつ、大臣や大物達と仲も良く信頼されていた。


 そのため勇者見習いの護衛として選ばれ、一緒についてくることになった。


 そんな彼が僕に向けて魔法が放った。


 助けを求めるよう周りを見たがあざ笑うような表情を浮かべていた。


 それを見て僕ははめられたのだと思った。


 こんな僕に告白してきた2歳下の王女、フェイルズの婚約者でもあるトキアの顔が浮かんだ。


 あのかわいらしい少女を悲しみに染められてしまうのはとても気が引けた。きっと、大人になったら美姫となるだろう。


 彼女の事を思い出しながら、下に落ちていった。


 彼女との思い出を思い出していくうちに、死にたくない気持ちが体の奥の方からせり上がってきた。


 助かりたい。


 そんな強い気持ちが強くなり、もう一つの感情が沸き上がってきた。


 あの娘が欲しいと、あの女を手に入れたいと、あの美しい雌といろいろなことがしたいと・・・


 そんな欲求が沸き上がってきた。


 勇者にあるまじき感情であるまじき欲求が、黒い欲望が彼を支配しはじめた。


 地面に叩きつけられる一前、自分が今までない出したことのない強力な魔法防壁をはった。


 木々の枝を薙ぎ払い、地面にたたきつけられた。


 魔法防壁に関しては未熟な僕は空から落ちた勢いは完全に消せることはできず、全身を切り刻むような激しい痛みを伴う衝撃をけすことができず、その身に受けてしまった。


 なんとか、打ちどころがよかったのか、生きてはいるが、あまりの痛みに声すら上げることができず、意識すら持っていかれそうになった。



 くそ!



 誰もいないのにそんな罵声を飛ばしたくなった。しかし、口も体も動かない。


 このまま死ぬかもしれない。こんな痛みの中で何もできず、声を上げることもできず。ただ、ただ苦しい中で・・・


「・・・じょうぶ?」


 そんな声が掛かってきた。


 声を上げようとして、出たのは血だった。その血でむせて咳しかでない。


 のどがいたい、痛みで涙が出て過ぎて視界が悪い。ほとんど、見えない。


「生きてる?・・・トモダチを呼ぶ」


 拙い共通語が聞こえてきた。その気配は去っていった。


 助けを呼んでくれるらしい。苦しいが希望が見えてきた。


 彼女の元に帰るために必死に意識を保ち続けた。


 どれほど、時間がたったのだろうか、永遠とも、数秒ともわからない。ただ、痛みと苦しみだけが体を襲っていた。


 そんな中で浮かぶのはあの美しい娘の顔、そして、白磁を思わせるその体を貪りたいという欲望。


 自分で愚かと思うが、死に際に浮かぶのは彼女のことだけだった。



 生きたい。



 彼女にもっといろいろとしたい。そんな欲求が頭に浮かんでは消えていた。


 そんなことで頭がぐちゃぐちゃになり、意識が時折、黒い闇で刈り取られそうながらも、なんとか意識を保っていた。


 そこに人が迫ってくる気配を感じた。


 こんな秘境に人などいるはずがなかった。しかも、自分を助けることができるような人材などありえなかった。


 しかし、人が近づいてくる気配が漂ってきたのである。


 やはりどう考えても自分を助けることができるような人間がいるわけがない。


 体の痛みが告げている。この体はもう持たない。回復など不可能だと。


 それほどに致命的な怪我を僕はしていた。


「なんだこの子は?」


 男の声がした。男は何かを取り出したが舌打ちをした。


 男の背後に光と強力な魔力を感じた。


 その光は自分が勇者になるときに見た光。


 光の戦乙女、ヴァルキリーの光。


「光の戦乙女の祝福を、ヒールライト!」


 男の声が辺りに響き渡る。その光が僕の体を包み込み、その光の粒子が僕の体に染み渡っていくと感覚があった。


 目を開けて自分を助けた恩人を見た。


 印象としては人の好さそうな人だった。その背後には僕を選んだ光輝くヴァルキリーがいた。


 その光はなんとなく安心自分を安心させるものだった。


 助かったと気が緩んだ瞬間、睡魔という闇が襲ってきた。


 彼は何かを言っているようだが、言語して理解できず、音しか認識できなかった。


 僕の意識はそこでぷつっと消えた。


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