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勇者ギルド in 魔術学園都市 18




「ところで君は、あいつらの仲間なのか?」




 アレスが根本的な質問をした。そのセリフに心当たりがないのか、首を傾げた。


「何の話だ?」


「ああ、お前ら、似たような存在だから聞いてみたのだが、魔王系ではないと・・・」


「そりゃあ、そうか。魔王が複製できるような人間が、わざわざ、魔王を蘇らせようとは思わんだろうな」


 アレスが相手の反応見て、頷き、さらにドレクが反応した。


「別のグループか。面倒だな」


 いやそうにアレスは言った。


「モテモテだな」


 ドレクが悪い顔になって言った。アレスはそんなドレクを睨むように見た。


「モテるのはトキアだけで充分。それ以外はモテたくない」


「全世界のファンが泣くぜ」


「トキアを泣かせなければ、問題なし!」


「ラブいなあ」


 ドレクは肩をすくめながら言った。


 そんなドレクを尻目にアレスが剣を抜いて振り下ろした。だが、切りつける予定の相手はガキンとトキアの髪でその剣を防いだのだ。


「魔力で固めた髪・・・というか肉体かそれ」


「そうだ。俺は魔力を循環させることによって、オリハルコン製の武器も防げるのだ」


 オリハルコンとは伝説に名高い金属で、高硬度、軽量という夢の金属だ。これで作られた武具は子供でも竜でも殺せるなんて話がある。


「オリハルコンねえ」


 随分と高級そうな装備だ。アレスではとても手が出せないものだ。


 アレスの装備費は基本的にはワルシャル竜王国の国費であり、国費ということはモロに税金となる。


 いくらでも金が使えるという状態なのだが、その負担が行くのは竜王国の国民ということである。


 王や貴族でないが、庶民出の勇者としては非常に心が痛む。最低限の装備があれば十分だと思っているので、そういう買い物はしない主義だ。


 必要と感じたら買うが、今のところ必要と思ったことはなかった。


「見たことがないから実感がわかんが」


 アレスはそんな本当にあるんだが、ないんだかわからないものを例えに出されても、正直、困るところだ。


「勇者のくせにそれを知らぬと!」


 それはやたらと驚いた口調で言った。


「オリハルコンなど、貴様レベルなら普通だろ?」


 かなり驚いた様子で言った。それを聞いて、ドレクの方を見た。


「そんなもん、ドワーフと交流なきゃ滅多に見られないしなもんだぞ。なんで、お前それが見れるんだ?」


「バカ目、学園都市では錬金術がそれなりに進んでいるのだ。オリハルコンなど、よく売っているぞ」


 バカ高いんだろうな。


 ドレクとアレスは心の中でそんなことをつぶやいた。


「あんた達、金銭感覚がおかしくない。正直、武器という消耗品に近いものに、人が一生贅沢して食っていける額を払うなんて思わない方がいいわよ」


 フェミンが貴族のくせにザ・庶民の反応を見せる二人に助け舟を出すために言った。


「にしても、あなた。オリハルコンの、しかもオリハルコン製の武器の切れ味を知っているなんて、どこの貴族様からしら?」


 フェミンが関心したように言った。


 もちろん、フェミンも二層構造に鍛造された武器よりも、強いだけのオリハルコンの性能は知っていたが、そもそも、オリハルコンが他の金属よりも優れている点はただ一つ、魔剣の材料のベースとなる金属だからだ。


 故に、オリハルコンは単体での性能よりも、魔剣としての性能でみるのが冒険者では一般的だし、切れ味などでは海洋国にあるムラマサという刀を例に出すものが多い。


 あれはオリハルコンすら切り裂ける鉄製の武器だ。


 職人の手作りで様々な過程を経て、冒険者の手元にたどり着く、冒険者の憧れの武器だ。手間暇をかけた逸品で数も少なく、下手な魔剣より価値があるとも言われている。


 手入れも大変なのだが、それを維持できることもステイタスになる。そんな品物なのだ。


 それを例に出さないということは世界を知る冒険者としてはモグリであり、オリハルコンにこだわりがある者たち。つまり、魔法と相性が良い者たち。


 つまりは魔術学園の関係者と思われる。


「くそが!」


 何故か怒ったように叫び、男は距離をとった。


「勇者よ。お前はあの方に殺される。何せ、あの方が蘇らせる魔王の贄になるのだからな!」


「あの方?」


 男は嬉しそうにその名を言った。


「あの方は尊き名をお持ち故に言えぬが、蘇らせたい魔王の名を言おう。その名はケンシロウ。かつて、この世界を支配した魔王だ!」


「え?」


 アレスは驚きの声を上げた。


 ドレクとフェミンを見た。ドレクとフェミンはピンとこない顔になっていた。


「えっと、マジ?」


「そうだ。あの方を蘇らせるために貴様の剣が必要なのだ!」


 男はアレスが持っている剣を指さした。


「その剣に封じられた魔王様を蘇らせる!それが我らの使命」


「そ・・・そっか」


 アレスは頭が痛くなる気分になった。おそらく、1000年の間に魔王を封じた剣と魔王を倒した剣がごっちゃになったのだ。


 というか、魔王を封じた剣の話はあったはずだが、それを勇者の剣の力の源と感じたらしい。


 勇者の剣の力はその内包された力ではない。“理の剣”と呼べるその剣が持つ、解析力と対応するために力を与える力。


 魔王という存在を剣に変え、使用者に力を与えるだけの剣とは違う。それ以上の力を持つものなのだ。


 そもそも、そのケンタロウという魔王は今は魔剣として、元気に余生を過ごしている。今更、魔王に返り咲く気があるようには思えない。


 むしろ、“理の剣”と一緒に自分の子供に剣を作らせようとかしている。


「ふっふふ、怖くて声も出ないか!」


 リアクションに困っているところにそんな声がかかる。


「ここで・・・」


 いつまにか、ドレクがそのトキアモドキの後ろに立ち、右手を振っていた。その瞬間、バラバラになり、それは黒い泥のように黒いものになった。


「お前の力、解析されたらまずいのでは?」


 アレスがのんびりといった。


「今更だろ?」


 ドレクはのんびりといった。“王竜”との約束の中にドレクの真の力は見せないという約束になっていたが、ドレクはトキアのそれを見ていてかなり不快になったらしく、思わず使った。


「解析できんだろ?その位置では」


「まあ、今はね。そんな気分ではないしね」


「それなら問題なだろ」


 ドレクが欠伸をしながら言った。


「術式事、体を混ぜるなんて器用な真似を・・・」


「能力も使わなくても、それだけのことを読み取れるだけで怖えよ」


 ドレクはアレスの目を見て、嫌そうに言った。アレスは天才ではない。凡才だが、努力家でもある。


 ドレクと同様にあの師の下で修業を積み重ねてきた仲だ。頼もしい仲間でもあり、その目は節穴でないことも知っていた。


 普通に優秀なアレスが、勇者の剣である“理の剣”を持つから最高なのだ。


 ドレクもアレスが本当は勇者の剣がなくても、強いのは知っていた。だが、強くなるために“勇者の剣”を持っているに過ぎないことも知っていた。


 “勇者の剣”はアレスを成長させるツールにしか、今は過ぎなかった。


 ドレクは“勇者の剣”の解析で得た知識をアレスが密かに、会得していることを知っている。


 アレスが本来の力を見せたとき、ドレクで止められるかどうかわからない。それほどにアレスは本来は強い。


 それがドレクが知っているアレスだ。


「負けれないな」


 ドレクはアレスを見て、そんな風に静かにつぶやいた。


 アレスが悪の道に落ちたとき、それを止めるのが“王竜の契約者”の役目なのだから・・・


「さて、こいつらの正体を探しに行こう」


 アレスは真剣な顔になって、床に転がっているソレを見ていった。


 ほかの二人はソレを見て静かにうなづいた。


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