勇者ギルド in 魔術学園都市 17
「ほう、あの剣が魔王復活のカギとなると?」
男は嬉しそうに笑みをこぼした。
「魔王の叡智を得るために、勇者の剣が必要とはな」
「勇者があの剣をもってから、勇者が魔王に勝てているのはおそらくあの剣に魔王様の力が備わっているからに違いありません」
「なるほどな。魔王が宿っている剣なら、魔王を倒せる可能性もあるかもしれん」
「そうすれば、強大な力を得ることができます」
「多くの魔王の命を奪ってきた剣、そんな剣にどんな叡智が宿っているのか・・・楽しみでしょうがないな」
「その通りでございますね」
「して、あの勇者からどのような手で剣を奪うつもりか?」
「王妃の姿見を利用しようと思います」
「あの麗しきトキア嬢・・・いや、今は夫人だったな。あの男も20歳そこそこの男。トキア嬢の姿のものが、ひどい目に合えば・・・」
「さすがに動揺するでしょうね」
「そこを狙うと」
「はい」
「・・・悪よのう」
「いえいえ」
「こんにちわ、勇者様」
「トキアに似た子だね。随分と」
アレスは冷たい目になって言った。
「死んでもらえます?」
「ふーんそういうの。不快だから・・・」
「あのお転婆の真似か。こっちの方がかわいいんじゃねえの?」
ドレクが腹を抱えて笑っていた。
「趣味が悪い」
そんなドレクをアレスは冷たい目で見ながら言った。
「こいつ、トキアよりは弱いぜ」
「まあ、泉の乙女の効果でそこら辺の女の子よりもたくましいですが・・・」
「暴力的とか、野蛮とか言っていいんだぜ」
「ドレク、君がいるでしょ。君から、トキアに届く可能性も消えなくはない:」
「なんかひどくない?」
「君の嫌いなことを言え」
「うそをつくこと」
「そういうことだ。嘘がつけないタイプだと思うから、トキアに知られたら大変なことは君の前ではできないよ」
アレスはため息交じりに言った。
「おいおい、友達だろ?」
「その前に君とトキアは従妹だろ?」
「まあな」
どんな王族よりも王族なくせに、まったく王族ぽくない男でもある。
「なーに、アレスが王になりたいなら譲ってやってもいいぜ」
その言葉の後ろには王竜様の世話に専念できるといいたげである。
「“王竜の契約者”が王になるのがならわしではなくて?」
「王族が王になるだけだ。一人二役なんて、レアなケースだぜ。うちではな」
ドレクが指を振ってこたえた。何が、甘いのかよくわからないが、そういうことらしい。
「にしても俺たちの前でトキアとはな」
「あのかわいいだけの女ね」
フェミンも何かいら立っているのか、そんな悪口を告げた。
「ドレクと同じで勘違いしてそうな女だけど」
「僕への愛は本物さ」
「ちっ」
フェミンがアレスのトキアへの溺愛ぷりに思わず舌打ちが出てしまった。
「おいおい、怒らすなよ。まあ、そんなお前もかわいいぞ。フェミン」
とまあ、勇者友人Aはそんなことをのたまってくれる。非常に迷惑な話である。
「あんたらは・・・」
「欲求不満?」
「夜なら俺がかわいがってやるぜ」
フェミンは二人を睨みつけた。
「ふざけんな」
フェミンの姿が消え、トキアの偽物の首が飛び、ドレクの前に立っていた。
持っていたナイフがドレクの胸元で止まっていた。
「やりそこねたか」
「そんな顔するなよ。唇うばうぞ」
ドレクはフェミンの殺気立った顔を見て、嬉しそうに笑った。
フェミンはその動きを止めて後ろ向いた。
「ちっ、女がいたか・・・変装は完ぺきだったのにな」
「君からは彼女の匂いがしないからね」
アレスは言った。
「それに僕が彼女の匂いを僕が間違えるわけないだろ?その姿は不快だ。元に戻れ」
「お・こ・と・わ・り・だ!」
それは首が飛んだはずなのに。とんだ首を拾い頭につけてすぐにくっつく。
「大したバケモンだ」
アレスは暢気につぶやいた。
そんなアレスの反応を見て。トキアの顔のままそれはケラケラと笑った。