勇者ギルド in 魔術学園都市 16
「調べてない?」
ラプサムの意外な言葉に驚きの声を上げたのは勇者アレスだった。
「ラプサムが調べてくれると思ったから、全力で殺したのに・・・」
「わりぃなあ。6人も来ていたから、ついな」
「6人?」
「しかも同じ顔」
ラプサムの発言を聞いてさすがのアレスも怪訝な表情を作った。
「おそらく、ゴーレムのように複数作ってみたのだろう。おそらく、人格すら魔術の術式に封じている可能性もある」
「ある人間の人格を利用しての完全自立型のゴーレムってことか」
メディシン卿の説明を聞いて、ラプサムは口笛をふいて、おどけた感じで驚いた。
「自立型ゴーレムを作るという話は聞いたことがありますが、それに人格を使うなど・・・」
ヘレンは首をかしげていった。そんな魔法はこの世界には存在していないようなそぶりだった。
「要は読み取った人格をゴーレムに与えることによって、その人格が自動的に戦ってくれるそんな感じか」
「そういうことになると思います」
「素材があれば、いくらでも増やせるってわけか」
「そういうことだと思います」
「クレイジーだな」
アレスの断言にラプサムが苦笑いを浮かべていった。とんでもないことだ。
そして人としての禁忌を犯している用しか思えない。
「つうか、これを生み出した奴はどんなやろうなんだ。マジで」
同じ魔法に携わってきたものとしては非常に残念に話しか思えなかった。殺してやろうとまでは思わないが、何か懲らしめないといけない気はした。
「おそらく、魔王群だと思う」
アレスは断言するように言った。
「間違いなく素体は魔王だ。魔王の力も持っていた」
「そうか、まあ、俺もこいつが力を使う前に俺たちがやったからな。これが魔王の力を持っているなんて思わなかったぜ」
ラプサムたちは相手をうまくはめ、殺したに過ぎない。あっさり勝ったものの実際の実力差は個々としてはいい勝負なのだろう。
ぶっちゃけ、運と言うよりも戦術で勝利した。戦術もまた間違いなく強さなので評価できるものだろう。
「まあ、あいつらが馬鹿で未熟な個体でよかったぜ」
「そうね。もう少し頭がよかったら危なかったかも・・・しれないわね」
「少ない可能性の話ですよね」
アレスはばっさりと言った。
「何事にも念には念を入れておいた方がいいだろう。魔力なしであの力だ。そして、われわれに襲い掛かった理由も何かあるはずだ」
ラプサムがレミアとヘレンの体に腕を回したままいった。
「説得力がないな」
ドレクが呆れたように言った。
「うちのメンツにかなうやつがいるのか?」
ラプサムは見まわすように腕で示しながら言った。ドレクは見まわして苦笑いを浮かべた。
「確かに」
「でも、油断はしない方がいい」
アレスが静かに言った。
「魔力がなくても、ゴーレムだとしても、魔王は魔王だ」
「なるほどね」
メディシン卿は興味深そうに頷いた。
「いずれにせよ。我々を襲い掛かった理由がデータ収集だとしても、あの程度で我々が本気を出すようなことはない」
ラプサムは静かに断言した。
「我々は人々に希望を与える“勇者ギルド”の面々だ。各個撃破されないように個々で注意を払ってくれ」
「当然だな」
ドレクがしたり顔でいうと、そこにフェミンが茶々を入れる。
「あんたが言うとなんか説得力ないのよね」
「うっせえ」
フェミンにそんな風に言われ、ドレクは頬を膨らませながら、怒って言った。
すると、そこにいる面々が同時に笑い声を上げた。