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勇者ギルド in 魔術学園都市 13




「あんたが光の契約者かい?」




 メディシン卿が貴族御用達の店で紅茶を嗜んでいるとそんな声がいきなりかけられた。


「違うな」


 “光の戦乙女の契約者”であるメディシン卿はそのまま紅茶のフレーバーの匂いを楽しんでいると、男は激高したように言う。


「まああんたが何者でも俺には関係ないな!」


 男はそういうとメディシン卿のテーブルを蹴ろうとして、その足が壁のようなものにぶつかったことに気が付いた。


「失礼な方だ」


 メディシン卿はのんびりといった。紅茶の時間を邪魔してほしくないようだ。


「なんで蹴れない?」


 男は驚いたように言った。それから気が付く。


「魔法障壁!」


 男はすぐい後ろに飛び下がった。戦闘態勢に入るが、メディシン卿は特に戦闘態勢に入った様子はなかった。


「てめえ、何者だ!魔法使いか!」


 男は驚いたように言った。メディシン卿からは魔法が使われたような様子は一切見られず、何かした様子も見られなかった。


「設置型の魔法だよ」


 メディシン卿は静かに言った。その後、紅茶を口に入れる。紅茶を楽しむ余裕を男に見せていた。


 男のことなど眼中にないといった様子で、彼のことなど意に介してないのが明らかだった。


「すげえなあ」


「貴族のたしなみってやつだ」


 そんな嗜み聞いたことがないが、というか、男にもわからないレベルで魔法を設置することなど本来はできない。


 そして、設置型だとしても男に設置したものがなんらかの力で発動したことがわかるくらいに男の能力は高い。


「戦士だと思っていたが、そこらにいる魔術師よりもすげえじゃねえか」


「竜騎士なら、できて当然。その国で少し勉強させてもらったしね。僕は」


 メディシン卿は男を一瞥し、その様子を見て、小物にしか思えなかったので、紅茶に目を戻し、残り少なったソレに少し残念な気持ちになった。


「竜騎士ってことは、ワルシャル竜王国か・・・確かにお前らはそこで修業したらしいからな」


「僕はしてないけどね」


 メディシン卿はそういうと男を見た。男はいきなり足を何かに払われ、倒れると地面に何かで押さえつけられた。


「なんだこれ?」


「俗にいう“見えない軍団”だ」


 本物と比べたら、微々たるものだが、いちお使えなくはない。本物なら、三百人を同時に捕えることができる力量がある。


 メディシン卿はがんばっても二、三人が関の山だ。


「おまえにとっちゃ、俺たちのなんて手も使う必要がないと?」


「そういうことになるね


 メディシン卿はのんびりと返した。


「化け物が!」


 男は悔しそうに言った。というか、魔力が感じられない人間にはメディシン卿に何をされているのかもよくわからないだろう。


「化け物かどうかわからないけど。君たちよりは強いんじゃない?」


 あまり気が進まない様子でメディシン卿は言った。


 メディシン卿はそもそも撃破役というよりも、支援役の方が得意とする。相棒である妻が完全に撃破役なので、それを支援したり、サポートするとなると気が付くとそれが非常に得意となり、かなり優秀な守り手になった。


 魔法障壁、魔剣の遠隔攻撃などもそうしたものの一つだ。魔剣もできる方ではあるが、それがすごいかというともっとすごい人材がいるので、そうは思えなかった。


 二つの精霊と契約しているので、その分もかなり強いし、優位ともいえる。


 勇者がいるので最強ではないが、かなりの強さを持っているのは自覚していた。


「さて、君はどうした方がいいかな」


 すると地面から一人の男が姿を姿を現した。魔族がたまに使うと言われている異能“影渡”、その能力を使って移動してきたのだ。


「あなたが“光の戦乙女の契約者”様ですね。さすがです。見事な手際、その技見せて頂くわけにはいかないでしょうか?」


「随分なものいいだね。殺したくなるよ」


「そのつもりで結構ですよ」


「ほう・・・」


「え?」


 メディシン卿が感心したような声を上げた後、男は急に驚きの声を上げた。腹を見るといつのまにか、腹に剣のようなものが刺さった跡ができていた。


 刺した凶器はそこには存在していなかった。


「話にならないね」


 魔族の男は戸惑いしかなかった。殺されたのはわかったが、何をされたのか全く分からなかった。


 それが全く見えなかった。突如、刺されたようにしか見えなかったのだ。


「何が起きたんだ?」


「少し本気出した。“光の戦乙女の契約者”として・・・」


 メディシン卿はのんびりといった。男は言葉の意味が理解できなかった。


 今のが本気?“光の戦乙女の契約者”のこれほど、恐ろしいと思ったことはなかった。


 これほど恐ろしい存在に出会ったがことがなかった。時を止めたようにしか思えなかった。


 それほどまでに早く、一瞬で決められていた。


「ば・・・ばかな」


 魔族の男はそこまでいうと、体から力が抜けていくのを感じた。そこであることに気がつく、本来再生能力が高い種族である自分の体が全く再生がされないことに・・・


「ばかな」


 何かされているようには思えない。ただ、力が抜けていくのを感じだ。


「ふ・・・ふざけるな」


 男はそういうったが、次第に気力も霧散していく。集中力がなくなっていくのだ。


「なんだと・・・」


 そのまま男はそこに倒れた。


「ふむ」


 メディシン卿は紅茶を飲みながら、「亜光速戦闘モドキ中に、魔剣の作成からの魔吸空間の作成か、実際試すとえげつないな」と心の中で呟いていた。


「ハマス!」


 そこにいた男が倒れた男を見つめていった。ハマスという名前だったらしい。


「よくも・・・」


 男が反抗してきそうなので、そのままゴトっと首を落とした。


 血がそこに一気に広がった。だが、そのとたん、その男の体が黒い不気味な肉塊のようなものに変わる。


「これはいったい・・・」


 メディシン卿でもわからないことがある。これもこうしたもののひとつである。


 だが、気持ちのいいものではない。


「何かの呪い・・・もしくは、魔法生物か」


 フレッシュゴーレムの死骸などはこういうことになることを思い出した。フレッシュゴーレムとは人肉で作られた醜悪なゴーレムだ。たまに古代迷宮などで見るものだ。


 その黒い肉塊のようなものはソレによく似ているような気がした。


「趣味が悪いな」


 店に処理してもらうしてもいい迷惑だと、そこに転がっている黒い物体と魔族の死骸を見て思った。


「面倒な」


 メディシン卿は自分がやってしまった惨事に思わずつぶやいてしまった。殺したことに対する罪よりも、ここを汚くしたことに罪悪感を覚えるのであった。


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