勇者ギルド in 魔術学園都市 10
「いいながめだ」
ワイヴァーンにのったドレクが嬉しそうに言った。その体にはフェミンが抱き着いていた。
「何考えてんのよ!」
「偵察だろ?」
ドレクが暢気に返した。ドレクは空を飛んでいたワイヴァーンに何やら話しかけると、そのワイヴァーンがやってきてドレクを乗せたのだ。
ほぼ、ついでとばかりにフェミンを一緒に抱きしめて、一緒に空に飛びあがったというのが現状なのだ。
「そんなことしなくてもレミングたちが・・・」
そういいながら、13本の学園の塔が立ち並ぶ、整然とした都市を見てフェミンも言葉を失う。
「これ、すごい」
なめていたとフェミンは思った。
聖都でもレミングは展開できたが、さすが、魔法学園都市圏などともいわれるほど、学園を中心に都市が広がっていた。
こんな光景はめったに見られるものではなかった。フェミンもこの都市の端の方で育ったような口ではあるが、こんなことになっているとは思いもよらなかった。
「いやあ、おつだね。こんなところでワイヴァーンにのって、こんな光景を見られるなんてな」
ドレクは嬉しそうに言った。
「双子ちゃんに見せてあげれば?」
「あいつらは塔から見てるだろ?あんたはそういう経験がないはずだからな」
「悪かったわね。所詮スラム出よ」
「怒んなよ。俺もこの光景は初めて見るんだからな」
ドレクが嬉しそうに言うと、塔の方から人が飛んできた。風の魔力をまとって空を飛んでいるようだ。
それだけで、魔法学園ではトップクラスの魔法使いであることは明白だ。そんな奴がワイヴァーンに乗った不届き物を成敗しにきたのだろうか?
「何者ですか?」
四人の男を引きつれた腕章をつけた男が言った。おそらく、リーダー格なのだろう。
「“王竜の契約者”って知ってるか?」
逆にドレクが訪ねた。とたんに、男の顔が険しくなる。
「何を言っている?」
「“王竜の契約者”がこの町に来たってことだ。野良のワイヴァーンを従えている」
そういうと、男がワイヴァーンを見た。ワイヴァーンには鞍がついていなかった。鞍などをつけずにワイヴァーンに乗るようなものがみたことがなかった。
「な・・・なに?」
それだけでも十分な衝撃なのだが、目の前の男はしっかりとワイヴァーンをコントロールしているように見える。
そんなことができるのは竜と小さいころから、それと暮らしていた人間だけだった。
つまり、この男がそんなことができるのである。“王竜の契約者”というのも嘘ではないということになるのではないだろうか?
「き・・・さま」
魔法学園都市でもワイヴァーンを飼いならそうとしたものたちがいたが、そのほとんどがワイヴァーンの暴走という形で終わり、竜王国のようなことができなかった。
そのかわり、ドラゴンゴーレムという技術ができ、それを使って最近は飛べるようになっていた。
だが、それもハイワイヴァーンなどには勝てないし、ドラゴンなど夢もまた夢である。
「俺の名前はドレク」
「フェミンよ」
二人はその男に名乗った。すると取り巻きの一人が顔を色を変えた。
「その男がドレクならば、聖都の怪物を倒したのも・・・」
その呟きを聞き、リーダーの男もあきらめがついたのか、
「なるほど。わかった」
と、素直に自分たちがいた塔の方に戻っていった。
「なんだ?」
「おそらく、モンスターが襲ってきたんじゃないかと思ったんじゃない」
ドレクはワイヴァーンを見た。それからいう。
「なるほどな」
「まあ、ワイヴァーンなんて、めったに見れるものじゃないし、それに加えて、野生のワイヴァーンを乗りこなすようなものはなんてそうはいない」
「そうわね・・・」
ドレクは自分が過ごした環境を思い出した。確かに異常な気がした。
「アレスも乗れるんだがな・・・」
「なんで乗らないの?」
「さあ」
ドレクは首をかしげるとフェミンも困った顔になった。
「ついでにマップを頭に入れたいから、支持された通りに動きなさい、御者」
「はいはい、お嬢様」
「お・・・お嬢様!」
「言われたかった?」
「うっさい」
「いちお、王子じゃないが、王族だぞ。俺」
「うっさい。黙れくそ王子」
「ひどいな」
「うっさい」
そんなことをいいながら、フェミンの腕はドレクから離れなかった。ドレクはそれがうれしかった。
二人の距離は少しづつであるが近いものになっていた。