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勇者ギルド in 魔術学園都市 9




「“七星”とは最高の武器だ」



 教師が誇らしげにそう語った。魔術学園の中でそれは特別扱いを受けている武器だった。


 勇者の剣よりも強い武器を作る。魔術学園でそれをなす。


 そのために精霊などを捕まえ、なんとか7つの武器にすることができた。そして、それを扱うには勇者並みに難しい条件にしようとした。


 その条件がいけなかった。7つの精霊が出す、試練を突破したものなど彼が出るまでなしえなかったことだった。


 だが、それがとうとうなされ、正式な“七星”に選ばれた男がいた。


 だが、その男も炎の勇者にはかなわず、大きな戦果をあげることはなかった。


 所有者が悪かったのだろうか?


 いや、あれほどの条件を超えられるものなどいるはずもなく、あれを突破できたこと事態が奇跡に思える人材だった。


 その結果がこれだった。


 ただ、そこで救いが生まれる。新たに結成された勇者パーティーのメンバーにラプサムが推薦されたのだ。


 これは僥倖だった。


 “七星”が狙った通りに輝ける可能性が出てきたのだ。


 その僅かな可能性に“七星”派はかけることになった。




「ふんで、俺に武術大会に出ろと?」



 ラプサム、レミア、ヘレンは呼び出されてそんなことを言われた。


「そういうことだ。君にはガルドルが見せたこと以上のことをしてもらいたい」


「無理だ」


「即答だな」


「俺は魔法容量が少ない。ガルドルのようなことはできない」


 ラプサムは目の前に座る魔術学園の理事長に向かって冷たく言い放つように言った。ガルドルギルドが倒れると同時に台頭してきたのが、この男、“七星”派のリーダー、マルーク・ファウンドだった。


「困るな。では、“七星”は返してもらおうか?」


「別にいいぜ」


「そうか、それでは・・・は?」


 予想だにしない答えが返ってきて、マルークは戸惑った反応になる。


「いらないだと?」


「そうだ。別に“七星”そのものは個々はその辺の魔剣と性能は変わらないしな」


 ラプサムは暢気に言ってのけた。その言葉にマルークは唖然とした。


「バカな、精霊を封じた剣だぞ」


「仕方ねえだろ。ちょっと特殊な武器なだけで、威力とかはその辺の武器とかわらん。セットで持っているからプレミアがあるだけだぞ」


 ラプサムはあまり興味なさそうに、“七星”を外し、マルークの前に置いていく。


「貴様」


「“七星”は優秀な武器だ。だが、それだけだ」


 切り捨てるようにラプサムは言った。


「別に俺はこれに頼る気はないしな」


「ふざけるな。この武器を作るためにどれほどの犠牲が・・・」


「しらんな」


 ラプサムは切り捨てるように言った。


「まあ、そんなオモい武器なら俺は余計にごめんだな」


「なんだと?」


「武器ごときにそんな思いれをするなんて、・・・俺の趣味じゃねえな」


 ラプサムはのんびり言った。何せ、ガルドルギルドを抜け出すときはこれを失っても仕方ないと思っていたくらいだ。


 故に今もこれを絶対に身から放したくはないとは思わなかった。何やら、黒い影がまとわりつくなら、手放しても惜しくはなかった。


 そもそも、ラプサム的には“七星”のトレースは完全にできている。物がなくてもあまり困らない。


「貴様は使命というものがどれほどのものかわかっているのか?」


「興味ないね。だから、冒険者なんてもんにかじりついてまでやっているんだが?」


 勇者パーティーに入ったのも冒険者を続けるためだ。それ以上もそれ以下もない。


 様々なしがらみに縛られるつもりはいっさいなかった。


「それを置いたら、勇者ギルドにいる資格がなくなる可能性があるとでも?」


「旦那や勇者が俺を見捨てるとは思えんがな・・・」


 ラプサムは小ばかにしたように言った。


 マルークは思わず立ち上がった言った。


「“七星”がなければ何もできない男が!」


「そんなことはないんだがな」


 困ったようにラプサムが言った。


「まあ、あなたがサム君を勇者ギルドから追い出そうとしてもいいけど、私も抜けるわ」


「私もです」


 レミアの後にヘレンが続く様に言った。


 それを聞いて、顔色を変えたのはマルークだった。


「はあ?“元聖女”と“戦略級魔術師”が抜けるだって?そんな何でもない男のために、名誉を捨てるのか?」


「名誉?そんなものよりサム君がいい」


「それは一緒。不本意だけど」


 嬉しそうに言うレミアとヘレン。


「そうそう、残念なことをいうと“七星”も“元聖女”も“戦略級魔術師”もね、勇者ギルドの格子じゃないの。うちのギルドは“勇者”と“王竜の契約者”、“光の戦乙女の契約者”がいれば、十分なのよね」


 レミアは苦笑いを浮かべるように言った。


「私の代わりはいくらでもいるでしょ?“聖女”含めて」


 それを聞いて、マルークはガリっと歯を食いしばった。自分の代で学園から“聖女”を送り出したかっただろう。“聖女”という言葉に彼は怒りを覚えていた。


「だけど、あの三人の代わりはいないのよ。彼らがいて初めてあのパーティーは成立するの」


「まあ、フェミンもいるし。俺がいなくても問題はないだろう」


「うんうん」


 二人の言葉に衝撃を受けているのはマルークだった。ギルドが成りたたくなてもまるで問題ないようなそぶりだった。


 それはその三人がいれば、何も問題はないと、目の前の確かな実力を持った三人が言ったのだ。


「だって、聖都に現れた魔王の怪物もほぼその三人が倒したようなもんだもん」


 レミアがのんびりといった。それを聞いて、目を開いたのはマルークだった。


「噂には聞いてますが、そんなことが人の身でできるのですか?」


「実際にできるんだからしょうがねえだろ。あれらは核が違う。まあ、俺ももうちょい修行すれば、できるかもしれないが、その時にソレがいるかどうかは別の話だ」


 ラプサムがソファーにどっかり座りながら、面倒くさそうに“七星”を顎で指しながら言った。


「バカな」


 マルークは絶望的な気分だった。


 “七星”にかけてきて人生がもろくも崩れ去ろうとしていたのだ。お前の努力は無駄だったと、暗に言われているようだった。


 そこで、ある言葉が耳に残った。


 ある程度修行すれば・・・


「まさか、今はできないが、時間が経てば、同じようなことができると?」


「できるようになりてぇなあ」


「勝算はあると?」


「まあ、道筋は見えているな」


「・・・持っていてくれ。その時にソレを使ってくれればいい」


 そのラプサムが見えたという道筋にかける価値は、今はありそうな気がした。


「わかった。ありがたく使わせわせてもらう」


 ラプサムは“七星”を身に着け始めた。


「どうすれば、勇者の剣にかなうものが作れるのか知っているのか?」


「まあ、これから、俺たちはそれを作るつもりだ。勇者の剣よりも強力な剣を・・・」


「何?」


「“神殺しの剣”、それが俺たちが作りたい剣だ」


 それを聞いてマルークは目を大きく開いた。信じられないという顔であった。 


 それから興味がありそうな顔になった。

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