勇者ギルド in 魔術学園都市 7
何を隠そう俺は異世界転生した魔王である。
元の世界では、別に行けていないごくごく普通のサラリーマンだった俺が、何の縁かわからんが、異世界にやってきて魔王なんぞやっている。
世界を混乱させるために自称“神”というものの指示の元、暴れてみた。
魔族と呼ばれる者たちを率いたり、商人たちの欲を利用したり、悪逆非道を我ながら尽くした。だが、しかし、そんなまっとうな魔王である俺の前に櫃の障害が立ちふさがった。
勇者である。
その勇者はこともあろうか、俺に逆らい俺の素晴らしい作戦を次々に潰していった。
気が付けば、目の前で勇者の剣ともいわれている剣を振り上げてこちらを見つめていた。
その脇には一人の男がたたずんでいた。戦士の男だ。パーティーの男で部類の人間とは思えない怪力を持ち、暴れまわっていた。
こいつには本当に手を焼かされていた。
勇者ですら手を焼いているようにも見えた。
俺の手元にいるはずの兵たちはすでに俺の盾となるべく、骸となってすでに地面にへたばっている。
「これで終わったと思うなよ。俺は必ず復活してお前らに復讐してやる」
追い詰められた俺はそんな言葉を口にした。
この勇者というものはありとあらゆる力を読み取り、どんな力にも対抗して対処して見せたのだ。そんな化け物に勝てるはずもなく、俺はただ一方的に殺されそうになっていた。
傷ついた俺は気持ちだけは負けないようにそんな風に言った。
すでに魔法の発動は終わっている。それは転生できる魔法だ。力や知識を持ったまま別の個体に生まれ変わる呪法だ。
俺はすでに転生の魔法を発動させていた。旗色が悪くなったのを悟った俺は転生の魔法を使った。
我ながらいいプレーだと思った。この勇者には勝てる気は一切しなかった。
勇者は剣を振り上げて、そして下した。
俺は何の抵抗もできず、切り裂かれるだけだった。
俺以外にも魔王が生まれてしまった要因もこの勇者の強さにあるのだろう。今代の勇者それほどまでに強く、そして美しかった。
これほど、美しい人間にあったことはなかった。
「俺は必ず・・・」
俺は次の言葉を紡ぐことはできなかった。
言いたかった言葉はこうだった。
「お前を手に入れてやる」
それを言い切る前に、俺の体は光に包まれ、真っ二つにされた。
彼女の手で・・・
「お・・・お前は」
それはとても怖い夢だった。
黒い巨大な影が現れ、それが私を包み込もうとしていた。
だが、私の額が光り始め、それが影を一気に払っていった。それが何がわからなかった。
だが、とても怖いものであることはよくわかった。
私の体から出た光を浴び、それは逃げ出した。
「くちおしや・・・」
それは悔しそうに言うとそのままそこから消えていった。
それが何かいまだにわからない。
だが、とても怖いものであることは体の芯から理解することはできた。
それは、それは、魔王のような、魔王ではないないものだった。
だが、それに近い力を持つものであることはよくわかった。
私は、それを祓うために強くならなければならない。それが私の道だから・・・
「夢か・・・」
レイは目覚めの悪い気分になりながら起き上がった。
父と母が自分を守って死んだときの状況によく似た夢だった。なんでも、強力な魔王を蘇らせるために、レイの魔力を利用してそうさせようとしたらしい。
だが、それを父と母が何とか防ぎ、そこに魔術学園の援護が入り、レイだけは助かっていた。
魔術学園にはその時の恩義もある。
そして、レイはその影をどうにかしなければいけないと思っていた。
その影が何者かは不明であるが、レイの敵であるこは確かである。
「いずれ決着をつける」
レイは静かに言うと、それから体を伸ばし、あくびをした。
今日も学校がある。
レイは心中でつぶやくと、ほら吹きと委員長の二人がかまってくるだろうと思うと不意に笑みがこぼれた。
そんな人生も悪いような気がしなかったからだ。
「人生を楽しませてもらうよ。とうさん、かあさん」
レイは静かに呟いた。