勇者ギルド in 魔術学園都市 5
「“七星”には精霊が宿っている。あなたが従えるべきはその精霊たちだ」
といきなり言われた。
「なるほどな。こいつらが俺と契約したがっていると?」
「そうはいっていない。その時が来れば、君の力になってくれるだろうと精霊王が言っていた」
「その時か・・・」
ラプサムはそういうと武器たちを見た。特に反応がない。
確かに以前よりもうまく使えるようになったが、使ってみれば見るほど、この“七星”の主になったような気がしなかった。
そもそも、“七星”が魔剣の走りとされ、これができたことによって魔剣生成の技術が発展したといわれている。
その技術も魔王との抗争や戦争などで失われているが、“七星”が初期の魔剣であることは知っていた。その力も今のラプサムなら一部であることはよくわかってはいた。
だが、精霊の契約者達の力を見る限り、ラプサムや“七星”がいかに精霊達の力を使いこなしていないのかよくわかった。
「今はその時ではないと?」
「そういうことになるね」
メディシン卿は静かにうなづいた。別にショックは受けなかった。なんとなくそんな気がした。
“七星”を得てから、ピンチになることはなかった。なぜなら、その頃から、ガルドルとの実力差が開き、他の仲間たちにも実力が劣りだし、武器だけの男に成り下がっていた。
実力ではなく、武器で勝ってるなんて陰口をよく聞いたものだ。そのため、サポートに回ることが多くなり、大きな戦果をあげることよりも、情報収集をし、仲間に戦果を挙げてもらうような動きになっていた。
それでうまくやっていたつもりだったが、ほかのメンバーから不満がつもり、結局ギルドからでることになった。
そんなピンチになるようなこともなく、勇者パーティー、現勇者ギルドに入り、今まで危ない目に合うようなことなく、ここまで来たのだ。
“七星”が覚醒しなかったのもそういう経緯からなんだろう。
まあ、今はやってみたいことがあるので、あえて“七星”に頼るつもりはないが・・・
「いいけどな。俺は試したいことがほかにもあるし、そういう保険として考えておくぜ」
「そうか。わかった。ちなみに精霊王からは精霊との契約条件は特に聞いていない。七星達が君を主に認めた時がそれらしい」
「ふわっとしてるな」
「精霊との契約なんてそんなものだよ」
メディシン卿が肩をすくめて言った。ラプサムは笑いたくなって、くすっと笑った。
それを見て、メディシン卿も笑い出す。
それが広がって、お互いに笑い出した。何がおかしいかわからないが、なんとなくおかしかった。
「で、アレはできそうなの?」
レミアが唐突に聞いてきた。アレというのはきっと、ガルドルがやったアレをラプサムがラプサムなりに再現しようとしているものだ。
「まあな。やつとも戦えるぜ」
ラプサムは嬉しそうに言った。
「“炎身”をやるには魔力が足りないんじゃないの?」
ヘレンが心配そうに尋ねた。ラプサムが“炎身”の練習をしていたことは知っていた。だが、ラプサムの体内にある魔力量では“炎身”がガルドルのようにはできないことは知っていた。
すでにあきらめたはずの技だった。
「その通りだ。だから、俺はやつのような“炎身”はできない。けど、俺は人一倍器用だからな、そこは工夫させてもらった」
「へえ」
意外な答えにヘレンが目を細めた。それから、レミアを見た。
「というか、なんでレミアがそれをわかるの?」
「だって、サム君はメディシン卿とは違う方向で天才なんだよ~。メディシン卿の魔法学とガルドルが見せた炎身、さらにサム君の器用さがあれば、おのずと答えは出るよ」
「さすがだな」
レミアの言葉にラプサムは素直にほめた。
「うん、サム君のことわかってんの私だもんね」
「むむ、それは負けれない」
すごくうれしそうに語るレミアを見て、悔しそうにするヘレン。かなりのジェラシーのようなものがあるように見受けられる。
「変なことで喧嘩するなお前ら」
「何言ってんの」
「これは非常に大事なこと。ラプサムへの理解度は正妻の座を競う際に必要」
レミアとヘレンが批判的な目でラプサムを睨んできた。正妻の座をめぐる争いはいろいろとあるらしい。
だが、正直なところ、それで自分を巻き込むのは勘弁とラプサムは思っていた。思っていたが、ハーレムを作る際にはそうした犠牲にならなければいけないのものだろうとラプサムは覚悟するべきところでもある。
「まあ、仲良く言い合えよ」
「その点は大丈夫」
「うん」
よくわからないが、その点は大丈夫らしい。何かそうならない確信のようなものが二人にはあるようだ。
「「だって、同じ人を愛している者同士だし」」
といって、同じセリフを言ってお互いを嬉しそうに見つめた。
よくわからないが、そういうことで納得しているらしい。ラプサムにはよくわからない世界だ。ただ、それもなんとなくだが、悪い気はしなかった。
いいことのような気がした。
「まあ、俺は二人とも好きだからな」
ラプサムがそういうと、二人はより嬉しそうに腕をつかみ、頬をこすりつけて楽しそうにした。
めちゃくちゃ動きづらいがラプサムは二人の自由にさせていた。