勇者ギルド in 魔術学園都市 4
「ピルクとミラクが学園を辞める?」
そんな話を聞いて、顔をゆがめたのがミラクと同じ聖女候補であったが、ミラクの実力で落とされたレンだった。
「なんでも、勇者ギルドにはいるらしいわよ」
それを聞いてレンは頭を抱えたくなった。聖女候補から落ち、栄えある勇者ギルドに入るつもりだった彼女としてはその言葉は絶望に近かった。
「うそでしょ。あの体力だけのバカ女が勇者ギルドに入るなんて・・・」
レンはその事実に顔色を変えた。
ミラクは聖拳家にして、それなりに回復魔法も使用することができる。“蘇生”は使えないものの、その聖拳家の実力があるので、学園として、“蘇生”が使える王族の当て馬候補者としては十分な実力だ。
そう、学園側も聖王国が待望していた王族での“蘇生”使いの聖女が生まれたのだ。それに勝てるような候補者を用意するはずもなく、結果的に候補者として落ちても傷にならないミラクが選ばれたのだ。
これには本人たちの意気込みややる気などは一切関係なかった。故に、前回はそれなりに選挙に積極的に活動していたが、今回はその影もひそめていた。
レンも実は参加したかったが、それがかなわなかった。
「まあいいわ。聖女を殺せばいいのだけど・・・」
あのトロそうな女が勇者ギルドに入ったことが気に入らなかった。ただ、聖拳家の才はあるので手を出したら、ただでは済まない。
聖女になるために攻撃魔法などはほとんど練習してこなかったし、その才能はないのは知っていた。
300年ほどの魔術学園の歴史の中でも“蘇生”の魔法使えたやれたのはそれほど多くはないのだ。前回、聖女になれたレミアという存在がレアなだけだ。
その“聖女”の次に名誉なことが勇者ギルドの加入だった。
“聖女”だったレミアが入ったガルドルギルドも勇者候補として認められたため、“聖女”レミアが加入し、勇者ギルドに近い扱いを受けたのだ。
レンもそういうギルドに入りたかった。だが、それがミラクという女のせいで、また、それを阻まれることになる。
それならば、“聖女”の方を殺して、自分が今度は“聖女”となる。そのためには“蘇生”の魔法を解読する必要があるような気がした。
「レミアと王女を捕まえて、解剖し、解析したら・・・」
「なるほど。それで蘇生の秘密がわかると・・・」
「そういうことよ」
レンは嬉しそうに言った。
「じゃあ、まずはレミア・・・いえ、レミア様をご招待しないといけないわね」
レンは嬉しそうにほほ笑んだ。
「そうですね。お嬢様」
そこにいる女性は嬉しそうにほほ笑んだ。
「サムく~~ん」
うれしそうにレミアがラプサムの体に顔をこすりつけて、あまり音が大きくならないクンクン匂いを嗅いでいた。
「何してんだお前」
「匂いでた」
「変態」
ラプサムの体を中心に反対側にいるヘレンが半目でレミアを見つめながら言った。
積極的なレミアに対して、ヘレンは若干消極的だ。だが、腕をぎゅっとしっかりと握って離さないようにはしていた。
レミアは時折、顔をこすりつけたり、ラプサムの手で遊んでいたりと、ラプサムで遊んでいる。
対してラプサムはそんな状況であるが、馬車での移動の中、ほとんどやることがないので好きにさせている。正直な話、彼女たちの感触が悪いわけではないのでほっとくことにした。
ただし、夜には仕返しを心に誓っている。そのためのパワーをためている状態だ。
「ふっふふ~~んここは私の特等席だもんね」
「レミアは淫乱」
「いいじゃん。ラプサム君だけだもん。ある意味純真」
「純真?それは私のためにある言葉」
最近ではそんな口げんかもする。別に彼女たちはお互いを嫌っているわけではなく、良好な姉妹のような関係になっている。
もちろん、レミアが姉で、ヘレンが妹だ。
まあ、どっちもいい女なのでラプサム的には選べないといったところだろうか。
「まあ、向こうについたら、そうもいかないだろう。俺ら」
何せ、いちおは魔術学園は三人の学び舎ということになっている。ガルドルギルドでもいろいろな面で協力してもらったところである。
聖王国の時のような態度はさすがにまずいだろうとラプサムは思っている。
「サム君に寄って来る悪い虫は私が倒す」
「レミア以外は許さない」
ヘレンもレミアも自分たちが何故か狙われないと思っているらしい。ラプサムの要旨はそこそこいい男であるが、勇者アレスほどではない。
あれがいて狙ってくるのだろうか?
そういえば、妻帯者だった。ただ、ドレクの方が王族だし、あっちはハーレムも認めている特殊な家庭事情がある。あっちの方が妻をめとる可能性がある。
そんなドレクはフェミンに手を出しているのだが、うまくいっていないようにも、うまくいっているようにも見える。
ラプサム的にはいいコンビの気がした。
“王竜”での移動を味わってしまったため、やたらと馬車での移動がかったるくてしょうがないと感じているラプサムはあくびをした。
移動で便利といえば、“嵐”が使役していた精霊がかなり便利そうだ。集団をかなり安全に空中移動させることができる。
“光の戦乙女”はかなり危ないというか、加護がないと死ぬレベルのやばい移動なのだが、精霊馬の移動はかなり便利そうな移動をしていた。
「ああいうのもいいよな」
精霊の便利さを感じながら、ラプサムは遠くを見つめていった。
それから、身に着けている武器の数々を見た。
「七星か・・・」
ラプサムは先日のことを思い出した。