勇者ギルド in 魔術学園都市 2
「これが魔術学園都市か」
馬車に並走する馬に乗っていたドレクが嬉しそうに言った。
竜騎士が馬車での移動とは情けないとか、そんな理由で一人、騎乗している。ちなみにフェミンも後ろに乗せている。
「つうか、なんで私も付き合わなきゃいけないの」
と不満を爆発させながら、フェミンは言った。最近、フェミンはドレクとペアにされることが多い。
それで文句を言っているのだ。
ラプサムもそのことを特に気にした様子もなかった。
それもそのはずだ。ラプサムの両サイドにはヘレンとレミアがくっ付く様に一緒にいるのである。
二人はラプサムのハーレムであり、お互いにそう認めている仲だ。
そんな仲に入りたいとは思わないフェミンはドレクと一緒にさせられる。おそらく、ドレクのハーレムに入れるとかそんな腹積もりだ。
やってられない。
フェミンは愚痴りたくなるのを我慢しながらも、それに従っている。
「いいじゃん、王子様とのデートだぞ」
「もっと、美形なら考えるわ」
「おいおい、アレスのことか?」
ドレクが嬉しそうに言った。美形といえば、大の親友であるアレスが浮かんだ。であった頃は女性にも間違えられるような容姿をしていたのだ。
それほどに美形である。
「違うわよ」
フェミンがため息をついた。
ドレクとはいつもこんな感じになる。ドレクのボケに突っ込みをついつい入れたくなる。
確かにすでに夫婦漫才ができるほどに二人の仲は気の楽な関係であるが、とてもじゃないが、恋愛なんて呼べるようなものではない。
気楽な友達だ。
そういえば、スラム街育ちのフェミンからすれば、こんな気楽な男友達なんてできた記憶はなかった。
フェミンに近づいてくるような輩は大抵はフェミンの美貌や盗みの腕をかってのことが多かったが、それとも違うような気がした。
「そうか、そうか。まあ、ほかに美形の男子なんて知らないしな」
「ラプサム先輩」
「ああ、ありゃあ、美形だ」
ドレクがうなづいた。割とすんなりとうなづいていた。
「まあ、あれだけ美形ならハーレムなんて余裕で出来ちまうんだよな」
「顔だけないし」
「そうなのか?」
フェミンの言葉に意外な反応をドレクは見せた。
「顔が好みだから反応したと思ったぜ」
「確かにそうだけど・・・そうなんだけど・・・」
「なんだよ。はっきりしねえなあ」
「うっさい。女心は複雑なの!!」
「ちげえねえ。男からしたら、複雑で摩訶不思議、魑魅魍魎まで住んでいる。そんな場所だしな」
「ずいぶんな言い方ね」
「ダンジョンよりも複雑だってことだよ」
ドレクの言葉にフェミンが肩をすくめた。
「あんたがバカなだけよ」
「そうなの?」
「鈍いしな」
そこまで言われるとさすがのドレクも不満がありそうな顔になる。
「まったく、ひでえなあ」
「あんたが言うセリフじゃないわよ」
「そうか?」
「そうなのよ」
フェミンはそういうと脇を見た。小鳥たちが仲良く囀りをしながら、飛び回っていた。
ああいうのもいいなと思った。
「そういえば、あんたって魔術学園みたいに同世代と一緒に過ごしたことがあるの?」
「当たり前だろ?騎士学校ぐらいは出てるわ」
「騎士学校か・・・」
「ああ、アレスといつも一緒だったぜ」
「アレスに悪いこと教えてそう」
「そ・・・そんなことはないぜ」
ドレクは目線を逸らしながら言った。
「怪しい」
フェミンが冷たく言った。
「うっせえ、特にかく。そういう、フェミンはどうなんだよ」
「ないわよ。だって私スラム街出身だし、技も全部見て盗んだ」
ドレクの質問にフェミンは冷たく言い放った。
「つまんねえ」
「うるさいわね」
フェミンが顔を赤くしていった。
「しょうがないでしょ」
「まあな。俺に小さい頃は世話人として過ごしてきたからな。普通とは違う生活だしな」
フェミンは言われてはっとした。ドレクも普通とは違う生活をしてきた。竜と共に生きる。
過酷な環境下で過ごすことによって、竜語を理解し、竜の意思を汲めるようになり、“王竜の契約者”としての道があるのだ。
どれほど、苦労してきたのか、フェミンにはわからなかった。
ただ、ドレクのただならぬ身体能力から察するに想像も絶するようなことを積み重ねてきたのは明らかである。
「まあ、学園生活を覗くのもいいんじゃねえのか?」
「そんな子供じゃないし」
「そうか、俺は楽しいぜ。そういうの」
「あんたが特別なんでしょ」
「そうか?」
「そうよ」
二人が乗る馬と他のメンバーを乗せた馬車の旅はまだまだ続く。