勇者ギルド in 魔術学園都市 1
「ば・・・化け物!」
私が解き放ったそれは実の父である男にそういうセリフを言わせるには十分なものであった。
私が具現化してしまったソレは鋭い牙と爪をもち、父襲い掛かっていた。
「くそ!」
「やめて!」
母親が悲鳴に近い声を上げた。私は気にすることはなかった。
いや、その魔物は母を傷つけているソレを殺そうとしていた。
「やめなさい。あなたもそれをしたら、化け物に飲まれてしまうわ」
それでもかまわないと私は思った。そんなことよりもこの不快な生き物をどうにかしたい気分だった。
「なんでだよ。お前らはただの魔法使いの家系じゃないのかよ」
父は冒険者の家のもので母と冒険者として仲が良くなり、結婚をした。ただ、今はケガで引退を余儀なくさせられ、ただ飲んだくれに落ちている男だ。
あのたくましかった父はここにいない。
これは父の皮を被った別の生き物なのだ。
「なんで魔物なんか、召喚できるんだよ!」
父は焦ったように言っていた。まさか、私にそんな力があるなんて思いもしなかったんだろう。
だから、平気で暴力をふるうことができたのだ。
母も私を生んでから力が大きく減退し、冒険者を辞めざるを得なかった。それでも、普通の暮らしができれば幸せだった。
だが、父のほうが上手く世間に溶け込めることができず、ただの呑んだくれが出来上がってしまったのだ。
酒によっては私や母に暴力を振る。
離婚はすぐだった。それでも母は頑張っていたと思う。だが、それももう限界だと私は思っていた。
日に日に痩せていく母がいたわれなかった。
そして、そこにいる父が別の生き物にしか見えなかった。
「死んで!」
「やめなさい!」
大きな声がかかった。父ではない誰かの声だった。
それが私が呼び出した獣を横から吹き飛ばしたのは理解できた。
「何?」
私がそういって、声がしたほうを向いた。そこには中年の男が立っていた。
「師匠」
母が静かに言った。
「君に師匠といわれる筋合いはないと思うが・・・この魔物は君が呼び出したものだね」
母に“師匠”と呼ばれた男は静かに私を見た。その目は昔の父を思い出すほどに優しい目をしていた。
「これはいったいなんだよ」
父が言った。
「彼女の心の闇だよ。心装ともいうかもれないな。それが形作り、君の意思に従って君の父上に襲い掛かっているのだよ」
「・・・・・・」
「君は本当に父上を殺したいのかい?」
「本当は殺したいとは思わない。だけど、目の前で無様に酒に逃げているような男は私の父ではない」
「お・・・お前何を・・・」
「そうね・・・」
「・・・お前までか。お前まで、そんな風に言うのか!」
父は狂ったように怒った。
「上手くいかねえんだからしょうがねえだろ!何したって、何もできねんだよ」
父は狂ったように叫んだ。
「なんでだよ。なんでこんな風になっちまってんだよ。なんでだよ」
父はそこで泣き始めた。
「生きていれば、やり直せるチャンスはある」
“師匠”は静かに言った。
「心入れ替えろ。さもなければ、もう一度、お前を娘が殺しに来る」
「・・・・・そうか」
父は静かにうなづいただけだった。
「もう一度だ。もう一度、やってみる」
「あなた」
「娘をこんなにしちまったのは俺のせいだ。だから、その償いを俺がしないとな」
父はそういうとゆっくりと立ち上がった。
「やりなおそう」
父は言った。
「がんばりましょう」
母が言った。
「私も・・・」
私は二人に近づこうとした。すると、私の前に黒い影が姿を見せた。
「いかせない」
それがそういったように言った。
「私を産んどいてそんな結末は認めない」
「何を・・・」
影は繰り返す。
「私はあなたを殺す。今は無理でも、いつか」
影は悔しそうに“師匠”を見つめた。そのまま、影は走り去るように消えていった。
「あ・・・あれは」
「君の影だ。君はあの影に勝たねば、生きていくことができない。そして、あれは君以外には殺せないのだ」
“師匠”は言った。
「君には特別にある学校に行ってもらう。そこで、修行を積み、彼の者を殺すのだ。その手で・・・」
「わかりました」
私が静かに答えると“師匠”は優しく笑い。その頭を撫でた。
「道は険しいだろう。だが、あきらめるな」
“師匠”は静かに言った。私はそれにうなづいた。
お休みをいただきましたが、リアルが思ったよりも忙しく、なかなか小説を書く時間が取れなくて、もしかしたら、更新が遅れるかもしれません。
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“魔王の剣”チームの話なども書かないといけませんし、大変だな~(他人事