だから僕は騎士をやめた 1
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だから僕は騎士をやめた 1
「証拠?そんなの作ればいいだろ?」
その男はそんな風に嬉しそうに言った。
まあ、正直、この騎士団のいい噂は聞いたことはなかったがここまでひどいとは思わなかった。
副団長自ら犯罪に染めるとは・・・
「で?どうするの?」
目の前には服が乱れ、怯える女性。彼女の身を守るために部屋に入り込んでみたものの、これは間違いだったと反省する。
正直、彼女にこの男が手を出すとは思わなかった。
この男に対するいい手段が今のところはなかった。
「あん?これから、俺の言うことを聞けカス」
何を言っているかはわからないが、その男の手には魔法陣が浮かんでいた。
接触型の魔法陣を使用するつもりらしい。騎士なのに魔法使いのようだ。
「意味がわからない」
「はあ?」
「何故、この場を抑えているにも関わらずあんたのいうことを聞く必要があるんだ?」
「俺はな、ここで一番偉いんだよ」
なんでもいいが、その魔方陣が偉い原因らしい。おそらく、催眠や暗示を強制的に植え付ける類の魔法だろう。
それを怯えている彼女に向かって、頭に直接触れた。
「おい!」
叫んだが、その男は止まることなく、なんらかの魔法が発動したのがわかった。
「はは、俺はな。魔力の弱い奴を操れるんだよ。この女のようにな」
「なるほど・・・彼女にかけて、俺にもかけるか。終わってんなあんた。ついでに俺が彼女を悪戯したという暗示なり、催眠なりかけるのか」
「よくわかってんじゃないか。そんで、俺がこの女を犯すってわけだ」
「ひでえはなしだ」
護身用のナイフが腰に下がっているのを錯覚で確認する。
「そういうことで、俺の罪を被れよ。くそやろう」
その男の腕が俺の頭に伸びる。ナイフを抜いて、自分の左足に・・・
刺した。
視界が光に包まれるのを感じながら、足に痛みが走る。
「はは、かかったな」
脳内が何かに汚染されるような感覚があるが、痛みでそれを抑える。
「はん、そんなんで俺の魔法がとけるとか思うなよ。カス」
「さあ、どうだろうね」
頭痛を感じながらそういう風に返した。
彼女の方に倒れこむように動き、さらに床にぶつかってナイフをより食い込ます。
「ぐ!」
痛みで頭の中をぐちゃぐちゃにしようとするものから、少し呼び戻されると、気合で足を引きづる様に手と足で彼女に近づいた。
「おい!」
彼女の部屋のカーペットに血が広がった。それを見て、脳裏にアイデアが浮かぶ。
彼女に向かってなんとか這いつくばって、彼女のベットを血で汚し、彼女の前まで来た。
おそらく、彼女の部屋中、血がついてそうだ。
「何してんだよ」
馬鹿だと思うが、こんなことで彼女が守れるなら、騎士としてはそれでよかった。
足からナイフを抜き、両手の平でナイフを触り、血が出るようにした。
痛みで持っていかれそうな意識をとりどす。
彼女の頬を触りながら、自分の血を彼女の頬に塗りたくりながら言った。
「俺は犯人じゃない。思い出してくれ、俺が犯人じゃないと・・・」
「てめえ、ふざけんな!」
男の声が遠くから聞こえてきたような気がした。
「聞いているだろ?俺は犯人じゃな・・・」
「きゃーーーーー」
彼女は心のそこから叫び声をあげた。
男が頭をつかみ、さらに頭に魔法をかけた。
頭がぐちゃぐちゃになるのが強くなった。その分、彼女の頬をしっかり挟んだ。彼女の方に体重をかける。
「離れろ変態!」
そんな声がした。
彼女の体から引き離された。ゴンと頭に痛みが走ったが、何も感じなかった。さらにその頭を誰かが踏みつけた。
バタバタという足音が聞こえてきた。
彼女は今日は助かる。そう思うと気がぬけて、意識をよくわからないものが持って行った。
這いつくばった後と、血だらけのナイフ、血のペイントがされた服装の乱れた女性、倒れる血だらけの男、それを踏み蹴る男。
ただならぬ光景にそこに居合わしたものは驚くしかなかった。