気付けばそこは……
抱き付き合うと、お互いを気持ち悪く、気持ち良くさせる。
独特さ、この独特さ。
臭くてぐちょぐちょして、こんなに気持ち悪いのに、こんなに気持ち良いんだ。
汗で濡れた体は、この匂いは、……。
汗は疲れた体に必ず浮かび上がってくる。
必ずそうなのだけれど、いつの間にか消えてしまっている。
風に吹かれて、その姿を消してしまっていたんだ。
気持ち悪いから、嫌いなんだ。嫌いなんだ。
嫌いなんだと言ってはいたけれど、なくなっては困るんだ。
なくなってしまったら、困るに決まっている。
どこまで困らせるつもりなのか?
どこまで惑わせるつもりなのか?
あったらあったで気持ち悪いのに、なくなったらなくなったで困ってしまうのだから、どこまで行っても迷惑なものだ。
何があったって惑わせてきて、気持ち悪くなってしまう。
あると気持ち悪さばかりが残る。
どこまで困らせるつもり?
どこまで惑わせるつもり?
けれど何度尋ねたところで、もう既に消えてしまっている。
その姿を消してしまっているんだ。
探そうにも探すことはできない。
だってもう、そこには残っていないのだから。
ベトベトとして、体を臭く気持ち悪く湿らせるくせに。
傍にあると、どうしてもすぐに拭ってしまいたいと思わせるくせに。
そのくせ、どうしてなくなった途端に、その大切さを見せつけてくるのか。こんなにも大切さを知らせるのか。
思い知らせてきてくれるのか……!
素直じゃない。
素直になれない。
素直にさせてくれない。
素直じゃない。
素直にさせてくれない。
素直になれない。
大切なのはわかっている。必要なのはわかっている。
わかっているけれど、好きになんてなれるはずはない。
大切は大切、必要は必要、好きじゃないのは変わらない。
臭いと気持ち悪さは、匂いと気持ちの良さは、それくらい頑なだから。
気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち良くて気持ち悪くて……。
大嫌い、その思いで、拭い取りたくなってしまう。
握った手、抱いた腕、それもまた汗に湿っていたというのに、気持ち悪い汗だけを残している。
気付けばいつも、火照りと温もりも……