汗の力
汗というのは誰もに必要なものだ。
科学的な、生物学的な話としてもそうであるけれど、社会的な、文学的な面から見てもそれは必要とされるべきものである。
そのはずであるのに、嫌われてしまいがちなのだ。
それだって気にしなかった。
それだって関係なかった。
ただ誇らしげに輝いているばかりだった。
美しく、努力の証として輝いているばかりであった。
自信がそうであるということを知っているかのようだ。
きっと知っている、自信があるのだ。
誰に何を言われようとも、誰にどう思われようとも、自らが信じているのだからと誇れるだけの自信を知識として持っているようだった。
それくらい汗というのは、嫌われようとも美しかった。
人々に何を感ぜられていようとも堂々とし、美しかった。
酸っぱく芳ばしいその匂いは、人を狂わせるようだった。
妙に高揚感を抱かせ、テンションを高くさせるようだった。
「っしゃーーーっ!!」
走ることの楽しさからか、勝利の喜びからか、達成感からか、彼は大きく叫んだ。
それはまた、汗の匂いに狂わされたと言っても間違ってはいなかったことだろう。
そんな力があるのだと彼は信じていたし、彼は知ってもいた。