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感情複合バッドステータス26




 いや――つくづく日和見主義者だなあ、と。

 え? 何がって?

 そりゃあ……、自分のことですよ。

「ふごっ!?」

 右折しそこなった身体に追随して,ありすの顔面が背中に接触する。

「あぎゃっ!?」

 重心を失い思わず身体がつんのめりそうになったけれど、僕の二の腕を掴んでいた手がサルベージを試みたようでどうにか体勢を維持することができた。しかし、その対価として細胞が壊死したのは明らかであり、鼻の穴がミントの香りで充填されそうな、そんな爽やか極まりない早朝の廊下が提供する空気に不純物を混入させたもまた無理からぬこと。

「痛ぁい……、止まるなっ」

「痛い……、パチくな」

 まるで水差し鳥の申し子みたいに、おでこで背中を小突くありすを嗜める。噎せ返るくらいの衝撃ではあるのだが、しかし如何せん神経は二の腕に収束しており、それに追随する僕の弱った声音ではありすの蛮行を阻止するまでには至らなかった。寧ろ衝撃が呼び水となって心身は衰退の一途を辿るばかり。抵抗する気概も湧かないまま、薬指と小指の爪が皮膚に埋没するのを人事のように僕は眺めていた。

 うーん、これは……、いつぞやの似非吸血鬼(アルビノ)に噛まれたのを喚起させるくらいの流血だよなあ。

 このままだと自動販売機にたどり着くまでに致死量へと至りそうだ。

 ありすさん! これ以上はらめ〜っ! ――今日のありすさん、マニキュアにラメ入っちゃってるよっ。はぁと――と、同伴する万力娘に抗議をしたいのはもちろんだが、しかし、先ほどのやりとりから察するにそれも徒労に終わることは間違いないだろう。 そして、僕達を通り過ぎる際に目線を送信する生徒達もまた、僕とありすの間に生じている密度を剥離する効果は期待できそうもない。皆さん、のべつまくなし直ぐ目線を外しているからねぇ。

 しかし、僕とありすが厄介者扱いされる要因は……、まあ観察者からすればバカップルに見えなくもないか……。当事者としては余計なお世話だよと意義申し立てたいところだけど。それとも、神聖な学び舎に流血を贈与しているのが起因しているのかな?

「ここは僕的に後者の方を推奨したい」

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