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感情複合バッドステータス19

 さて、登校中でも僕はおいてけぼりなわけですが……。

 いや、メンタルではなくフィジカルになんですけど。

 アスファルトが昇華する熱気に噎せ返りそうな気分になりながらも、どうにか僕はありすの追随に尽力する。なんというか僕の歩調に合わせて加速度を増している感じで、まったく追いつけないし。可笑しいな。寝不足気味なのは僕ではなく奴のはずで、こうして僕が憔悴と酷似した空転に苛まれる謂れはないんだけど――

 とにかく、今日もありすさん元気一杯なご様子で、ツインテールをアナログコントローラみたいに上下左右、変幻自在にゆんゆん躍動させていらっしゃる。そのアナーキーな挙動に意図の読めない不機嫌の予兆が垣間見えるのは気のせいだろうか。食事中のあれは、僕の流血という意趣返しで落ち着いたと思うんだけどな。さしずめ心当たりがあるとすれば、玄関先で見た奴の勝ち誇ったポーズだろうか。腰に両手を添えながら顎をしゃくりあげて僕を見下ろす様は、さながらお姫様というより女王様然としてそれなりの雰囲気は演出していたけれど、その雰囲気に当てられて(かしず)いてしまうほど僕は忠誠を捧げていないのだよ、きみぃ。

 そんな益体のない思考を巡らせる中、ふとありすが歩調を緩め振り返った。

 探りを入れるような視線を皮膚が察知して、思わずそぞろ歩いてしまう僕。当然、距離は一定の間隔を保持したまま、僕とありすとの間に生じた空間に熱で爛れた空気が滞留する。

「な、何か?」額に滲む汗を拭き吹き、僕はありすに訊ねた。

「別に……」そう吐き捨てて、鼻を鳴らしてそっぽを向くありすさん。その際に、ローファーがアスファルトを強く打ちつけたのは、何かのサインかはたまた不機嫌が具現化された表れなのか。「ああもうっ……、これだからにぶちんは」 

 ふむ。どうやら両方を兼任していらっしゃるようで。

 しかし、僕が何らかの評価を下すほど眼前の幼馴染に変化のほどは見受けられないけど……。だが強いて挙げるならば、奴の膝上までをコーティングしている靴下が漂白されたくらいなものだろうか。あとはその日本の慣用句的な代物にひらひらなレースが装飾されていることを言及しておく。まあさして意味はない微細な変化だと――は――思うけどね。

 さっきのありすの物言いに多少の憤りは覚えたが、結局僕は愚鈍であるということを享受して妥協することに落ち着いた。まあ僕もまだまだってことで、お姫様のお眼鏡に適うよう尽力する次第で御座いますわ。その方向性は皆目見当もつきませんけれど。おほほ。

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