第8話 魔物の村のお祭り騒ぎ
『それはさておき~♪』
あれから、俺は、トイレ清掃、ダンジョン清掃(浄化で時間短縮)、トレーニング(時々、オーすけさんや、アクアと模擬戦)、森の探検(趣味)が日課となった。
アクアと探検すると、少しデートっぽいのでドキドキするのは内緒だ。
今のステータスは、コマンド頼むっ!!
レイオットはかんていした。
【レイオット】
ねんれい: 10才(48才)
しょくぎょう: 総合格闘家みならい 屁魔法使い
せいべつ: おとこ
レベル: 53
HP: 430
MP: 931
じゅもん:【屁魔法】
のうりょく:【総合格闘技パンデモニウム(限定解除)】
【浄化クリーナー】
【ナニカ支配】
ナニカの派生能力:【ヘェアリーサークル(臭いなし)】
【瞬屁】
とくしゅ:【トレットの加護】
鑑定については、コマンドのレベルに依存しているそうだ。
結構、頑張ってもこんな感じにしかならない。
能力としては、総合格闘技パンデモニウムが使えるようになってきた。
これは、素手での格闘はもちろん、その辺の石や枝さえも武器として扱える何でもありの格闘技だ。
前世では試合には出られなかったし、出場しても不戦敗で弱虫と誤解されてはいたが、練習試合では負けはなし、有段者の俺は例えナイフを振り回す不良が相手でも普通に勝てるぐらいの実力はあった。
- 敵に勝ちたいなら、敵の戦力を超越せよ -
例えば、相手がナイフを持ち出すなら、こちらは鉄パイプと金属バットの二刀流で戦うし、法律が許せば銃火器の使用も可とするのがパンデモニウム創始者の教えだ。
パンデモニウムの試合は、参ったと言わせれば勝ちのルール(目潰しと部位の欠損等の後遺症が残らなければOK)で、初心者同士だと、くすぐり勝負になりがちで、段持ち同士の場合は、医者同伴となるほど過激な内容になるため、見ごたえは充分にある。
ヘェアリーサークルや瞬屁は無臭に出来るようになった。
レベルが上がり、500メートル内なら気配察知ができる。
範囲が広がると精度が落ちるが問題ない。
瞬屁は一瞬で距離をつめることが出来るから俺の格闘技と相性がよく使いやすい。(もう吹っ切れた。)
【屁魔法】 尻から魔法が出る(どんとこい!)
・屁ビテーション…一定時間だけど、ふわふわと地上から浮けるため、足音を消したり、数メートルぐらいの高さなら壁を飛び越えてたりできる。(消費MPは使い方で変わる。)
・ファイアーブースト…お尻から出た可燃性ガスを手掴みし、相手に投げつけると途中で引火して相手を火傷させることができる。たまに、自分も火傷する。
・タイダル屁イブ…周囲の水分を操りナニカの波を引き起こす。範囲魔法だ。
・ガス大爆発…ファイアーブーストの上位魔法で、腹の中から水素だけを集めてお尻から一気に放つと、周囲は焼け野原になる。(婆さんから森での使用を禁止された。)
・善玉菌操作…腸内の善玉菌を増殖、免疫力、自己治癒を高めて回復を早くする。
・超善玉菌操作…腸内の善玉菌を増殖、免疫力、自己治癒力を高める、短い時間での治療であれば欠損部位をも治す。
装備は変わらない、少し身長が伸びたが前世に比べるとまだまだ小さい。
ちなみに、アクアは12才、前より背が伸びてスタイルも順調に育っている。
今は、レベルが30前後、以前はヒールを1回使うのがやっとだったのが、婆さんが個別指導の結果、魔力操作で出力の調整が出来るようになり、ハイヒールやウォーターボールの上位ウォーターランスを撃っても余裕があるほど強くなった。
近接戦闘も、オーいちさんと俺が教えているのでその辺のマーダーベアなら楽に勝てるだろう。
ちなみに、アクアのレベルは、婆さんと結界外での魔物狩りをして上げたそうだ。(ダンジョンは俺がまとめて浄化出来るようになってからは、あまりモンスターが増えなくなったためだ。)
さてさて、俺とアクアとオーいちさんの3人は今、自宅から北側の結界へ進んだところにあるリックジールの村へ向かっている。
今日は、リックジール村で数年ぶりに大きなお祭りがあるらしく、オーいちさんについて行くことにした。
心配性の婆さんが、許可をするぐらいだからきっと危険ではないはずだ。
オーいちさんが、村に近づくにつれ殺気が漏れだしてるけど、気のせいだろう。
『『『 あらあら おやおや これからどんどこしょ~♪♪♪ 』』』
気のせいじゃなかった。
リックジールの村で、俺たちが見たものは、村の住人達が血で血を洗うバトル・ロワイアルだった。
オーいちさんも昔の血が騒いでいるのか、目が血走り、筋肉がみなぎっていていつ暴走してもおかしくない様子だ。
「ぶもっ!(いくぞっ! 油断すると死ぬぞっ!)」
「オーいちさん、この状況、どうなってるの?」
「レイぃ、私たちどうなるのぉ。 ひぃっ!」
アクアの足元に、赤いモノが飛んできた。
「ぶもっぶもっ!(レイは、相手を気絶させろ、アクアは倒れた奴がケガしてたらヒールしてくれっ!) ぶごおおおぉぉぉっ!!(いくぞおおぉぉっ!!)」
「ぎゃおうっ」「飛び入りぃゃっはぁ~!!」「う、うまそなガキいるぞぉっ!!」「Gyaaaa!!」「けひひっ!」「ぶごっ、ぶごっ」
「ぎっしゅっ! ぎっしゅっ!」「ぶごっ」「けたけたけたけた」「がるるるぅ」「Zzz」
ブレードマンティスAたちが あらわれた! どうする?
たたかう にげる じゅもん どうぐ
(能力 ナニカ支配は?)
たたかう にげる じゅもん どうぐ
(使わせろおおぉっ!! ええぃっ たたかう)
レイオットのこうげき。
ブレードマンティスAに 70の ダメージ。
ブレードマンティスAを たおした。
ブレードマンティスBは かまを おおきくふりまわした。
(あぶねっ!)
レイオットは ひらりと みをかわした!
ねむりぶくろAは わらっている。
わらいぶくろAは ねむっている。
(ややこしいわっ!)
な なんと コボルトたちが…。
コボルトたちが どんどん がったいしていく。
なんと コボルトピラミッドに なってしまった!
(いや、組体操かよっ!)
レイオットは 『タイダル屁イブ』をとなえた!
コボルトピラミッドは くずれおちた。
(そりゃお腹を押えたら、崩れるわっ!!)
ナイトオークAは ちからを ためている。
ナイトオークBは ちからを ためている。
ナイトオークCは ちからを ためている。
ナイトオークDは ボーッとしている。
(いや、何やってんのDっ!!)
レイオットのれんぞくこうげき。
ナイトオークAを たおした。
ナイトオークBを たおした。
ナイトオークCを たおした。
ナイトオークDは ひらりと みをかわした。
(そのわりにDだけよけたあっ!!)
ナイオオークDは トッシンしてきた!
つうこんの いちげき!
ブレードマンティスBは そらたかく まいあがった!
(ディィィィッッっ!?)
-ガウッ!!
フォレストウルフAは・・・Dは・・・Sは・・!
だーっ、倒しても、倒しても襲いかかってくるしきりがないっ!!
そうだっ!! アクアは無事かっ!!
アクアは コボルト夫人たちに もみくちゃにされている!
「っ!! アクアっ大丈夫かっ!!」
「きゃーっ!! ちょっ!そこは…! んんっ………!!」
コボルト夫人たちにアクアは後ろのほうへ連れて行かれてしまった。
やばいっ、オーすけさんはっ!?
--ぶぅんっ!! うわっと!ってこの斧は……
暴虐のトンテーキは いきなり おそいかかってきた。
たたかう にげる じゅもん どうぐ
「オーすけさんっ!!」
暴虐のトンテーキは トッシンしてきた!
「ぶもおおおおぉぉぉっ!!」
レイオットは 『屁ビテーション』をとなえた!
レイオットは ひらりと みをかわした!
暴虐のトンテーキは ナイトークDを なげつけた!
暴虐のトンテーキは フォレストウルフAを なげつけた!
暴虐のトンテーキは フォレストウルフBを なげつけた!
暴虐のトンテーキは フォレストウルフCを なげつけた!
(うおおぉっ、よけきれないっ! ぐはっ!)
レイオットに 50の ダメージ。
レイオットに 43の ダメージ。
俺は、オーいちさんに近づいて、話しかけた。
「オーいちさんっ! やめてよっ、どうしたのっ!!」
「ぶもっ!(……っ!)」
暴虐のトンテーキは なにかを おもいだそうとしている!
「そうだよ! オーいちさん、俺だよっ! レイオットだよ!」
「ぶ、も……おおおおおおっ!!!!」
暴虐のトンテーキは あしを おおきく あげて レイオットを けとばした!!
(なんぜっ? ぐはああぁぁぁっ!!)
つうこんの いちげき!
レイオットに 323の ダメージ。
(おい、死ぬって! やばいって!!)
レイオットは 『超善玉菌操作』をとなえた!
レイオットの HPが331ポイント かいふくした。
(あぶねぇ、マジで死ぬじゃんか。 さすが元魔王軍の四天王だよ。)
オーいちさんは、俺を蹴飛ばしたあとも、周囲の村人を蹴散らしながら向こうで暴れている。
(そうだ、どうぐ で 『ばあちゃん! ばあちゃん!』)
レイオットは ゆびわを つかった。
しかし なにも おこらなかった。
(ばあさーん!! ダメだつながらないっ! これどうすんだよっ!!)
「「「「「「 みなさ~ん、時間ですよぉ~っ!! 」」」」」」
アクアたちのこえが むらじゅうに村中に ひびきわたる!
ピタリと暴れまわるのをやめる村人達。
『そろそろ終わりかのぅ?』
婆さんとつながった。
『は? ばあちゃん、これ何?』
『祭りじゃよ。 血祭り祭りじゃ。』
おい、物騒な祭り名だな。
オーすけさんや、元魔王軍に所属していた村人達は、魔王フンツマールに無理やり魔族や魔物に変えられたため、魂に刻み込まれた魔の因子が数年に一度の周期で暴走するらしく、今回のように、周期の重なった暴走者が大勢出るときは、手がつけられないため、暴走者が死なないように最善をつくすのだそうだ。(殺さなくてよかった。)
『これじゃ、ばあちゃん、祭りじゃなくて地獄じゃないか。』
周囲を見渡すと気絶した血だらけの村人達が苦しそうにうめいている。
地面には、穴があいていたり、木々が焼け焦げていたりと悲惨な状況だ。
『大丈夫じゃ、そこは、祭り用の会場じゃからだいたいそんなもんじゃよ。』
『オーいちさんが向こうで家を壊していたけど?』
素に戻ったオーいちさんが、恐らく家の持ち主に謝っている姿が見えた。
『ああ、オーいちが暴走するのは、何十年ぶりじゃろか。 忘れておったわ。ふぇっ、ふぇっ。』
まさかの婆さんのうっかりミス。
『俺、オーいちさんに蹴飛ばされて死にかけたんだけど…。』
『ふぇっ、ふぇっ、たまには、本気のオーいちと戦うのも修行じゃて。』
うむぅ、それはそうだけど、釈然としない。
「レイ、大丈夫だった? 『万物の織り成す力、清水の癒し。 ハイヒール』」
婆さんと念話していると、アクアがハイヒールをかけてくれた。 ん?
「ありがとうアクア。 で、その格好はどうしたの?」
いつのまにか、アクアの格好が巫女風になっている。 うむ、アリだ。
「あ、これね、さっき[コボルト夫人互助の会]の皆さんにつかまって、この後の祭りの巫女役をしなさいって着替えさせられたの。 どうかな?」
アクアはくるりと回転して、ちょっと恥じかしげにポーズを決めた。
「アクア、可愛いっ!!」
ここは、シンプルに伝えよう。
「えへへ、ありがとう。」
殺伐とした戦場に咲く一輪の花、俺たちは二人で…………
『レイ、そろそろ切ってええか?』
しまった、婆さんがいたの忘れていた。
「アクア、今ね、ばあちゃんと話してたんだった。」
「うん、レイに先に見てもらおうかと思って来ただけだし、向こうに行くね。」
またねっとアクアは[コボルト夫人互助の会]のテントへ走っていった。
『ばあちゃん、アクアが巫女役するんだって。』
『ほう、そうか。 わしもぎっくり腰でなければ巫女として踊りたかったのぅ。ふぇっふぇっ』
ぎっくり腰さん、グッジョブ!
『レイ、戻ったらお話しようかのぅ。』
『えと、ごめん。 ばあちゃんの腰が早くなおりますように。』
『ふん、まあええじゃろう。 これからは普通に歌って踊れる祭りじゃ。 楽しんでおいで。』
『ありがとう。 またね。』
きょうは うすい ラブコメ味
(もう一人いたわっ! コマンド、ナニカ支配はなんで選択できなかったんだよっ!)
きぶん いれぶん いいきぶん!
(おいぃぃぃっ!! 歯を食いしばれえぇぇぇっ!!)
マジレスすると、デスペシェイムの呪いが変化した能力なので、あまり使わないほうがいいですよ。
(コマンドの急なキャラ変が衝撃すぎて内容が全然入ってこないのだが。 えっ? デス屁シェム?誰?)
マスターに呪いをかけた げふんげふん おっと誰かきたようだ。
(おい! コマンド!!)
へんじがない。
ただの しかばね のようだ。
血祭り祭りから始まって、アクアの巫女姿、コマンドのキャラ変更、ナニカ支配の秘密。
この後、お祭りで、アクアが可愛く歌って踊っていたのだけれど、残念なことに俺は燃え尽きていた。
あとで、アクアにほっぺをつねられた。
次回、超危険生命体あらわるっ!?




