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ナニカに気を取られて死んでしまったけど、凶悪スキルを手に入れたので、新しい人生は楽しく生きたい。  作者: yatacrow


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第5話 うちのトイレはオーバーテクノロジー


「おぅおぅ、お前さんがアクアかい。 大変じゃったのぅ。」


そう言って婆さんはアクアを抱きしめた。

もしかしたら、婆さんも勇者に同じような目にあったのかもしれない。


俺たちはやっと婆さん家で一息ついたところだ。


「…………」


「なんじゃ、坊やはまだ拗ねてんのかい?」


「……いや、ちょっと恥ずかしかっただけ。」


「なにを今さら、わしは坊やがここに来てからずっと見とるんじゃよ。 ほら、こないだもおね…「わー!わー!わーっ!!」…」


アクアの前で、なんてことを言おうしてるのか!こないだって、2才の頃の話じゃないか!


「うふふ、お二人は仲がいいんですね。」

落ち着いてきたのか、アクアもリラックスしだしたみたい。


「俺たち以外にも、家族がいるから後でアクアにも紹介するね。」


「そうじゃのう、アクアとやら、しばらくはここで住んでええぞぃ。」


「ばあちゃん、いいのっ!?」


「まあ、だいたいの事情を聞いた以上、知らん顔もできんじゃろ。 それに、ここは安全じゃからのぅ。」


「あのっ! ありがとうございます。 町に戻るのは怖いし、家族も……いつ会えるかもわからないし、出来ることなら何でもします。 これからお願いします。」

何度もペコペコを頭を下げると、アクアの束ねた髪が上下にぶんぶん跳ねていた。


「そうだ、俺、ばあちゃんや皆のことも知らないことばかりだった。」


「そりゃのう、人語を話すのはわしと坊やだけじゃ、名前を使う必要がなかったからのぅ、そんなに気にするでない。 ああ、わしの名前は、グリンドールじゃ。」


言われたらそうだよな~。


それに、8才の俺にも話せないこともあるだろうし、婆さんと孫ってこんなもんだよな。


「ばあちゃんの名前は、グリンドールだね。 でも、ばあちゃんて呼ぶっ!」


「ふぇっふぇ、それでええぞぃ。」


「すごいっ!! 不思議の森の魔法使いグリンドール様だったんですね!! 実在したんだ!! 私、ファンです!!」

アクアがここに来るときに言ってたから、婆さんがやらかしたことって有名なんだな。

うわぁ、アクアの目がキラキラと輝いてる、本当に好きなんだな。


「アクア、ばあちゃんって有名なの?」


だってグリンドール様ですよっ!と、アクアは興奮して婆さんのことを教えてくれた。



-----


かつて、神々の箱庭として創り出された、世界アークリンクは、人族、森人族、山人族、海人族、獣人族、龍族、妖精族、それに神の使いとして聖獣、知性の低い生物たちが仲良く暮らしていた。(だいぶん遡ってるけど、婆さん何歳よ。)


あるとき、他の種族に比べると力が弱く、魔力も低い人族の中から、他の種族を凌駕する力を持った人間が現れた。


その者は、出生やどこで育てられたのかさえ謎であったが、当時の技術力では想像もつかない装置や魔法を使いこなし、魔道具を作り、人族の能力を向上させ、やがて人族の王となった。(フンツマール王国の誕生)


どの種族よりも平均点以下の代わりに、繁殖力が高い人族は、王の指導の元、様々な武器や防具、魔道具の開発に成功し、高度文明を築くようになった。


フンツマール王は、次第に他種族よりも自分たち人族が優れていると考え、その考えを証明するため、他種族に従属を迫りだした。(婆さんまだ出ない。)


もちろん他種族も素直に従う者たちばかりではないため、人族との戦争は次第に大規模になっていった。


種族間戦争は、数百年、数千年続くかと思われたが、人族の中から融和を唱える者たちが現れ始める。


やがて、フンツマール王率いる人族至上主義と、融和派と他種族連合の戦いが始まり、最終的にフンツマール王は敗れ、北の地へと落ち延びた。


フンツマール王がいなくなり、人族最大派閥の融和派代表フンコクガデルと他種族間で、和睦が成立したが種族間の溝は埋まるほど浅くはなく、互いに領土、領海、領空の相互不可侵条約が結ばれた。(婆さんはよ。)


世界は戦争がなくなり、平和になると思われたが、人族内では強硬派(旧人族至上主義)、融和派、中立派に分かれ小さな争いはなくなることはなかった。


争いに巻き込まれた民たちは、平和を求め、世界各地へと旅立っていった。


その後、各地で村や町が作られ国になってゆく。


そして、突然、約100年前、北の地で他種族を魔人族へ作り替え、生物を魔物に変え、操る術を身につけたフンツマールが魔王として、近隣の国を襲い始めた。(魔王ってチートくさいな。)


フンコクガデルの子孫であるフンデカイダは、勇者として立ち上がり、周辺諸国に魔王軍討伐を呼びかけた。


戦士カツキン、聖女コラルク、魔法使いグリンドールは、勇者パーティーに選ばれ、魔王を倒すために必要な力を求め旅をする。

眠り続ける村人を起こしたり、盗賊や、王に成りすました魔物を倒したり、砂漠や海を渡り、やがて、6つのオーブを集め聖鳥を復活させた勇者パーティーは聖鳥の力を借りて空中浮遊する魔王城へ乗り込み、魔王フンツマールの封印に成功する。(なんかどこかで聞いた気がする…)


魔王を倒した勇者フンデカイダは、聖女コラルクとともにベンツマール王国を建国し、魔王軍から被害を受けた人々を受け入れた。


魔王を失った魔王軍は瓦解し、各地で魔王の残党狩りが行われ、世界は平和へと向かっていった。


グリンドールは、ベンツマール王国で勇者パーティーから外れ、聖鳥や聖獣の力を借りながら、魔王軍の残党から人々を守る旅を続け、世界平和に大きく貢献した。


------



なかなかの大作だった。


ふーん、そんぐらいアクアにとって婆さんは伝説上の人物で憧れの存在だったわけか。

今はただのしわくちゃ婆さんだけどな。


「坊や、失礼なこと思っとらんか?」、思ってません、杖は床に置いてください。


しかし、ばあちゃんの名前が出てくるまでに、だいぶ時間かかったけど、この世界の歴史もついでに分かった。


「ふむ、まぁ、だいたい合っておるのぅ。 違う箇所としては、フンデカイダは王位の簒奪者じゃよ、女に無節操でだらしないクズがほんに出世したもんじゃ、それと魔王軍の残党から人々を守ったんではなく、人々から迫害を受ける魔人や魔物を守っていただけじゃよ。」


「えっ! マジか、ばあちゃん。 それじゃ、もしかしてオーいちさんは…」


「そうじゃ、オーいちは、魔王軍の残党じゃよ。 元々は魔王四天王の一人[暴虐のトンテーキ]と呼ばれておったのよ。 ボッコボコにしてやったわい。」懐かしいのぅ、婆さんは遠い目をした。


「じゃあ、この森にいる魔物ってグリンドール様が守ってるとか…私…」


アクアは冒険者だから、魔物を倒すこともあるよな。


「ああ、確かにわしが保護しとったんじゃが、結界から出た者は理性がない者か結界から追い出された者じゃろう。 心配せんでも、倒しても咎めたりせんよ。」それと、わしのことは婆で良いよ、と青ざめるアクアの頭を撫でた。


「戦士と聖女はその後どうなったの? それに、今までオーいちさんとスザク、カムイしか俺、見てないんだけど。」


「戦士は、頭が悪かったから勇者を最後まで信じて付き従ったはずじゃ、聖女は勇者にベタぼれしとったし、第一王妃にでもなっとるじゃろ。 わしが保護した魔人族や魔物はちと坊やには刺激が強い者もおるでの、この森の別の場所で生活しとるよ。」


「この森にいるんだっ!!」

そういえばスザクの背中に乗せてもらったとき、空から見た森に霧が立ち込めてて下が見えないところがあったわ!!

そういう気候かと思ってたぁ。


「レイってのんびりしてるのねぇ。」

アクアに呆れられたんですけど。


「うーん、そんなことはないと思うんだけどなぁ。」


「坊や、そろそろアクアを皆に紹介しておいで。 トレット様にも挨拶するんだよ。」


「そうだね、アクア行こう。」


アクアを連れて玄関を出ると、ちょうどオーいちさんが野菜を持ってきてくれてた。


「ぶも?」


「あっ、オーいちさん、ただいま。 この子はこれからしばらく家で暮らすことになった、アクアって言うんだ。 よろしくね。」


「ぶも?」


「ち、違うよ。 そんなんじゃないし。」


「ぶも?」


えっ!、振り向くとアクアが固まっていた。


「あ、アクア…? オーいちさんだよ。 すっごい力持ちなんだよ。」


「あっ!ごめんなさい。 お、オーいちさん、私の名前はアクアです。 よろしくお願いいたします。(玄関に普通にオークがいるからびっくりしたわ。)」


「ぶも」


「オーいちさんもよろしくだってさー。」


「レイはオーいちさんの言葉わかるの?」


「なんとなくだけど。」

そう、なんとなくだが、さっきの会話も、「おかえり」「嫁か」「「娘が固まってるぞ」「よろしく」と言ってる気がした。


「すごいな、レイは。」

そうかな?そんなことあるかも。 むふ。

それより、また固まったらいけないから、スザクとカムイのこと説明しておこう。

ゴドゥウンは、壁だからそんなに怖くないし。


「あのね、スザクとカムイって……」


ぴよぴよー♪ がるん♪


あっ、遅かった。


アクアが、でかい鳥と狼に見つめられて白目向いてる。

多分、俺以外の人間の子どもが珍しいから見てるだけなんだけどな。


……、どうしよ、アクアが固まったまま足元に水溜まり作っちゃった。

気まずい、なんとかならないかな。


うーん、なんとか。


ちょっと力が抜けたと思ったら、アクアが光に包まれた。


はっ!? あ、光がなくなった。


「はえっ!? ぽかぽかする。」


アクアも何が起きたか分かってないみたい。


「アクアっ! 大丈夫? あ、その鳥と狼は俺の家族で、スザクとカムイっていうんだ、優しい奴らだから食べないよ。」


「あっ、うん。 ちょっと気が遠くなったような。 スザク…ちゃんって、絵本にあった聖鳥そっくり、カムイ…君は聖獣に似てるけど……」


あー、さっきの話聞いてたら、予想ついてたけど、そうなのね。


「多分、アクアの考えてるとおりだと思うよ。 俺、知らなかったから結構雑な扱いだった。」


ぴよーぴよー♪  がふっ♪


気にすんな、家族だよ。 と言ってる気がする。


「ところで、アクアは、スザクがちゃんで、カムイが君なの?」


「えっ、だってスザクちゃんは女の子、カムイ君は男の子だよね?」


ぴぴぴぴー♪ うおっふ♪


当ったりー♪ まあ、子って歳じゃないけどな。


ぴぴぃっ! くぅん


スザクが、私はいつだって女の子よっ!! とカムイをつついた。


「知らなかった、アクアが来てから増える知識よ。」


「レイがぼーっとしすぎなのよ。」

俺の評価が、のんびりが、ぼんやりにランクダウンした。ぐぬぬ。



「そうかなぁ、アクアが気を張ってるからじゃない。 もっと気楽にしようよ。」


「ふぅ、そうかもね……」

やべ、アクアの表情が曇った。


スザクとカムイがこっちを責めるような目で見てくる。

お前ら仲いいなっ!!


「あ、ごめん。 森の外では気楽に生きられないんだよね。 俺、何も知らないから。」


「いいのっ、レイ、気にしないで。」


「う、うん、わかった! じゃ、次に行こう。」ぴぃっ♪ かふっ♪

二匹もついてくるみたいだ。


後でアクアにも、空の散歩と、もふもふの素晴らしさを教えてあげなければ。


とことこと、歩きながら、森のルール(朝、習ったばかり)をアクアに教たり、ゴドゥウンの壁のこと、オーいちさんの畑や水飲み場、俺がよく遊んでいるところを案内して、…いよいよ豪華な共同トイレの前にたどり着いた。


「アクア、ここが皆で使ってるトイレだよ。 俺が毎日ピカピカに掃除してるんだ。」


「…え、ここってトイレ…なの? 誰か偉い人の住まいじゃなくて?」

偉い人の住まいではない、神様なら近くにいそうだけど。

婆さん家よりも豪華だからな、気持ちはわかる。


「うん、ここのトイレは個室で、座ってできるんだ。 便座は常に適温で、ここのボタンを押すと温水が出て、お尻を洗ってくれるんだよ で、このボタンを押せば…」


大きめの音量で、ナニカの着水音をごまかす音楽が流れてくる。

これって、ナニカの音は消せるけどナニカ(大)してるのはもろバレな気がするんたけど、女の子には必須のボタンなんだろう。


「ほぇー!」

目がキラキラしている。良かった、食いついてくれた。


「それで、これが温風ボタン、右手の壁にあるお尻拭きは自動洗浄効果がついてるから、いくら拭いても汚れないんだ。 それで、このレバーを押すと…」


じゃばばばば、と水が勢いよく流れ出して穴の奥へと入っていった。


-チラッ


「あっ、ごめん、アクアに使い方を教えていただけなんだよ。 エサじゃないんだ。」


「どうしたの?」


「あ、いや、穴の先にスライムがいてね。 エサと勘違いしちゃったみたい。」


「ふーん、とにかくすごい魔道具ね! こんなに魔道具がいっぱい付いてるトイレはじめてだよっ!!」


「俺も最初はびっくりしたよ。 んで、最後に案内する場所がここだよ。」


俺は、トイレの壁にある神棚の前に座った。


「ここから、トイレの神様にお祈りするんだよ。 トレット様は、俺の命の恩人でもあるんだ。」


「命の恩人…? ああ、ここの守り神様って意味よね。」


二人で並んで、トレット様の神棚に手を合わせた。




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