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おっさんの目の前に全裸の少女が立っているんだが!

「おっお前!」

「僕はリリナ……お前じゃない!」

「ちげーよ! 名前聞いてるんじゃねーよ! 服どうした! 服っ!」

「汚れてたから、着てない」

「せめてタオルでも捲いとけよ!」

「そう言われれば、そうだね」

 

 俺の目の前にいた少女、リリナは全裸だった。

 豊満な胸から、股間の陰りまで、全てを俺の目の前にさらけ出していた。

 思わず鼻血ブーになるとこだったぜ。

 お約束のラッキーすけべイベント、ゴチ!

 この少女、おっぱいや股間の陰りまでさらけ出してるのに、恥じらう感じが全く無いし!

 こいつの貞操観念どうなってるんだ?

 それにしてもこの少女、凄くスタイルがいい!

 無駄な贅肉が無く、体が引き締まっていて筋肉質。

 僅かに腹筋が割れているのに、胸はプルンと豊満。

 思わず飛びつきたくなるような肢体。

 三四年間も童貞を貫いてきた俺にはこの刺激は強すぎる。

 あまりに刺激が強すぎて、俺のアソコはショック死をしてしまったのか、全くの無反応。

 俺は性の魔獣化することも無く、澄んだ顔を作り上げリリナに指示を出す。


「バスタオルは風呂場の脱衣所にあるからな。好きなのを使っていいぞ」

「わかった。ありがとう」

「あと、なんでそんなに風呂が早いんだよ! ちゃんと洗ってないだろ?」

「えっ?」

「えって、なんだよ? もっと時間を掛けて洗えよ」

「ダンジョンでは、水は高価なんだろ? もったいなく無いの?」

「水ぐらい、もったいない訳があるか! 汚い方が問題だ! もう一回入り直して、ちゃんとその泥だらけの体を綺麗になるまで、存分に洗って来い!」

「いいのか? 貴重な水を、使いまくっていいの? おっちゃん太っ腹だな!」

「ここは、ダンジョンじゃねーし! 水の無駄遣いは良くないが、体を洗う為に水を使うのは無駄遣いじゃないから! あとシャンプーも使ってないだろ?」

「シャンプー? なにそれ?」

「シャンプーも解らないのか。頭を洗う石鹸だよ」

「頭を洗う石鹸なんて有るんだ! すげーな!」

 シャンプー知らないって、どこの国の人間だよ。

 ありえねー。

 こいつの生まれた国が、ヨーロッパだかアメリカか知らないけど、シャンプーぐらいあるだろうに。

 まあ、ものすごい田舎に住んでいて知らない可能性も無くはないかもしれないから、ちゃんと説明しとくか。

「あと、体も石鹸を使って洗わないとダメだぞ。風呂場にボディーソープのポンプが有っただろ?」

「ポンプ? ボディーソープ?」

「あー、もう……、説明めんどくさい。ついて来いよ」

 

 裸のリリナの手を引っ張って風呂場に向かう俺。

 リリナは、体を拭かないで風呂から出て来たのか、廊下がびしょびしょに濡れていた。

 思わず足を取られ滑りそうになる俺。

 

「髪を洗う洗剤のシャンプーは、これだ。体を洗う洗剤のボディーソープは、こっち」

「すげー! 洗剤が二種類もある!」

「使い方は容器の頭の部分を右手で押して、左手で出た洗剤を受け止める。そして髪の毛に揉み込むように泡立てて洗う」

「わかった!」

「体を洗う洗剤は手じゃなくて濡らしたタオルに受けて、それを揉んで泡を出してから、体を洗うんだぞ」

「うん、わかった! ありがとうおっさん!」


 満面の笑みで感謝してくれるリリナは可愛かった。


 *


 風呂から出てきたリリナは、今度はちゃんとタオルを巻いていた。

 隠すべきとこを隠している分、先ほどより艶めかしい。

 目のやり場になんとなく困る。

 いい歳して顔を真っ赤にして、照れてうつむいてしまった。

 そんな俺の心を無視して、リリナは気持ちいいほどの大声で、俺に感謝の言葉を投げかける。


「おっさんありがとう! 気持ちいい風呂だったよ!」

「飯出来てるから食えよ。テーブルの上に置いてあるからな」

「ありがとうおっさん!」

 

 リリナは、俺の用意したベーコンエッグとパックご飯を食べ始める。

 一口食べる毎に「くー!」だの、「ウマい!」だの、「うめー!」だのを連発して、騒々しい奴だ。

 ここまで喜んでもらえるなら、もう少し手間をかけた物を作ってやればよかったと後悔。

 リリナをダイニングテーブルに置いたまま俺は風呂場に向かう。

 もちろん泥だらけのリリナの服を洗う為だ。

 ジャケット、上着、ジーンズ、もれなく全部泥だらけ。

 おまけにパンツやブラジャーまでホコリまみれだ。

 俺は、それを洗濯ネットに入れ、洗濯機に放り込んで洗うとリリナの元に戻る。

 リリナは既にご飯を食べきった後で、放心気味に椅子にもたれかかっていた。


「ふー! ご飯うまかったよ! おっさんありがとう!」

「ベーコンエッグ如きで礼を言われると、なんかこっちが照れるな。ところで、お前に色々と聞きたいことが有るんだけどいいか?」

「うん、僕に話せる事なら何でも聞いて」

「じゃあ、最初に聞くがダンジョンてなんだよ?」

「えっ?」

「えっ?ってなんだよ」

「おっさん、ダンジョンも知らないのかよ? ダンジョンていうのは、モンスターの居る洞窟だよ」

 得意気な顔で語る少女。

 あまりにも得意気な顔をするもんだから、なんか負けたような気がして悔しい。

「そんな事しっとるわい!」

「なんだ知ってるじゃん。モンスターが召喚されて、住んでいる洞窟さ」

「俺が聞きたいのはそう言う事じゃなくて、なんでそのダンジョンが、俺の家のクローゼットに繋がってる訳?」

「そんなの僕が知るわけないよ。この部屋、おっさんが作ったんでしょ? この部屋おっさんのじゃないの?」

「俺が作った訳じゃないけど、この部屋は俺のだ」

「ならなんで、おっさんが知らないんだよ? おっさん、ダンジョンの小部屋を改造して住んでるんじゃないの?」

「そうじゃなくて……」


 なんか話がかみ合わない。

 大前提が大きくすれ違っているようだ。

 もう少し根本的なとこから話し合わないとダメな様だ。

 俺は、彼女の事を、もう少し詳しく聞いてみることにした。


「すまん、別の事を聞かせてくれ。リリナは、なんでダンジョンに来たんだ?」

「僕は盗賊だからな。盗賊と言っても、僕はトレジャーハンターだよ。野盗や泥棒じゃ無いんだから、人様から物を盗んだり、脅して盗ったりはしてないよ。盗賊がダンジョンに潜るのは、当たり前の事だろ?」

「ふむふむ。リリナは盗賊なのか」

「うん。まあ、本当の事を言うと、なりたての新人盗賊だけどね」

 舌をだして、微笑む表情が結構可愛い。

「新人盗賊のリリナが、ダンジョンに入った。そこまでは解る。それがなんで僕の家に居るんだ?」

「そりゃ、ボス前部屋に宿屋が有ったら、普通入るだろ?」

「なんだよそのボス前部屋とか、宿屋っていうのは?」

「やだなー、ボス前部屋って言えば、ボスの居るボス部屋の前の部屋だろ? 宿屋っていうのは、ご飯食べて寝るとこだろ」

「ちげーよ! 誰が宿屋の定義を聞いている! なんでそれが、俺の部屋と関係あるんだよ?」

「だってここ、ダンジョンのボス部屋前の宿屋だろ?」

「えっ?」

「えっ?」


 その後、二時間程掛けてリリナから聞いた事。

 どうやらリリナは、俺の住んでるこの世界とは、違う異世界の住人らしい。

 家族は母親と妹。

 おばあさんも居るらしいが、一緒には住んでいない。

 父親は野盗に襲われた怪我が原因で引き起こした病気で、つい最近亡くなったそうだ。

 昔は店を持っていて、それなりに裕福な暮らしをしていたそうだが、父親が死んだあと、店の経営が傾いて借金のかたに取られて既に無い。

 今は主に、リリナの盗賊の稼ぎで、家族全員が細々と暮らしているそうだ。

 リリナはダンジョンに潜って宝物を取ることを、仕事としていたらしい。


 異世界にはダンジョンと言うものがある。

 ダンジョンは、悪い魔導士が作り上げたアトラクションやテーマパークの様な物。

 冒険者をボス部屋前に出る宝箱に入っているアイテムで釣って、冒険者を集めているらしい。

 道中で経験を積ませ経験値を貯めまくった所で、ボス部屋にボスを登場させ倒し、冒険者がそのダンジョンで今まで稼いだ経験値の半分を、ゴッソリと頂くシステムらしい。

 それならば、ボス部屋に入らずにボス前部屋で宝箱を取ったら、地上に戻ればいいじゃないかと思うかもしれないが、そこは上手く出来ていて、道中では一切のお宝を手に入れることは出来ず、お宝を手に入れられるのは、ボス前部屋だけだそうだ。

 しかも、ボス前部屋に入ったら一方通行で、道中のダンジョンに戻ることは出来ない。

 宝箱の中には、お宝が入っていているものの、中身は少額の金貨やちょっと珍しい薬品等で、道中の経費を差っ引くと、ちょっとしたアルバイト代程度にしかならない。

 それでも冒険者がボス部屋前を目指すのには訳がある。

 極稀に、一つ手に入れればお屋敷が建つほどの、かなり高価なレアアイテムが宝箱に入っているからだそうだ。

 冒険者はそれを求め、くじ引き感覚でダンジョンのボス前部屋を、何度も訪れているそうなのだ。

 

「でも、高価なアイテムを手に入れられても、ボスに殺されたら割に合わないよな?」

「そんな事ないよ。ボスに殺されても失うのは経験値だけで、アイテムもお金も減らないし、ちゃんと生き返らせて地上に送り届けてもらえるし!」

「生き返らせてくれるのかよ! 悪の魔導士って、めちゃくちゃ親切だな! めっちゃ、あったかい世界だな」

「親切と言うか、ボス部屋まで辿り着ける冒険者は、経験値を稼いで届けてくれるお得意様みたいなものだからねー。経験値を運んでくれるお得意様を一人でも失いたくないんでしょ」

「なるほどねー」

「でね、五〇〇年ぐらい前からちょっとした異変が起きたんだ」

「異変?」

「この世界には結構な数のダンジョンが有るんだけど、五〇〇年前から極稀にダンジョンのボス部屋前に、宿屋が現れるようになったんだ!」

「ほうほう!」

「ちょっとのお金で、ご飯食べさせてくれたり、泊めさせてくれたりしてくれて、ボス戦前に万全の体調に整えてくれてるんだ。まるで、ボスを倒すのを手助けしてくれるように! そう、それがこの部屋なんだ!」

「俺の部屋は宿屋じゃねーって!」

「でも、お風呂に入れさせてくれたし、ご飯も食べさせてくれたでしょ?」

「それは、リリナが大騒ぎするから仕方なく……」

「なにおっさん、照れて心にもない言い訳してるんだよ。こんなかわいい女の子だから、サービスしたくなったんだろ? そうでしょ? ねぇそうでしょ♪」

「うぐっ」

「あははは、冗談だよ、冗談。宿屋の主はおばあさんだったらしいから、おっさんとは別物だよ」

「ほう。おばあさんね」

「でね、帰りにボス攻略に役立つ、武器や高価なアイテムを譲ってくれたりね」

「おれはそんなもの持ってないぞ」

「ちぇっ!」

「舌打ちすんなよ」

「でもね、そんな親切な宿屋なんだけど、二〇年前ぐらいから突如ダンジョンに宿屋が現れなくったんだよ」

「何かあったのか?」

「わからない。宿屋の存在が鬱陶しくなった悪の魔導士に、おばあさんが倒されたのかもね」

「なんと!」

「それからダンジョンに宿屋が現れることが無くなって、今では本当に存在してたのかも疑わしい『伝説の宿屋』として、都市伝説として冒険者の間に語り継がれるようになったのさ」

「伝説って都市伝説かよ!」

「でさー、僕がこのダンジョンにパーティーで挑んだんだけど、道中のダンジョンでキャンプをして寝てるときにモンスターの襲撃にあって仲間とはぐれちゃうし、食べ物や飲み物とか入ったリュックを無くすしで泣きながら腹ペコでボス前部屋まで辿り着いた時に、この部屋『伝説の宿屋』を見つけたって訳さ」

「それで宿屋宿屋って騒いでたのか。うん、なんとなく解った。でもさ、なんで俺の部屋とダンジョンがつながってる訳?」

「そんな事、僕が知ってる訳ないだろ?」

「だよな」


 どうやら俺の部屋は、意味不明の不思議な力で、ダンジョンの宿屋になってしまったようだ。

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