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ダンジョン脱出編9 ボムっちとの別れ

「よし! ご飯も食べたしボス部屋への門も開いた事だし、ボムっち! ボスを倒して家族の元へ帰るか!」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 俺はボス部屋の前に来ていた。

 ボムっちと二人でボスに立ち向かう為だ。

 ボス部屋のドアの封印に触れると二人は光に包まれボス部屋の中へと移動した。

 ボス部屋の中にいた敵はゴーレムだ。

 身長二メートルを超える巨大な体。

 物理防御に優れる岩の魔物だ。

 この敵は何度か戦ったことが有る。

 いわゆる物理攻撃と物理防御に能力の全てを割り振ったパワー馬鹿タイプの敵。

 大ぶりの巨大な拳の溜め攻撃は食らうと一撃で即死するパワーと可能性を秘めるが、突進以外の動きは鈍く突進さえきちんと避ければ大した敵じゃない。


「よし、ボムっちいくぞ!」

「はい! ご主人様、わたくしは安全な場所で応援しています!」

「おいおい……まあ、この敵ならその方がいいかもしれないけど」


 俺は呆れた表情をした後にボムっちにほほ笑む。

 その隙をみてゴーレムは腕を振り上げる!

 突進攻撃の前兆だ。

 突進攻撃で俺との距離を一気に詰めて巨大な拳で俺を叩き潰すつもりらしい。

 俺はいつでもゴーレムの突進の動線から避けられるように体を強張らせる。

 突撃を仕掛けて来ようとした瞬間、ゴーレムは数歩だけ走りかけて立ち止まった。

 そしてボムっちを見つめてキョトンとした表情をした。

 

「おい! ボムっちじゃねーか! なんでこんなとこにおる?」

「あのですね。わたくし人間に助けられまして、しばらく人間界でお世話になってました」

「はぁ? なに言っとるだ? なんで敵の人間に助けられてるんだ?」

「まあ、色々と事情がありまして……」

「随分と長い間、帰って来ないからお前の母ちゃん心配してたぞ」

「そうなんですか……」

「まあええ。そんなとこに突っ立ってねーでこっちさこい! 話は後だ。人間を叩き潰してからゆっくり話そうぜ!」

「この人間はわたくしの恩人でして、そういう訳にもいかないのですよ。ごめん! ゴーちゃん! さくっとご主人様にやられてください! 細かい事は後で話しますから!」

「はあ? お前頭でも打って気が狂ったのか?」

「ご主人様、構わないからこのゴーレムを倒しちゃってください!」

「いいのか? なんか知り合いみたいだけどほんとにいいのか?」

「ええ、構いません!」

 

 俺はゴーレムの顔面に軽い火球をお見舞いしてやる。

 軽いジャブだ。

 ボクシングで言うジャブ。

 挑発みたいなものだ。

 ゴーレムはその挑発に乗って怒り狂い、拳を振り上げて突進の体勢に入った!

 俺は巨大な火球のイメージを生成すると保持。

 ゴーレムが俺を襲ってくるのを軽い足取りで避けると脇腹目がけて大火球を放つ。

 火球を受けたゴーレムの脇腹が溶けゴッソリとえぐれる。

 ゴーレムは身動き出来なくなった。

 床に突っ伏すと動きを止め、やがて霧の様にボス部屋から消えた。

 部屋の残されたのは討伐報酬の宝箱と魔法陣だ。

 俺は討伐報酬のリングを手に入れる。

 ボムっちの報酬はEXPポーションらしい。

 それを一気に飲み干すボムっち。

 飲むと同時に体の大きさがひよこサイズから五〇センチメートル位に膨れる。

 

「やや! 体が少し戻りましたよ!」

「よかったな! 経験値が増えるとサイズが戻るのかもしれないな」

「かもしれませんね! これなら家に帰っても嫁や子供に悲しまれることもなさそうです!」

「そうか! じゃあ、ちゃんと家に帰るんだぞ!」

「はい! 色々とお世話になりました!」

 

 俺はボムっちを見送る。

 土産物を抱えたボムっちは俺に一礼した後、魔法陣を踏むと光に包まれて消えた。

 おれも続いて魔法陣を踏む。

 光に包まれて辿り着いた先は宿屋だった。

 

「お疲れ様です! 旦那様!」

「おとうさん、おかえりなさい!」

 

 メイド服の二人が俺に労いの言葉を掛けてくれた。

 メイドさん二人に挨拶されると、どこぞの領主様や貴族様になった気分。

 悪い気はしないけど、これはちょっとまずいな。

 少し偉い身分にでもなったかと錯覚してしまう。

 反省反省。

 辺りを見るとボムっちの姿が見当たらない。

 上手く帰れたのかな?

 

「ここでボムっちを見掛けたか?」

「いえ。こちらでは見掛けておりません」

「ずっとお父さんを待ってたけど、ここには来なかったよ」

「そうか、ちゃんと魔界に帰れたみたいだな」


 そのボムっちとは意外なとこで再会するのだが、その時のおっさんは知る由も無かった。

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