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ダンジョン脱出編5 ダンジョンへの脱出法

「ダンジョンから出る方法ですか? 魔法陣を踏めば外に出れるかと思います」

「じゃあ、聞かせてもらうがここに来る時どうやって来た?」

「それは魔法陣を踏んで……えっ!」

「そうなんだ。なぜか俺が魔法陣を踏むと異世界に出れないで俺の家に戻ってしまうんだ」

「うーん、おかしいですね」

「じゃあ、質問を変える。ボス前部屋からダンジョン側に出る方法は無いのか?」

「ボス前部屋ですか? ボス部屋から出た事がないので、私には解りかねます」

「全然知らないんじゃないか!」

「申し訳ないです。ダンジョンはダンジョンマスターと言う方が作られた物で構造に関しては一切知りません。私どもは冒険者ギルドで討伐依頼を受けると魔法陣で転移してボス部屋に移動。ボス部屋で戦い、負けたら魔法陣に死に戻りするだけでした」

「既に作られたダンジョンのボス部屋へ通っていただけなんだなっ!」

「はい、おっしゃる通りです」

「ダンジョンマスターに会わないと解らない。ダンジョンマスターと話さないと何も解らないと言う事なんだな」

「そうなります」

 

 結局ボムっちからはそれ以上の情報は何も得られなかった。

 

「むうっ……なんか嫌な予感がするんだがっ」

「どうしたどわ美?」

「いや、ダンジョンの構造がな。わたしの予想が合っていたらとんでもない事になるかもしれない」

「とんでもない事ってなんだよ?」

「まだ想像の範疇だから言うのをやめておくっ」

「何だよ勿体ぶりやがって」

「ところでお主、なんでダンジョンから脱出しようと思わないんだ?」

「ちゃんと脱出しようと色々としてるぞ」

「その割にはダンジョンの中にずっと籠っているような」

「失礼な。俺は俺なりにソロでボス倒したり、色々と努力してるぞ」

「ソロで倒すとどうなるんだ?」

「予想ではそっちの世界に行けたり、ダンジョンマスターを召喚出来るはずだった」

「でも何も起こらなかったんだな」

「そうだ」

「それ以外には何かやったのかっ?」

「ドライバーでダンジョン側の扉をこじ開けようとしたぐらいかな?」

「それだけかっ。いやな、こっちの世界には色々と便利な物が有るみたいじゃないかっ? なんでそれを使わないんだっ?」

「便利な物ってなんだ?」

「さっき外に出かけた時に見かけたぞっ。とっても大きな機械で道路に大穴開けたりっ、ズガガガ!と凄い音出して地面に穴を開ける道具を使ってたぞっ。あれを使えばダンジョンの扉ぐらい簡単にブチ破れるんじゃないのか?っ」

「それって道路工事の事だろ? たぶん大きな機械ってのはパワーショベルって言うやつで土を掘る機械だ。あんな大きくて重い物はダンジョンの中には持ち込めない」

「そうか。でもズガガガ!って言う奴は兄ちゃんが手で持ってたぞ。あれならいけるんじゃないか?」

「そうか、その手が有ったか! ズガガガ!って言うのは名前は解らないけど何の事を言ってるのかはなんとなく解る。たぶん掘削機とかそんな名前のやつだ」

「売ってるんだろっ? 買いに行こうぜっ!」

「おう! 試してみる価値は有るな」

「モコナ、悪いがアイビィのお姉ちゃんと留守番しててくれな」

「はい! お母さん」

「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい旦那様。もうそろそろ日も落ちますし気を付けて!」


 アイビィさんとモコナちゃんに見送られて家を出る。

 どこに行けば解らなかったが、とりあえず道具買い出しの定番のホームセンターの〇ーナンへ。

 さすがに道路工事道具は取り扱ってないとの事で近所にある『職人道具の店』という店を紹介された。

 その店は国道沿いにある店で重機を除く大抵の工具を取り扱っているようだった。

 どこに何が置いてあるのか解らなかったので店員さんを捕まえて聞く。


「道路に穴を開ける道具でっズガガガガガ!って感じの有るかっ? こうやって使うんだけどっ!」


 なんだかぴょんぴょん跳ねながら説明してる。

 それじゃホッピングだろが!

 店員さんに向かって必死に説明するどわ美が可愛い。

 これでもうすぐ三〇歳なんだぜ信じられないだろ。


「ああ、なんとなく解りました」

「解ったのかよ! 店員さんスゲーな!」

「一応これでもプロの店員ですから! こちらです」

 

 連れていかれたのは掘削工具のコーナー。

 目的の工具は『コンクリート・ブレーカー』と言う名前だった。

 思いっきりそのまんまのネーミングだった。


「これだ!これっ! これをくれっ!」

「はい。ただ、これだけじゃ使えないんですよ。これにコンプレッサーが必要でして、コンプレッサーと繋ぐチューブと、オイルと、電源の無い場所ですと発電機とガソリンと……」

「全部くれっ! 全部だっ!」

「かなりお値段の方がいたしますが――――」

「いいから全部くれっ! 金は有る! ほれ!」

「ちょっ! おい! どわ美! 壱千萬の帯封なんてだすなよ!」

「これじゃ足りないのかっ! ほれもう一個だっ!」

「足り過ぎだよ! 足り過ぎ!」

「そうか。ちゃんとお釣りよこせよっ!」

「まいど!」

 

 結局三十万円程掛かってしまった。

 すげー重くてどわ美でも運ぶのに苦労していると店員さんがサービスで軽トラでマンションまで送ってくれた。

 あまりの重さに大騒ぎで工具を運んでいると運悪く部屋の入り口でザマスのおばさんとぱったり会ってしまった。

 バッタリって言うよりも騒ぎを聞きつけて部屋から飛び出してきた感じ。

 

「また、何か始めるザマスか? また大騒ぎは勘弁して欲しいザマス!」

「すいません。お騒がせして申し訳ないです」

「こいつは何なんだ?」

「隣の住民だよ。ちょっと口うるさいけど、怒らせなければ危害は加えてこないから。それに言ってる事は向こうが全て正しいし。この人すげー強いから絶対に怒らせたらダメだぞ」

「わたくしを怪物の様に言わないで欲しいザマス!」

「確かに強いな、こいつ」

「すいません、お騒がせしています」

 

 平謝りして搬入作業を続ける。

 宿の玄関ロビーに道具一式を運び込むと、その夜は説明書を読むので精いっぱいだった。


 *


 翌朝、ダンジョンとクローゼットが接続されると同時に、工具の搬入をする。

 

「モコナ、お前も手伝ってくれっ」

「はい! お母さん!」

 

 モコナちゃん、見た目も年齢も幼女なのにスゲー。

 あり得ないぐらいに力が強い。

 俺がヨタヨタしながら運んでたコンクリートブレーカーを俺から取り上げると片手で軽々持っている。

 

「力仕事はまかせてね!」

「ありがとう」

 

 なんか五歳の娘にも力で負けるおっさんって貧弱。

 モコナちゃんが成長して反抗期になりでもしたら、おっさんの命が危ない予感。

 パンチ一発であの世に逝ける自信がある。

 しつけは暴力で行わずに口で言い聞かせるようにソフトにしていこうと心に決めた。

 

「モコナちゃん、力持ちだな」

「モコナは力が強いからなっ!」

「凄いな、ビックリしたよ」

「いまでこそわたしと同じぐらいの力だけど、まだ子供だろっ? 将来が楽しみだっ!」

 

 工具一式を並べて試運転。

 一晩掛けて説明書を読んだだけあって特にトラブル無しに動かすことが出来た。

 試しに床に使ってみると簡単に床の石板を破壊した。


「うんっ! ちゃんと動いてるなっ! さすが、わたしの旦那だけは有るなっ!」

「どわ美に褒められると照れるぞ」

「じゃあ、照れついでに出口も壊すぞ!」

「任せろ! うりゃー! どりゃー!」

「どうした? 全然持ち上がってないぞっ!」

「はぁはぁ、うりゃーーー!!!」

 

 重くて全く持ち上がらないコンクリードブレーカー。

 結構手ごわい相手だ。

 

「むー、娘の前で少しカッコいいとこを見せさせてやろうと思ったんだけどなーっ、だめか」

「これは俺には無理だ。どわ美頼む!」

「おうよ! 行くぞっ!」


 コンクリートブレイカーをわきに抱えて水平に持つと、後ろ手でトリガーを引き絞るどわ美。

 すさまじい振動と衝撃がボス部屋のドアを揺らす。

 そして、ヒビが入り、ドアは砕け散った。

 そして目の前には……。

 真っ白な光の空間が待っていた。

 

「やったな! やっとダンジョンに出れたな!」

 

 俺がその中に踏み込もうとするとどわ美が俺の腕をガッシリと掴み止める。

 

「行くなっ!」

「なんでだよ! 目の前にダンジョンが有るのに何で行ったら行けないんだ?」

「そこはダンジョンじゃないっ!」

「じゃあ何なんだよっ!」

「解らないっ。でも一つだけ解るっ。わたしの予想してた通りなら、そこに出たら多分死ぬっ!」

 

 どわ美は真顔でそう言った。

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