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ダンジョン脱出編1 懐かしき訪問者

 魔法陣を抜けた先は宿屋の玄関ロビー、つまりクローゼットの前であった。

 予想通りの結果。

 ボスをソロで倒したぐらいでは異世界に行けるとは思ってない。

 目の前には背筋をピンと張ってメイド服を着て待っているアイビィさんが立っていた。

 律儀に俺の事を待っていてくれたらしい。

 体全体は全く太ってないのにお腹の辺りだけポッコリ出ているアイビィさんの体型はおっさんの好だったり。

 めちゃめちゃエロいです。

 ドストライクです!

 この体形、期間限定でしか味わえないのがこれまたそそる。

 最近大きいお胸がさらに大きくなってきた様な気もするし。

 いきなりひん剥いて彼女にハグしてあんな事やこんな事をしてみたい。

 でも、そんな乱暴したら流産するかもしれないから怖くて出来ないけどな。

 アイビィさんはお腹に手を当てる様に組んでおっさんに労いの礼をする。

 

「おつかれさまでした。どうでした?」

「倒したぞ!」

「おめでとうございます! 異世界には行けましたか?」

「いや、魔法陣を踏んだらここに出た。それにダンジョンマスターも現れなかった」

「そうですか。私は見た事が無くてあくまで噂を聞いただけなのですがダンジョンマスターが現れるのは極稀と言う話ですからね」

「やはりボスを倒しまくるしかないのかな?」

「そうなりますね。大変だとは思いますが頑張ってください」

「ああ、ここまでやったんだから最後までやり遂げるさ。それにボムっちという、」

 

 おっさんが肩にとまっている小さな爆弾の事を話そうとすると急にアイビィさんの意識が飛んだようになって倒れそうに!

 慌てて走り寄り抱き締める。

 

「大丈夫か!」

「は、はい。大丈夫です。軽い貧血です」

「妊娠してるんだから、無理するな! ご飯もまだ食べて無いんだろ? リビングのソファーに座ってろ。俺がご飯作るから」

「すいません。わたしがこんなに体が弱いせいで、」

「妊娠は病気じゃないんだから気にするなよ」

「旦那様……お優しい言葉、ありがとうございます。絶対に元気な子供を産みますから!」

「ああ、そうしてくれ」

 

 俺はお腹が大きくなって幸せそうにしているアイビィさんをリビングのソファーに座らせると昼ご飯を作り始める。

 アイビィさんは母子手帳を見て嬉しそうな顔をしていた。

 本来国籍のない者が証明書の類を取るのはかなり難しいと聞いた事が有るが、アイビィさんはどうやったのかは知らないが「貰ってくる!」と言ったその日のうちに戸籍と住民票を取って来て婚姻届けの用紙まで手に入れて来た。

 たぶん魔法を使って力業でなんとかしたんだろうけど聞いてはいけない気がしたのでいまだに聞けてない。

 

 昼は軽く野菜とハムのスープパスタだ。

 アイビィさんはちょっと前までつわりで苦しんでいて食欲が全く無かったが今はかなり食欲も戻って来て調子がいいみたい。

 美味しそうにパスタを頬張るアイビィさん。

 小動物がひまわりの種を食べてるみたいでとても可愛い。

 食後ミルクティーを飲みながらアイビィさんはお腹をさすっていた。

 

「子供の名前はどうしましょうか?」

「名前か。俺が異世界に行けないようだと子供はこっちの学校に通うようになるだろうからな。こっちの世界で使える名前にしておいた方が無難だろうな」

「わたしの子供を学校に通わせて頂けるのですか!」

「当然だろ」

「本当に第一夫人の子供でもないのによろしいのですか?」

「あのなー、第一とか第二とか俺にはそう言うのは無いから! アイビィさんは俺の嫁。リリナも俺の嫁。上も下も無い。どっちも嫁。ただそれだけだ」

「旦那様、いつもお優しい言葉をありがとうございます。わたしはそんな旦那様に惚れました」

「惚れたって、それ何回目だよ?」

「一六〇回ぐらいでしょうか?」

「多過ぎだよ。あははは」

「うふふふ」

「おっ! なに笑ってるんだっ! 楽しそうだなっ!」

 

 聞き覚えのある懐かしい声が後ろからした。

 

「ひさしぶりっ!」

「おお! 久しぶり! 来てくれたのか!」

 

 そこにはどわ美の姿が有った。

 あの日以来見かけなかったどわ美だ。

 もう二度と来てくれないんじゃないかと思った。

 おっさんは思わずハグする。

 相変わらず胸がつるペタで筋肉質でゴツゴツしている。

 とても懐かしい感触。

 

「このひとは?」

「俺の古い友人でドワーフのどわ美っていうんだ」

「よろしくなっ!」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 ぺこりとお互い挨拶をするどわ美とアイビィさん。

 おっさんはそんなどわ美のしぐさを見て懐かしさでついつい顔がほころぶ。

 

「どうしたんだよ? ずいぶんと久しぶりじゃないか!」

「今日はなっ、仕入れに来たのと会わせたい奴が居たので連れて来たっ! おいっ、恥ずかしがらないでこっちに来て挨拶しろっ!」

「はい!」

 

 奥からやって来たのはもの凄い可愛らしい幼女。

 黒髪でパッチリとした大きな瞳を持つ四~五歳ぐらいの幼女でどう見ても日本人。

 その幼女が俺に挨拶をした。

 

「わたしの娘だっ! よろしくなっ!」

「初めまして、モコナです! お父さん!」

 

 その子は俺の事をお父さんと呼んだ。

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