表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/61

対ダンジョンボス攻略戦6 おっさんついに勝つ!

 リリナと別れてから半年。

 おっさんは強くなった。

 延々ボスサポートで戦い続けたおかげ。

 既にレベルは三五。

 昨日三五になったばかりだ。

 火球の魔法の威力はフィーナさんの呪文みたいな柱を壊せるレベルの威力では無いけど、かなり威力が上がったと思う。

 たぶん黒くない方のマンドラゴラなら一撃で倒せるレベル。

 まあ倒せると言ってもマンドラゴラの場合は七匹いる内の一匹を倒せるだけの話。

 だからまだ勝てるレベルじゃないのは解ってる。

 まだまだ鍛錬は必要だ。

 炎以外の魔法も結構覚えた。

 睡眠、衰弱、遅延。

 大抵の弱体呪文も使えるようになった。

 だから前みたいに一撃では倒されない。

 ソロでマンドラ戦に行っても勝てるとは思わないが開幕に範囲睡眠を決められればいい線まで行けるんじゃないかと思う。

 ボスサポートでありとあらゆる敵と戦い攻略法も覚えた。

 装備も宝箱から多数手に入れたお陰でかなり充実してきて、黒マンドラの突進ぐらいは正面から盾で受け止めれるぐらいの強さになったはずだ。

 頑張ってそしてかなり運が良ければソロでボスが倒せるかもしれないってレベル。

 ボスを倒しリリナの元に会いに行く!

 リリナを疑ってしまったことを謝りたい。

 無断でアイビィさんと結婚したことも謝りたい。

 そして許されるなら、こちらの世界へリリナを嫁として連れてきたい。

 それがおっさんのケジメ。

 アイビィさんはこれらの事はすべて了解済み。

 むしろ背中を推してくれている。

 

「旦那様の喜ぶ顔が見たいですから!」

 

 それが彼女が俺を推してくれている理由だった。

 何ていい子なんだろう。

 俺は装備一式を着こむと新しい命が宿りお腹が大きくなり始めたアイビィさんに告げた。

 

「ボスを倒してくる!」

 

 ただそれだけを言ってボス部屋へと向かった。

 

 *

 

 ボス部屋に入ると見た事のないボスが待っていた。

 爆弾だ。

 

「なんじゃこりゃ!」

 

 大きさ一メートルの爆弾としては大きすぎるサイズの敵。

 まるで昭和のギャグマンガに出てきそうな爆弾。

 黒くてまん丸の爆弾から生える導火線。

 そして両脇から生える羽根。

 それが羽ばたいて空中に浮かんでいる。

 丁寧な事に爆弾には白いペンキか何かでどくろマークまで書いてある。

 いや書いてあるのではない。

 たぶんこれが顔だ。

 おっさんがボス部屋に入ると同時に敵の侵入を認識したのか導火線に火が点く。

 導火線がバチバチと音を立てながら火花を散らし始めた。

 初対面の敵だったが導火線が燃え尽きる前に倒さないと爆発するのがおっさんにも理解できる。

 不明な敵には鑑定だ!

 俺は素早い詠唱で鑑定を行う。

 

『鑑定!』

 

 ──名前:ボムっち

 ──種族:エリミネート・ボム族

 ──レベル:40

 ──職業:(鑑定失敗)

 ──属性:火

 ──スキル:(鑑定失敗)

 ──特技:爆発

 

 相手のレベルが俺より高いせいか全てを鑑定出来なかった。

 再鑑定すれば不明部分の鑑定が出来るかもしれないが時間がない。

 なにしろ導火線が燃え尽きる前に倒さないとヤバいからな。

 俺が鑑定失敗したのに気が付いたのか爆弾のどくろマークがニヤッと笑う。

 なんかムカつく。

 この爆弾、動かない上に向こうから手を出してこないが、こちらの手の届かないところをふわふわと飛んでやがる。

 完全に逃げに徹して爆発待ち状態。

 剣が使えれば火の点いた導火線を切り落とせばそれだけで勝てそうな気がするが宙に浮いてるのでそう上手くもいかない。

 まあでも大丈夫。

 数か月前のおっさんはピンポン玉サイズの火球しか使えなかったが今は違う。

 威力はそれ程でも無いが色々な魔法が使えるようになったからな!

 俺は素早い詠唱で水の魔法を詠唱し構築する。

 

『水球』

 

 そう心の中で唱えると、爆弾の頭上に一メートルサイズの水玉が出現。

 そして重力に引っ張られバケツをひっくり返したような水飛沫となり爆弾の頭上に降り掛かる。

 ブジュッと言う音を立てて導火線の火は消え爆弾が地上に落ちる。

 これで爆発の心配は無くなった。

 一安心しホッと胸を撫で下ろす俺。

 

「よし!いい感じだ」

 

 後は導火線に再び火が点かない様に炎系の呪文さえ使わなければ勝てる!

 俺は脇に差していた片手剣で斬りかかる!

 渾身の一撃だ!

 全体重を乗せて放つ渾身の一撃!

 だが剣は敵を突き通すことは無く金属音を放って弾かれる!

 にやりと笑う爆弾。

 剣は効かないみたいだ!

 それと同時に再び導火線に火が点き爆弾は再び宙に浮かんだ。


「再点火だと!」


 どうやら消火も無意味な様だ。

 

「くそー! 剣は効かないのか! ならばこれを喰らえ!」

 

 導火線が消えないなら火の呪文を遠慮する必要はない。

 火の呪文で焼き尽くしてやる!

 爆発する前に爆弾を破壊してやる!

 俺は火球の呪文を詠唱する。

 俺の最大魔法、大火球の呪文だ!

 大火球が爆弾を襲う!

 着弾!

 大爆発!

 と思いきや大火球は不発弾の様に消える。

 まるで霧が消える様に、いや爆弾に吸い込まれる様に消えた。

 

「なっ! どうなってる?」

 

 こんな事は初めてだ。

 どうなってる!

 まさか、あの鑑定できなかった部分に秘密でもあるのか!

 俺は鑑定を連発する。

 五度目の鑑定ですべてを鑑定で来た。

 

 ──名前:ボムっち

 ──種族:エリミネート・ボム族

 ──レベル:40

 ──職業:一発屋

 ──属性:火

 ──スキル:物理無効 魔法吸収 死後蘇生

 ──特技:爆発

 

 更に詳しく鑑定する。

 

 ──爆発 全ての生命力と魔力を炎系の範囲炸裂呪文に変換し放つ

 ──物理無効 全ての物理攻撃を無効とする

 ──魔法吸収 魔法を吸収して魔力へと変換する

 ──死後蘇生 HP0となった後に一度だけ生き返る

 

 要するに剣は効かず、魔法は吸収され、爆発し、おまけに生き返ると言ったとんでもない敵って事だ。

 どうりで俺の渾身の魔法攻撃が消えたはずだ。

 吸収されてたんだな。

 魔法を放つ度に吸収されて強くなる。

 つまり、こちらからの攻撃は何も出来ないって事だ。

 爆発の威力を抑えるために『攻撃力低下』の魔法を使おうと思ったが、魔法なので吸収されて使う事が出来ない。

 どうすればいいんだ?

 このまま何もせずに爆発に巻き込まれてこんがりローストおっさんになるしかないのか?

 て、無駄なこと考えてたら導火線がめちゃくちゃ短くなってた!

 やばい!

 どうする俺!

 おっさんがんばれ!

 

「ならば……逃げに徹してやる!」


 俺は爆弾から距離が取れる様にボス部屋の隅に行き自分に強化魔法を掛けまくる。

 炎耐性。

 物理耐性。

 魔法耐性。

 そして魔法を防ぐ結界呪文マジックシェル。

 そして物理攻撃を防ぐ土の壁『ストーンウォール』で小さな箱を作りその中に逃げ込む。

 爆弾が呻いた。

 

「ぐごぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 悪魔の断末魔だ。

 そして大爆発!

 圧倒的な熱量!

 圧倒的な加速度!

 爆炎が部屋に広がり部屋を焼き尽くした。

 凄まじい爆音!

 凄まじい衝撃!

 そして熱!

 箱はその衝撃に耐えられず木の葉の様に吹き飛んだ!

 

 *

 

 そして訪れる静寂。

 吹き飛ばされた衝撃で体中に痣を作り所々血を流しながら箱から出てくるおっさん。

 指を動かすだけでも激痛が体にはしる。

 回復魔法を何度も唱え回復し何とか歩けるようになった。

 目の前にはひよこサイズに縮んだ爆弾がおっさんを見ると逃げ回っていた。

 

「ぎゃー! 生きてた!」

「生きてて悪かったな! これからは俺のターンだ!」

「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! もうしませんから殺さないで! 何でもしますから許して!」

「そういう訳にもいかなくてな。ダンジョンマスターからこの迷宮の秘密を聞くためにお前を倒さないといけないんだわ」

「おねがいです! 何でも言うこと聞きますし迷宮の事もダンジョンマスターの事も何でも教えます! 魔法陣も出しますし、討伐報酬もたくさん出しますから!」

 

 ブルブル震えながら宝箱を五個、魔法陣を三個出す爆弾。

 魔法陣を三個も出されても困るんですが。

 まあ、なんだ。

 ここまで怯えられるとかわいそうになってしまって殺すことは出来なかった。

 

「解った。じゃあ、許してやるからついて来い」

「ありがとうございます! ご主人様!」

 

 俺は爆弾を捕まえると肩の上に載せて魔法陣の中に飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ