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対ダンジョンボス攻略戦5 嬉しい知らせ

 ボスサポートサービスを始めた事で、全てが順調に回り始めた。

 宿代が倍となり、パーティーの参加代にお金が掛からなくなった事で、面白いようにお金が貯まり始める。

 そして金を掛けずに経験値が貯まる。

 レアアイテムも徐々に増えて、それを必要としてそうな客に格安で売る。

 客も大満足である。

 一時は底を尽いた金貨であったが、気がつくと元の金額の十倍近い額となり、経験値も順調に貯まり続けレベル25まで上がった。

 何もかもが順調に進み始めた。

 この調子なら半年もせずにボスを倒せるかもしれない。

 そんな中、見知った客がやって来た。

 ファルコンさんだ。

 だたメンバーがこの前と違う。

 男性陣は相変わらず変わらないものの、女性陣は総入れ替えだ。

 シリィさんが消え、いつぞやのビキニアーマー軍団のムチムチ美女が二人加わっていた。

 背の高い褐色エルフのムチムチバディーと人間の色白少女だ。

 まさかファルコンさんは、あんなに仲良かったシリィさんと別れたんだろうか?

 おっさんすごく気になります。

 

「よう! 久しぶりだな! やっとこの宿に戻って来れたぞ。ここに来る為に何度ダンジョンにもぐってどんだけ苦労した事か!」

「お久しぶりです! いつもべったりだったシリィさんはどうされました?」

「シリィは向こうに置いて来た」

「もしかして別れたり……してませんよね?」

「おいおい、縁起でもない事言うのはやめてくれよ」

「あ、すいません」

「別れる訳ないだろ! シリィは俺の嫁だぞ」

「結婚されたんですか!?」

「ああ結婚したぞ」

「それはおめでとうございます」

「ども、ありがとう」

「前々から仲が良かったからいつか結婚するんじゃないかと思ってたんですが、やはり結婚されましたか。ところでこちらの新しいお二方は?」

「シリィとアイビィの代わりさ。ダークエルフのケリーが魔法使い、こっちの人間のフィールが僧侶さ」

「ケリーです。ファルコンの妻です。よろしくお願いします」

「フィールです。オジーの妻をしています。よろしくお願いします」

「ちょっと待って! シリィさんがお嫁さんなんですよね?」

「そうだぜ」

「でも、この人も奥さんなんですか?」

「そうだ」

「もしかしてお嫁さんが二人?」

「いや、三人だ。シリィと一緒にもう一人留守番してる」

「ちょっ! それ思いっきり重婚じゃないですか!」

「ははーん、おっさん羨ましいのか? そうだろ? そうなんだろ?」

「羨ましいかそうじゃないかで聞かれれば羨ましいですけど、結婚は男一人に女一人って昔から決まってるでしょ?」

「そんなの誰が決めたんだよ?」

「それは法律で決まってます!」

「こっちの世界にはそんな法律なんてねーんだよ。だから何人と結婚してもいいんだぜ」

「そうなんですか? なんかおっさんにはちょっとなじめない考え方ですね」

「そうか? 嫁が何人もいるって言うのは楽しいもんだぞ。ところでアイビィ、お前の指にはまってるのはひょっとして!?」

「はい! 旦那様から頂きました!」

「おう! それは良かった! ちゃんと指輪を嵌めてもらったんだよな?」

「はい!」

「いやー、それはめでたいな! 我が妹ながら行き遅れになるんじゃないかとすげー心配したんだけど、これで安心だな」

「え? アイビィさんてファルコンさんの妹だったの?」

「はい。わたしはファルコンの妹です」

「知らなかった」

「ごめんなさい。隠してたわけじゃなくて、言う機会が無くて……」

「いや、隠すとか隠さないとかじゃなくて、ただ単に驚いたと言うかなんというか」

「まあなんだ。おっさん! 妹の事を今後ともよろしく頼むぞ!」

「ええ、こちらこそ。いつもお世話になっています」

「そう言う事なら、この手紙渡して大丈夫かな? もう一人の嫁とか言うエルフからの手紙だ。これを渡すためにどんだけダンジョンに潜った事か」

「それってもしかして?」

 

 それは間違いなくリリナからの手紙だった。

 慌てて封を開封する俺。

 手紙には丁寧な字でこう書いてあった。

 

 ────────────────────

 愛するおっさんへ


 おっさん! 手紙ありがとう!

 僕の事を捨てたんじゃないんだよな?

 怒ってもいないんだよね?

 僕ほっとしたよ!

 

 子供の名前ありがとう!

 いい名前だな!

 そうそう。

 おっさんと僕の子供が産まれたよ!

 元気な女の子が産まれたよ!

 おっさんの顔に似ててすごく可愛いです。

 まだ赤ちゃんの首が座って無いからそっちには連れて行けないけど、もう少ししたら絶対にそっちに向かうからもう少しだけ待って!

 もちろん赤ちゃんも連れて行くからね!

 おっさんに会えるのを楽しみにしてるよ!

 

 リリナより

 ────────────────────

 

「リリナさんに赤ちゃん産まれたのか。元気な赤ちゃんが産まれて良かったよ」

「おっさんのエルフの嫁に赤ちゃんが産まれたのか。ところでアイビィとの子供はまだなのか?」

「え?」

「結婚したんだろ?」

「え? 結婚?ですか?」

「いや、だって、その指輪おっさんがあげたんだろ?」

「はい。確かに指輪はあげましたが?」

「じゃあ、あれから子造りしまくってるんだろ?」

「いや、ちょっと待って下さい! 子作りなんてした事ありませんよ。ファルコンさんが何言ってるんだかか、良く解らないんですけど?」

「いや、だから、アイビィと結婚したんだから子造りしてるのかなと」

「け、結婚なんてしてませんよ!」

「じゃあ、アイビィの指にハマってるその指輪は何なんだよ!? 結婚指輪だろ? おっさんがあげたんだろ?」

「確かに指輪はあげましたが、アイビィさんが欲しがったからあげただけでして、決して結婚指輪とか付き合いたいとかそういう下心があったんじゃなくて……」

「指輪が欲しいと言われてあげたんだろ?」

「確かにそうですが」

「じゃあ結婚指輪じゃないか!」

「なに言ってるのかサッパリ解らないんですが!」

「結婚指輪をあげたのに結婚しないって何かの悪い冗談かよ!」

「俺にはリリナと言う嫁が既にいまして、子供もいるのでアイビィさんとは結婚出来ません」

「なに言ってんだよ! 嫁が居るから結婚できないって、頭おかしいんじゃないか? 別にアイビィを第一夫人にしろとか言ってるんじゃない。第二でも第三でもいいから結婚してくれと言ってるんだ! おれの大切な妹なんだ! 頼むから結婚して幸せにしてやってくれ!」

「いや、すでに別の人と結婚してますので……ごめんなさい」

「何訳わからないこと言ってるんだよ! そっちの世界の法律では重婚を禁止してるのかもしれないけど、ここはダンジョンの中だろ? こっちの世界じゃ重婚は全く問題無いんだよ。むしろ国家の繁栄の為に推奨されてるんだ! アイビィもお前の愛を独占しようなんて考えてない! だから結婚してやってくれ!」

「そんな、無茶苦茶な!」

「結婚指輪を俺の妹にあげてぬか喜びさせておいて、結婚しないとか言ってる方が滅茶苦茶だろ! あー、もうお前ら今すぐ子造りしろ! 赤んぼ産め!」


 キレ気味になったファルコンさんに首根っこを掴まれて、アイビィさんと共に寝室に閉じ込められてしまった。

 アイビィさんと二人、寝室の中で気まずそうに話をし始める。

 

「ほんとごめんなさい! お兄さん、私の事となると周りが全然見えなくなっちゃって! 無茶苦茶な事ばっかり言ってて本当にごめんなさい!」

「なんか、僕が指輪をあげた事で、とんでもない事になってしまってすいません」

「いえ、私の方こそ旦那様にそんな気が全く無いのを知っていながら、旦那様と結婚したくて指輪をおねだりしてしまって、本当にすいませんでした。こんなブスな女、お嫁さんにするのは嫌ですよね」

「ブスって……アイビィさんは物凄く美人じゃないですか。それに気立ても物凄くいいし理想のお嫁さんて感じですよ」

「でも、最初、旦那様のベッドに潜り込んで添い寝して誘った時も、旦那様は全然そんな素振りが無くてわたしの事なんて全く興味が無いみたいで……こんな女をお嫁さんにするのは嫌ですよね」

「そんな事ないから! 今すぐ裸に剥いて子造りしたいぐらいの魅力的な体だし、一緒にいると幸せいっぱいな気分になれるし、嫁にしてずっと一緒に居たい位好きだから!」

「でも……旦那様はわたしの事なんて――――」

「好きなんだよ!」


 アイビィさんの口を塞ぐように俺はキスをした。

 

 *

 

 ベッドの上では呼吸が乱れ上気した顔のアイビィさんが裸のまま俺の横に寝ていた。

 

「旦那さま、ありがとうございます」

 

 そして嬉しさのあまりか泣いてしまうアイビィさん。

 

「アイビィさんの事が好きだったし、アイビィさんも俺の事が好きなのは薄々気が付いてた。今までほったらかしにしててごめん。今日からアイビィさんも俺の嫁だ」

「旦那さま。うれしい」

「ずっとこうして居たいけど、お客さんも来ているし、そろそろご飯の時間だから作ってくるよ。アイビィさんは先にシャワー浴びてきなよ」

「はい!」


 寝室のドアを開けるとそこに居た。

 たぶん居るんじゃないかと予想していた通りに。

 

「お、おう! やっと妹とも子造りしてくれたようだな!」

 

 ファルコンさんだ。

 どうやらドアに耳を寄せて中の様子をずっと覗っていたようだ。

 

「妹を嫁として大切に扱ってくれよ!」

「はい。これからはアイビィさんを妻として、大切にしていきたいと思います!」

「まあ、なんだ。俺もアイビィも、お前には好きな女が他に居るのは知っている。でも出来るなら、その一番目の女と同じぐらい妹も愛してやって欲しい。たのむ!」

「もちろんですよ! 任せてください!」


 その日はアイビィさんが二人目のお嫁さんとなった日であった。

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