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対ダンジョンボス攻略戦2 今更知った事実

 気が付くと玄関ロビーの床の上でアイビィさんに膝枕をされていた。

 また死に戻りしたんだな。

 首が折れた時の嫌な音がまだ耳に残ってる。

 それはそうと、アイビィさんのムチムチの太ももの感触がたまらない。

 天使のご褒美。

 おっさん、このままずっとこのムチムチな枕の上で寝ていたい。

 ここで寝ていればチンアナゴに負けた心のダメージも癒される。

 でもアレだよな。

 頭のすぐ下にムチムチが存在してるのに触れないってのはジラシプレイ過ぎる。

 アニメの謎の光とか湯気とか比べもんにならないレベルのジラシ。

 触れないならあれだ。

 ちょっと体を裏返してうつ伏せし、顔面でムチムチの感触を楽しみつつ、彼女の太ももと太ももの間の陰りから漂う芳醇な匂いでも嗅ごう!

 それで敗戦の心の傷は癒されるはず。

 うん、そうしよう!

 極々自然な感じでうつ伏せに移行しようと体を動かす。

 と思ったら彼女と目が合った。


「や、やあ」


 おっさんのやろうとしたゲスな行為が見透かれてるようで目のやり場に困りました。

 

「お目覚めですか。ボス戦はどうでしたか?」

「見ての通りさ。ダメだった。ちんあなごつえーな」

「ちんあなご? そんな敵は聞いた事ないんですが、どんな敵でしたか?」

「どんな敵って、地面からミミズみたいな魚の敵が沢山生えてて、一〇匹いや十五匹ぐらいな。それが水の魔法使ってきて一瞬で死んだ」

「それは地ウツボですね」

「あれはウツボだったのか。なんかメチャクチャ強くて全く勝てる気しなかったんだけど、どうやって戦えばいいんだろう? 剣で斬り付けたけど傷一つ付かない感じでダメージが全く入らなかったんだ」

「地ウツボはですね、表面がぬるぬるした粘液で覆われているので斬撃系の物理攻撃は効きにくいのです」

「敵にそんな耐性みたいなのが有ったのか!」

「地ウツボは魔法使い多めのパーティーで戦闘開幕に雷の範囲攻撃呪文を使って圧倒的火力で一気に焼き尽くすか、普通に物理攻撃パーティーで倒す時は魔法使いが範囲睡眠の呪文を使って全部眠らせてから一匹ずつ順番に倒すか、魔法の届かない範囲から攻撃できる弓を使ってウツボの魔法詠唱のタイミングを見ながら倒すのが普通の倒し方ですね。どちらにしても火力が無いとキツイかもしれません」

「ソロで倒すなら絶対に火力が必要、火力が無ければ何も始まらないって事か」

「そうなります」

「となると攻撃魔法の特訓をしないとダメだな。アイビィさん、悪いんだけど後で必ず埋め合わせをするから当分の間ダンジョンと繋がっている時間の宿屋の仕事は全て任せていいかな?」

「もちろん構いません!」


 アイビィさんの快諾が得られた事で、俺は攻撃魔法の特訓をする事にした。

 火力が無いと始まらないからな!

 俺は息絶え絶えになるまでダンジョンの柱に魔法を撃ち込み続ける!

 だがそう簡単には火力は上がらなかった。

 二週間ずっと魔法の特訓をしていたのに相変わらず火球はピンポン玉サイズで火力も全く変わっていない。

 二週間も特訓したのに!

 俺、魔法の才能が全く無いんじゃないのか?

 魔法の才能が無くても万能の指輪を付けて二週間も炎の呪文の練習をしたらスキルが上がるはず。

 スキルが上がれば〇めはめ波ぐらいの物は撃てて当然だろ?

 それがなんで未だに火球がピンポン玉サイズなんだ?

 練習をずっと続けてるのに強くなってる気が全くしない。

 俺にはそこまで才能が無いと言うのか?

 こんな事じゃいつまでも強くなれなくて、もう二度とリリナに会うことは出来ないんじゃないか!?

 俺は自分の無能さに憤りさえ感じていた。

 そんな時、一人の魔導師が客として現れた。

 マジカと言う長い白髭を蓄えた爺さんの魔導師だ。

 装備を見た感じかなりの実力者の様だ。

 鑑定をするとかなりの装備がハイクオリティー品やレア装備で揃えてあった。

 さすがにソロでこのダンジョンの奥の宿屋まで来るだけは有る。

 この魔導士に魔法の特訓をしてもらうしかない!

 この魔導師ならいま俺が抱えている成長の壁を乗り越えられるはずだ。

 そこで俺は夕食が終わると特訓の交渉をし始めた。

 取引の材料は雷鳴神の指輪と大聖女の指輪だ。

 ともにSSRのハイクオリティー品。

 一つで金貨一万枚はくだらない品のはずだ。

 老齢の魔導師はその指輪を見ると目を丸くしていた。

 

「これ、本当に貰っていいのかのう?」

「全部差し上げますよ。万能の指輪を持つこのおっさんには不要の品ですし」

「いいのか? 兄ちゃん! これ一個で金貨一万枚はするんじゃが? 本当にいいんじゃな?」

「どうぞ、受け取ってください。ただし条件が有ります」

「条件じゃと?」

「はい」


 俺は二コリと笑ってやった。

 人生でいまだかつてない程、爽やかな笑顔である。

 この笑顔を作るのに三時間も練習したのだ。

 この笑顔なら断る奴はいない!

 

「付き合って下さい、魔法の――――」


 すると俺が言葉を発してる最中にマジカさんはブルブルと震えだす。


「に、兄ちゃん! わ、ワシはそういう趣味は無いし! そう言うのはした事ないからっ! でも、その指輪を貰うのにどうしてもワシの体が欲しいと言うなら……ワシとする時はいきなり激しくしないで最初は優しくして欲しいんじゃ。お願いじゃ」

「ちげーから! そんな事したくねーから!」


 やっぱ変な風に思われてた。

 誤解しまくられ。

 俺の笑顔はダメなのか?

 ちゃんと鏡の前で爽やかな笑顔を見せる練習したんだけどなー。

 ここはキッパリと否定しないと!

 異世界で変な噂がたったらどうする?

 それ系の人がやって来る宿屋になったら困る!

 旅の宿『モーホー』とか絶対要らねーし!

 そんなの絶対にいや!!!


「そんな事しねーから! 金貰ってもしたくねーから! じいさんのケツの穴に嵌めるって、それってどんな罰ゲームなんだよ! 魔法を教えて欲しいだけだから! 付き合うと言っても攻撃魔法の火力を上げる特訓に付き合って欲しいだけなんだから! このエロボケジジイが!」

「な、なんじゃ違うのか。死ぬ前に一度そんなアバンチュールな体験してからあの世に旅立つのもいいかと思ったんじゃがのう」

「やりたかったのかよ」

「ぽっ!」

「『ぽっ』じゃねーよ!」

「本当にその指輪が貰えるのに、そんなことでいいのか?」

「はい。この条件をお受けして貰えますか?」

「もちろんじゃよ!」

「じゃあ、交渉成立ですね」

「交渉成立じゃのう!」

 

 気を取り直して今までやった事を話した。

 ここ二週間訓練を続けても攻撃魔法の威力に全く進歩が無かったこと。

 回復魔法も毎晩訓練しているのに相変わらず覚えられないこと。

 そんな事をじいさんに話した。

 

「手っ取り早く攻撃魔法の魔力を上げる方法は有りませんか?」

「そうじゃな。手っ取り早い方法が有るならワシが使いたいぐらいじゃ。手っ取り早いかどうかは解らないんじゃが確実に魔力を上げるには練習有るのみじゃな。呪文を使いまくってスキルを上げるのが魔力向上には一番の早道じゃ」

「万能の指輪を付けて、もう二週間もスキル上げを続けてるのに魔力が上がった実感がまるでないのです。才能が無いんでしょうか?」

「話だけをしてても話は進まんからな。お主、ワシに向かって呪文を撃ってくれ」

「部屋の中でですか?」

「大丈夫じゃ。この周辺に魔力障壁を張るから気にせんでいい」

「では、撃たしていただきます」

 

 俺は渾身の一撃の火球を放った。

 渾身の一撃の割に火球の発射音がシャンペンの栓を抜いたような感じの音なのが恥ずかしい。

 前に見たフィーナさんの魔法とは明らかに威力が違う。

 ピンポン玉サイズの火球がじいさんにひょろひょろと向かって飛んで行った。

 じいさんはその火球を手で受けると両手でもみ消した。

 

「思ってたよりも随分となさけない感じの火球じゃのう。二週間練習した結果がこれか」

「はい、自分でもなさけないと思っています。それで何か訓練のコツが有るんじゃないかと思ってこうしてお聞きしているのです」

「まあ、大体状況は解ったし原因も解った」

「解ったんですか? たったこれだけで! 何が原因だったんですか!」

「ところでお主のレベルは今いくつじゃ?」

「いまはレベル3です」

「それじゃな」

「それと言いますと?」

「スキルって言うものはレベルで上限が決まってていずれ限界が来るんじゃ。いまのお主がその状態じゃ。鑑定スキルを持ってないワシでも十分解る。いまのお主はレベルからくる制限によってスキルがカンストしている状態じゃ。お主がスキルの限界を超える為にはレベルを上げないと始まらんのじゃ」


 マジカよ!

 そんな事なのかよ!

 それでいくら練習しても火力が上がらなかったのかよ!

 もっと早く知りたかった!

 今更知った衝撃的事実。

 スキルはレベルで上限が決まってるらしい。

 どうりでいくら訓練しても魔法スキルが上がらない訳だ。

 でも、レベル上げってどうやればいいんだ?

 このボス前部屋からだとボス部屋にしか行けないぞ!

 おまけに強くて倒せないですし!

 俺にはどうするか解らねぇ!

 じいさんになにかいい案が無いか聞いてみる事にした。


「でも、ボス前部屋からですとダンジョンの道中側には戻れないですし、その反対側はボス部屋だけですし、経験値を稼ぐ手段が無くて完全に手詰まりと言うか何というか」

「ならボスを倒せばええ」

「ボスが強くて今の自分には倒せないんですよ」

「なにも一人で倒す必要はないじゃろ。他のパーティーに寄生して倒せばいいだけじゃ」

「でもそれじゃ……」

 

 一人で倒さないとダンジョンの外には行けないんだよ……。

 

「何人で倒しても経験値は入るじゃろう? ソロでボスを倒したいならレベルが十分に上がってからにする事じゃ」

「そうだ! そうだった! ありがとうじいさん! 限界を超えられそうだ!」


 おっさんは激しく勘違いしてた。

 ソロでボスを倒す必要があるのは外の世界に行く時だけ。

 レベル上げ目的だったらパーティーに寄生しても何ら問題無かったんだ。

 ならやる事は簡単だ。

 パーティーに寄生してレベルを上げる。

 ただそれだけだ。

 それに経験値を上げる手段は他にも心当たりが有る。

 

 ──EXPポーション

 

 経験値を得られる薬。

 それがボス討伐討伐報酬の戦利品で貰える!

 それでレベルを上げる事も出来る!

 今までの先の見えない闇の迷宮に一筋の光が差した様な気がした。

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