おっさんの魔法スキル上げ!
翌朝からおっさんは魔女っ娘フィーナと魔法の特訓を始めた。
「魔法を使うって言うのはどういうことか解る?」
「体の中にある魔力を放出するのかな?」
「ダメね。全然ダメ」
「くう」
「あのね、そんな事してたら、一瞬で干からびて死んじゃうわよ♪ そんな芸当は、底無しの魔力量を誇っている大魔導士じゃないと出来るものじゃないわ。例えばね、ダンジョンを各地に造ったダンジョンマスターとかなら出来るかもしれないけど、私達の魔力量じゃそんな事は出来ないし、やったらダメ」
ダンジョンマスターって言うのは、以前リリナから聞いた事が有る。
この世界のダンジョンを作り上げた大魔導士。
レアアイテムで冒険者をダンジョンに誘い込み、自ら召喚し放った魔物と戦わせ、冒険者がダンジョンで稼いだ経験値の半分をゴッソリ頂くという、玉座に座りながらにして秒速一億EXPを稼ぐ男だ。
おっさんの記憶が間違えなければ、そんな事をリリナは言ってた。
「私たちがしてるのは、大気中に存在する五大元魔素、マナと言われているものを抽出し具現化させること。それが魔法なの♪ わかる?」
「となると魔力はいったい何のために存在してるんです?」
「いい所に気がついたわね。魔力はね、大気からそのマナを抽出するために使う触媒なの。この事を理解出来てないとこの先行き詰るわよ♪」
「なるほど」
「私の場合は、炎の魔法しか使えないから、大気中から炎の魔素を抽出したの♪」
「なんとなく原理については解りましたけど、その抽出はどうやればいいんですか?」
「それはね、心に炎のイメージを作るのよ。そしてマナを支点にして投影拡大するの」
「うーん、急に言ってる事が解らなくなってきたんだけど」
「虫眼鏡って知ってる?」
「もちろん」
「心の中にね、炎を作って魔力でマナと言う虫眼鏡を使って拡大するのよ。そうするとね、大気中のマナを使って大きな炎の虚像が出来るのね♪」
「虚像?」
「拡大した映像みたいなものよ。でもね、映像なんだけどマナを通したから実物そっくりな物になるのよ。心に思い浮かべた物が、しっかりとした実像を持つのね。でもね、拡大するんだから元となる心に作る炎はそれがハッキリしたものじゃないと拡大に耐えられないし、炎の明るさも物凄く明るくないとダメなのよ♪ なんか解って無い顔してるみたいだけど、まずは心の中に炎を作る事から始めた方がいいわね。拡大の方は私がやるわ。ここにろうそくはあるかな?」
「ないですが、ちょっとだけ待っててください」
いつもの如くコンビニに走るおっさん。
店員はいつものバイト君だった。
バイト君は、おっさんがろうそくを買った事で、新しいいかがわしい趣味を始めたと思ってドン引きだ。
「買って来ました!」
「随分速かったわね♪ じゃあ、そのろうそくを目の前に立てて。そうしたら心の中に炎の強いイメージを作るの」
「目を開けてろうそくの先端を見て、炎を灯すイメージを作るのよ♪ 私が投影するサポートをするから、他の事は気にしないでろうそくの先端だけを見るのよ。いい? 絶対にそこに炎が存在すると思うの。そうすれば必ず実体化するからね♪」
「わかりました!」
おっさんは頭の中でイメージを作る。
ろうそくの先端には炎が確実に存在する!
間違いない!
絶対に存在する!
おっさんは目を見開きイメージする。
「もっと! もっとハッキリと! 全然実体化して無いわ!」
「はい!」
「ボケボケだわ! いい? 輪郭と細部をハッキリさせるように、イメージさせるの!」
「はい!」
「いいわ! 少し形になって来たわ!」
「ありがとうございます!」
「もっと! もっと激しく! 目に力を!」
「はい!」
ろうそくから細い煙が出る!
「いいわよ! もっと! 激しく! もっと激しく! 濃く! 濃いイメージを作るの!」
心の中で何かがはじけた!
『ぼわっ!』と音を立ててろうそくが火を灯す。
「いけたわ! いけたわね♪」
「はい! ありがとうございます。おかげで魔法が使えるようになりました!」
「何言ってるのよ。これはまだ魔法詠唱の入り口の入り口よ。今日は自力でろうそくに火を着けられるまで特訓よ! 指輪のお礼分はキッチリ教えるからね♪ 私の特訓は厳しいわよ♪ 覚悟しなさい!」
翌日の昼近くまで、二人の特訓は続いた。




