おっさんに恋するリリナ3 おばあちゃん
リリナのおばあちゃんは、街に降りて来たハーフエルフのリリナ達とは違い、エルフの古くからのしきたりである『森と共にエルフは生きる』という言葉を実践して暮らしていた。
エルフのしきたりを大切にする人なので、街には住まず森の中の一軒家に住んでいた。
生粋なエルフであるおばあちゃんは、年と共に年齢を重ねるリリナのお母さんとは違い、見た目が若いままで、リリナとほとんど変わらない顔立をしていた。
人間並みの寿命のハーフエルフと違い、エルフは寿命が長い為、おばあちゃんは若いままの姿でいられる。
そんなおばあちゃんの家にリリナが訪れた。
「おばあちゃん、久しぶり」
「どうしたんだい? リリナ。もうここには来るなと言っただろ?」
「わたし、遠い国のおっさんと結婚する事になったから、もうこの国には戻れないと思って、挨拶に来たんだ」
「ほう、おてんばなリリナが結婚か」
「おばあちゃんまで、わたしの事をおてんばとか言うのをやめてよ」
「ふふふ。その相手はどんな人なんだい?」
「ダンジョンの奥に住んでいるおっさんで人間族なんだ」
「ダンジョンの奥?」
「ダンジョンのボス部屋前に伝説の宿屋が出るの知ってる? 冒険者をしてたおばあちゃんなら知らない? そこに住んでいるおっさんなんだ」
「それは異世界の宿屋?」
「うん。そんな事言ってた」
「その結婚はやめなさい!」
「おばあちゃんの事はお母さんから聞いたよ。昔、人間の男の人と結婚して辛い目に遭ったんでしょ? でも、僕の結婚する相手の人はそんな人じゃないから! 僕の事を物凄く大事にしてくれるし、そばに居るだけで幸せになれる気がする、とっても素晴らしいイケメンなんだ」
「あなたは、きっとその人の色香に惑わされているのよ。不幸になりたくないならやめておきなさい!」
「やだよ! 僕の運命の人なんだから、これを逃したら一生幸せな結婚なんて出来なくなるよ! 他の人じゃダメなんだ。あのおっさんじゃないとダメなんだ!」
「おねがい! わたしと同じミスをして欲しく無いの」
「ミスじゃないもん! 僕、あの人の事が本当に好きなんだ」
「解ったわ。どうせ口で言っても聞いてくれないと思うから、もうこれ以上言っても時間の無駄だから言わないわ。でも、言っておくわ。あなたはそのおじさんの色香に惑わされているだけなの。時間が経って色香が抜けた時、きっと後悔しか残らないわよ」
「そんな事ないから! おっさんはそんな事しないから! そんな事言うおばあちゃんは嫌い!」
なんでみんな人間との結婚を止めるんだよ!
なんで一人も祝ってくれないんだよ!
リリナは泣きながら小屋を後にした。




