女騎士、現る!
リリナへの手紙を書き終えると、今まで胸につっかえてたものも消え、なんとなく気分が軽くなった。
初めての恋は失恋か……。
まあいい。
新しい恋を探そう。
悲しくなんて全然ないからっ!
……。
…………。
ううう……。
やっぱり悲しい。
ついさっきまでは騒がしいのが居たので気が紛れて寂しさを感じなかったけど、一人になると悲しみが込み上げてくる。
こんな気分は初めてだ。
俺はふて寝をする為にソファーに横になった。
五月蠅いのに振り回されて疲れていたのか、すぐに眠りに落ちる。
夢の中ではリリナが俺に微笑んでた。
忘れたいのにリリナかよ。
でも、どわ美が出てくるよりはいいか。
夢の中で知らない女の人に声を掛けられた。
「あのー、ちょっといいですか?」
綺麗な声の女の人だった。
その女の人が俺をゆり起こす。
かなり力強い感じで。
「起きてー! くー!だー!さー!いー!!」
夢じゃなかった。
俺はガバッと半身を起こし目を擦る。
目の前には銀髪の女騎士が居た。
サラサラの長い髪をなびかせた女剣士だ。
純銀のフルプレートに身を包み、遠慮がちに俺に声を掛ける。
「ここは宿屋で間違いないでしょうか?」
「ああ、はい。宿屋です」
寝起きで頭が回らない。
目の前に凄い美人の騎士みたいなのが立ってるんだけど、これ夢じゃないよな?
「お代はおいくらですか?」
「えーと、一泊金貨五枚です」
「ダンジョンの中なのに、随分とお安いんですね。一泊お願いします」
美人騎士から金貨五枚を受け取る。
どわ美、あいつ宿代ケチってたんだな。
せこい奴!
どうりで領収済みの証拠が欲しくて、宿帳に無理やり名前を書きたがった訳だ。
こんどあいつが現れたら、あいつの宿代は一泊金貨一〇〇枚ぐらいにしてやろう!
「ではこちらの宿帳にお名前などをお書きしてください。今お風呂の準備をしてきますね」
美人相手なので、言葉遣いもなぜか丁寧になってしまう。
営業モードってやつだ。
俺は風呂場に行き、どわ美が散らかしたままの風呂場を掃除して湯船に湯も張った。
シャンプーとボディーソープの容器を見てみると中身が空っぽに。
どわ美どんだけシャンプー使ってるんだよ!
いやあの分量は一回の入浴で使える量じゃない。
絶対容器か何かに入れて持って帰ってるな!
あいつは出入り禁止だ!
出禁!
俺はストッカーから予備の詰め替え用のシャンプーとボディーソープを出し、容器に詰める。
風呂洗いに手間取っていると女騎士がやって来て、遠慮がちに声を掛けて来た。
「あのー、汚れた鎧はどこに置いておけばいいでしょうか?」
「鎧ですね。そこの脱衣所にでも置いてください。後で掃除しておきますから」
「はい!」
この女騎士はかなり育ちがいい様だ。
汚れた鎧の置き場を聞きに来たぐらいだしな。
それに、俺の足元が靴を履いて無いのを見て、空気を読んで靴もすでに脱いでいる。
礼節をちゃんとわきまえる様に育てられた娘なんだろう。
礼儀のあるお客さん相手なら、宿屋のおっさんとしても出来うる限り紳士的に対応したい。
風呂が沸いたようなので風呂に入浴剤を入れる。
月夜のお花畑の香りという、何とも匂いが想像しにくいフレーバーの入浴剤だ。
シャンプーや風呂の使い方等を一通り説明すると、おっさんは例の如くコンビニにダッシュする。
女物の下着を買う為だ。
さすがに何度も下着を買いにコンビニに走るのは面倒なので、売ってる物全部、合計七セット程の買い占め。
男物の下着も売っていたが、野郎の下着は俺様のお下がりでいいので買わない。
買うもんか!
男には金を掛けない主義だ!
ついでにビールや缶チューハイなんかのお酒とおつまみなんかも買い込む。
合計一五〇〇〇円ほどの大出費になったが、一枚一〇万円になる金貨を五枚程もらってるので赤字ではない。
大黒字である。
買い物かごの中に女物の下着を七セットも入れていたので、コンビニのバイト君に変な目で見られる。
ついでに言うと、どわ美の下着を買ったときのバイト君なので顔見知りだ。
確実に変な趣味を持ってるおっさんと思われているのか、ドン引きしていた。
家へ戻ると、早速脱衣所に下着を置きに行く。
念の為ドアをノックした。
「ちょっと入ってよろしいですか?」
「どうぞー」
脱衣所のドアの向こうから入っていいと許可が出た。
ドアを開けても脱衣所には女騎士は居なかった。
そりゃドアを叩いてから入ったなら居なくて当然だよな。
居たらどうぞなんていう訳が無い。
女騎士とのラッキースケベイベントを微塵も期待して無かったと言えばウソだ。
一〇〇〇分の一ぐらいの確率で、何かの間違いで女騎士が裸で座り込んで白い背中を見せる。
そんてことを期待してた。
下着を脱衣かごに入れようとすると、風呂場のドアが開いた。
気持ちいぐらいガラッ!と、ドアが開いた。
風呂場では全裸の女剣士が風呂椅子に座り、背中を見せながら振り向く感じで脱衣所の俺を覗いていた。
「のわっ!」
「あのー、すいません」
「は、はい。なんでしょう?」
女騎士はものすごい形のいい胸と、ものすごくくびれた腰を持っていた。
そして風呂椅子に座っているものの、綺麗なお尻の割れ目までしっかりと見える。
極上品のボディー!
こんな体見たことない!
リリナといい勝負の体。
豊満な丘の上に僅かにこちらに先端を覗かせる、ピクンと上を向いて立つピンクの突起が素晴らしかった!
いかがわしい店で見たらきっと一〇秒で三万は確実に取られるね!
それぐらいの極上品!
おっさん、一瞬で顔が真っ赤になってしまうよ。
「あのー、お風呂場の中で鎧を洗ってよろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ」
ラッキースケベイベ、ゴチ!
ポロリの神様は、この無職のおっさんに全能力を惜しみなくつぎ込んでくれている様だ!
失恋したばかりのおっさんの心を癒してくれる神に感謝をしつつ、俺は風呂場を後にした。




