おっさん、リリナの安否を心配する!
どわ美は見上げるように、僕の目をしっかりと見据えて話し始めた。
でも、その眼光は厳しく、まるでおっさんの心まで読んでいるようだった。
「ここの宿屋に泊まった女の話を聞いてなっ」
それはまさか、リリナの事では!
でもなんでそんな事を知っているのに、リリナがここにいない?
俺はこのドワーフが真実を語っているとは到底思えず、カマを掛けてみることにした。
「その女は赤い髪をしたドワーフか!?」
「いや、金髪碧眼のエルフだったがっ……。なんでも、激レアアイテムの精霊水晶売って、大儲けしたらしいっ」
「間違いない! リリナだ!」
無事向こうに着けたんだな。
よかった。
でも、向こうに着けたなら、なんで戻ってこないんだよ?
おっさんを散々待たせやがって!
じらしプレイなんて要らないぜ、全く。
それとも何かあったのか?
道中で事故でもあったのか?
「その女の人と、ここで合う約束してるんだけど、全然戻ってこないんだよ。ここに来る途中でモンスターにでも襲われて怪我でもしたかな?」
「ここの洞窟で怪我かっ? あはははっ!」
「何がおかしいんだよ?」
「全五層で、逃げ足だけ早いウサギや、動きの遅いカニしか居ないようなこの洞窟で事故かっ? おまけにボスは商人の私もでも倒せるような、ちょっと大きいだけの弱いカニで、ソロ狩りの練習場みたいなとこなんだぞっ! ここで事故起こす奴は、よっぽどの間抜けだけだぞ。少なくともここに来るまでの道中で、怪我した女は見かけなかったなっ」
少なくとも、ここにはリリナは来て無いようだった。
ボスの話もリリナの話とは違う。
リリナはここのボスは強く、ソロでは絶対勝てないぐらいの強さと言っていたが、目の前に座ってるちんちくりんの話では物凄く弱い敵だという。
俺の頭の中に嫌な想像が浮かんできた。
もしかして、おっさんはあの女に騙されてたんじゃないだろうか?
精霊水晶欲しさに騙してたんじゃないだろうか?
いやリリナがそんな事するわけない。
リリナは俺を好いていたはずだ。
俺は頭の中に浮かんだ嫌な想像を無理やりかき消した。
「見かけなかったならそれでいいんだ……」
「じゃあ話を元に戻すぞっ。その娘が話してるのを横から盗み聞きしたんだが、ここには魔法が使えない人間にでも容易く使える、棒状のランタンみたいなのが有るそうだなっ?」
懐中電灯の事かな?
多分そうだと思う。
以前から家に置いて有ったやつで、確か一〇〇円ショップで買ってきたやつだ。
「それを売ってくれっ! 持ってるだけっ! 金はたんまり持ってきたっ! でもあの娘にくれてやったぐらいだからそんなに高くない物なんだろっ? ボッタくるなよっ!」
威嚇してるのか体をプルプル震わしている。
そんな事をしている見た目幼女のどわ美かわいい。
「懐中電灯の事かな?」
「名前は知らないんだが、それを私に売ってくれっ! 持ってるだけっ!」
「ああ、懐中電灯はリリナにあげてしまったから、もうここには無いんだ」
「それは残念だっ! せっかく強敵の軍団が彷徨う、全層一〇〇層のダンジョンを超えてやって来たのに残念だっ! かわいそうなどわ美っ! 何とかしてやらないといけないと、お主は心が痛まないのかっ?!」
こいつ、ここのダンジョンは全層五層の弱い敵しかいないダンジョンと、さっき言ってたじゃないか!
その話はどうなってるんだよ?
自分で作ったホラ話の設定無視し過ぎだろ。
でも、まあ、店まで買いに行けば済む話か。
おっさんがホームセンターまでひとっ走りして、買ってきてやるかな。
「あ、でも、買いに行けばすぐ手に入るぞ」
「ほっ本当かっ! 金はたんまり持ってきたっ! 売ってるとこに案内してくれっ!」
どわ美はそう言うと、リックの中からずっしりとした金貨入りの革袋を取り出して机の上に置いた。
金貨のあまりの重さで、けっして作りが悪くないダイニングテーブルがギシッと悲鳴を上げる。
「売り場に案内してもいいけど、その中に入ってるのはさっきくれた金貨だろ? それはこっちの世界では使えないんだ」
「なんとっ!」
「でも全く使えないって訳じゃなくて、それがちゃんと金を含む金貨なら、こっちの世界のお金と換金すれば使えるようになる」
「じゃあ、そこから案内してくれっ!」
おっさんとどわ美は、金貨を換金するために貴金属店へと向かう事となった。




