おっさん、かわいいおんなの娘と食べ歩きするぞ!
その夜、缶酎ハイで二人で軽く晩酌を交わした後、寝る事にした。
リリナは缶酎ハイを飲むと、顔を真っ赤にして上機嫌になった後、すぐに寝てしまった。
俺は、リリナをベッドまで運んで寝かせると、ソファーの背もたれを倒しベッド状にし横になる。
*
横になりながら、昨日からの事を思い出してみた。
クローゼットに穴が開いて、ダンジョンに繋がっていたこと。
クローゼットの宝箱から、レアアイテムの水晶を手に入れた事。
そして、それが高価な品で有ったこと。
俺の部屋に、見知らぬ少女がやって来た事。
その少女を家から追い出そうとすると、隣のおばさんに通報されそうになったこと。
その少女の裸を見てしまった事。
その少女から、ダンジョンの事を色々と聞いた事。
少女と一緒に、すき焼きを食べた事。
ダンジョンが消えていたこと。
帰れなくなった少女と、一緒に晩酌をしたこと。
目まぐるしいほどの事が、この二日間で有った。
今までの生活と全く違うこの二日間。
これが夢であってもおかしくないほどの変化。
俺はそんな事を考えていると、いつの間にか寝てしまっていた。
*
ふと夜中に目が覚めた。
何かの気配がした。
目を開けると、俺のすぐ目の前でリリナが横になっている。
どうやら俺のソファーの中に潜り込んできたようだ。
目を開いて俺を見つめていた。
「ごめん、目がさめちゃった? 気がついたら一人で寝てて……寂しくて……起こしちゃってごめんね」
「寂しかったか。一人にしちゃってごめんな」
「あのさ……こんな事、女の僕から言うのはものすごく恥ずかしいんだけど……」
そう言うと、リリナは俺に口づけをして来て……。
*
翌日、俺は充実感と罪悪感に苛まれていた。
充実感。
俺は遂に三四年間拗らせていた病気から解放された。
肩の荷が降りるというか、男としてのステージが上がった感じの充実感。
そして罪悪感。
いくらリリナから誘ってきたとはいえ、まだ結婚もしてないのに、男と女がする事を最後までしてしまった事。
こんな童貞を拗らせた冴えないおっさんが、リリナの初めてを奪ってしまった事を申し訳なく思う。
でも、リリナはとても喜んでいた。
それだけが唯一の救いだった。
「凄く良かったよ! これで僕も大人の女になれたし! しかも初めての人が旦那さんとなる人なんて、僕はなんて幸せなんだろう!」
「本当に俺みたいなおっさんと一緒になっていいのかよ?」
「だって好きだからっ!」
またしても唇を重ねて来たリリナ。
そしてまた、罪悪感の元となる行為を再びし始めた。
*
気がつくと、時刻は既に正午を超えていた。
「そろそろお腹もすいてきた事だし、食べ歩きに行かないか?」
「僕としては、もうちょっとおっさんと一緒に横になっていたいんだけど。もう一回だけいい?」
「しょうがないなー」
*
気がつくと、時刻は既に三時を超えていた。
「流石にお腹空いてきたよな?」
「そう? 僕としてはもう一回ぐらい……」
「いや、そろそろ食いに行こうよ! このままだと、夜のピーク時間に当たってお店も混むし」
「そうだね。空いてるうちに食べて、帰ってきたら、またお楽しみをしよっ!」
着替えを取りにクローゼットに向かうと、そこにはダンジョンの入り口が待ち構えていた。
「ダンジョンの入り口……だ」
「戻ってる! ちょっと僕、換金に行ってくるよ!」
「すまない、ちょっと行ってきてくれ!」
「うん!」
「戻って来るのにどのぐらい掛かる?」
「そうだねー、向こうに着くのはすぐで、換金もそれ程時間掛からないと思う。それからお金をいっぱい払って、強いパーティーメンバーを何人も集めて戻って来るから、明日の夜にはなんとか!」
「そうか、じゃあ待ってるから。明日はすき焼き用意して待ってるよ」
「うん!」
「あ、あと、俺が使ってた装備渡すよ。リュックと懐中電灯とランタンと……、あと食べ物とか飲み物とかも入ってるから」
「いいの? これ?」
「この先はボスの居る部屋だけなんだろ? とてもじゃないが、俺の腕じゃ先に進めないからもう使うことはなさそうだし。そのリュックの中身は、ここに戻ってくる時の道中で役に立つと思う」
「わかった、ありがたく使わせてもらうよ。じゃあ行ってくるねっ!」
「気を付けてな!」
「うんっ!」
リリナはジャージを着ると、手を振りながらダンジョンの奥へと向かっていった。
背には莫大なお金に換金できる、精霊水晶を入れたリュックを担いで。
俺はリリナの背中を見送った。
これが俺の人生の中で、最大の誤ちだった事を知らずに……。




