4/6
Ⅳ
少しだけ、寄り添ってみる。
こんな寒い日だから。
雪が冷たく壁を濡らしているのに、その窓枠に雪が降り積もることはない。
一緒の空間に居ることは出来ないけれど、今日は暖かそうな色の傘を持ってきた。
――こっちへ来てよ。
絵が飛び出してくればいいのに。
世界中の絵が本物になればいいのに。
お願いだから、二次元と三次元を別けないでくれ。
ぼくの居場所を、別けないでくれ。
空を見上げる、黒い猫。白い世界の中で、窓枠から灰色の景色が、ぼくを見ていた。
それでも、その猫はぼくを見てはくれなかった。
それでもよかった。
きっと、手が届かないものだから。
本当はこの瞬間だって、広げた本の1ページに過ぎないって、ぼくは知っているから。