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Ⅰ
“IT'S RAINING CATS AND DOGS”
そんな慣用句を知っているだろうか。
“土砂降り”という意味を冠したその題名は、なるほど隣に描かれた猫の絵にぴったりだと思った。
誰が? ここに? そこに意味なんて?
何もわからないけれど。
薄汚れた壁の中にあって、きらきらした瞳を空に向けているその姿は、青い空の下で怖いくらいに映えて見えた。
ボクは考える。考えることが多すぎる世界に生まれて、こんなに小さな脳みそしかくれなかった神様を恨んで考える。
記憶できるものが少ないボクは、必死に考える。
あの猫が空を見上げることに何の意味があるのだろうか。
ガラスで出来たような瞳に映るのは何なのだろうか。
窓辺に座って空を見上げる猫。
入道雲と散文。
喋々――大空――【光】――ボクには叶えられなかったのか?