第五幕 八十一話 The Duo/鮮夜とミス・ファービュラス
「くそっ、このままじゃ!」
「どうにかならないのか。あの中には、スプレッド・レイザーもカルナだっているんだぞ!」
「んなことたぁ、わかってる。ガキ共もいるし、アリアもいるかもしれねぇんだろ? けど……」
鮮夜とセタンタが言い合いをしているところに、可憐な声が割り込む。
「セタンタ。おまえ忘れているのか? 自分がルーンを扱えるということを」
しばしの静寂。
鮮夜とセタンタは互いの顔を見合い、セタンタがハッと笑みをこぼした。
「アーハッ! そういや、そうだった。ずっとカサド・ドヴァッハで戦ってたから忘れてたぜ」
「ったく、それで? 魔術だけで何とかなるのかよ、あれ?」
最早、既に教会は闇に膨れ上がった闇で隠れてしまっていた。
「消失のルーンを使って闇を消し飛ばす。だが――」
「俺がそれを許すとでも思っているわけではないな?」
鮮夜たちの行く手を阻むようにエティエンヌが立ちはだかる。
「わたしと鮮夜でエティエンヌを引きつけよう。その間に、クー。おまえがスプレッド・レイザーたちを救いに行け」
ミス・ファービュラスの提案に鮮夜は即座に頷いた。
《ナハト・ノエル》を眼前のヴィランに向ける。
「コイツにはまだ、オレの全てをぶつけてない。コイツの目的をオレが阻止する。それこそ意味のあることなんだ!」
「ヘッ、俺だって突然変異体と死合いを続けたいが、アイツらを放っておけねぇしな!」
セタンタは言い終わると同時に駆け出していた。
大地が砕ける音と共に消え、残ったのは鮮夜とミス・ファービュラスと。
「俺というわけか」
「さて、鮮夜。そろそろ決着をつけたいだろう?」
頭上から降りてきて鮮夜の耳元で囁くミス・ファービュラス。
鮮夜は真っ直ぐエティエンヌ=ド・ヴィニョルを睨みつけたまま、嗚呼、と答えた。
「よし。なら、スプレッド・レイザーたちのことは忘れろ」
さすがにこの言葉にはミス・ファービュラスの顔を見ずにはいられなかった。
「どういう意味だ? 見捨てろっていうのか?」
いやいや、とミス・ファービュラスは首を横に振る。
「セタンタはあの巨大な闇で包まれた教会を何とかした後、そのままスプレッド・レイザーたちの加勢に行くはずだ。中がどうなってるのかわかったものじゃないからな」
「アイツだってエティエンヌと戦いたがっていたんだぞ? よくそんなことがわかるな」
ミス・ファービュラスは得意気な表情でもちろん、と微笑んだ。
「わたしとアイツは腐れ縁だからな」
その時、獅子の咆哮が響き渡った。
大地の震え、教会を包む闇の音すら掻き消すほどの。
「ああ、悪いな。別にアンタのことを忘れたわけじゃない。それどころか、アンタを殺すために全てを出し切る」
「こちらもそろそろ行かなくていけないのだ。ジルの準備が整ったのだ。アヴェンジャー、そしてミス・ファービュラス。貴様らを屠ろう!」
激しく大戦斧で地面を抉りながら襲い掛かって来るエティエンヌに、鮮夜はアンカーを射出した。
一瞬、エティエンヌの気がそちらに向いた時、ミス・ファービュラスの両手が光を帯びる。
「貫け、ブラスト・ストライク!」
紫桜色のエネルギアの砲撃が流星の如く敵へと撃ち放たれた。




