第四幕 七十八話 The Flame On/炎の聖剣
「うああああああああ!」
「ぐはっ!?」
ジルの黒魔術でカルナとスプレッド・レイザーは地に倒れる。
直撃だ。
あれほどまでの高密度に圧縮された闇が至近距離で大爆発したのだ。
受けたダメージは計り知れない。
「フフフフフ。ハハハハハハハハハハ!」
ヴィランであるジルは天を仰ぎながら声高らかに笑う。
「これで理解できたでしょう。私はただの騎士でも。ただの黒魔術士でもない。マティリアライズ・ミィスによって具現化された今、黒魔術騎士として確立している。相手がヒーローだろうと、聖剣を扱う者であろうと。ジャンヌのために、負けることなどありはしない!」
レイピアに古書を当てる。
古書から魔力が流れ刃に禍々しい闇が纏わりついていく。
痛みに悶えるカルナとスプレッド・レイザーはその様を目に映しても、立ち上がることができないでいた。
不敵な笑みをジルが浮かべて剣を一閃した。
放たれた闇の斬撃は巨大な竜巻へと変化して、倒れているカルナたちに更なる追い打ちを仕掛けたのだ。
「ぐあああああああっ!」
絶叫が木霊する。
籠の中に囚われている子供たちはカルナとスプレッド・レイザーの声を聞いても微動だにしていなかった。
子供たちには最早、周囲で何が起きているのか理解するための能力が失われているのだろう。
竜巻は未だ勢いをそのままにカルナたちを攻撃していた。
これで勝った。
邪魔者を消し去った。
故に、さっさとジャンヌ・ダルク復活の準備を行おうと考えていたジルが異変に気づいた時には、既に遅かった。
「ぐがっ!?」
炎の一閃がジルに襲い掛かり、直撃を受けてダメージを受けてしまう。
纏わりつく炎を振り払う。
顔を上げて見据えると、そこには《エクスカリバー・星炎》を力強く握りしめるカルナが立っていた。
「あなた……」
「はぁ、はぁ、はぁ。俺はこんなところで倒れるわけにはいかない。時間をかけるとそれだけ、アリアが苦しむことになる。悲しむことになる。だから!」
駆け出すカルナ。
《星炎》の刃が赤く変色していく。
その色からとてつもない温度に達しているのだと予想できた。
利き足を軸に回転斬りを繰り出すカルナ。
「そんなもの!」
古書を開いたページに描かれた魔術陣が発動して、ジルは術壁でカルナの斬撃を防ごうとした。
今までと同じ。何度繰り返そうが自分には届くことは無い。
それは過信だ。
カルナはこのアイルランド・キングダムに来て、鮮夜やスプレッド・レイザーたちと一緒に、今回のインシデントでエティエンヌやジルと何度も戦って来たことで、確実に成長していた。
こうして戦闘中であろうとも例外ではない。
だから――。
「砕けろおおおおお!
「なにっ!」
赤い刃が術壁に触れた瞬間、バリバリと音を立てながら砕けていく。
ガラスや鏡が割れたような感じだ。
すかさず、ジルは後方へと移動するが、カルナは《エクスカリバー・星炎》を後方に向けて叫んだ。
「爆炎!」
言い放つと刃から火炎放射のように炎が溢れ出して、その勢いを利用してカルナは宙を舞った。それも物凄い速度で。
後方へと移動しているジルに追いつく。
空中で聖剣を構えてジルの肩目掛けて貫こうと穿った。
「破魔・刺炎!」
高速で繰り出される炎の刺突がジルの肩を貫いた。