第四幕 六十話 The Clue/新たな手がかり
カルナはスプレッド・レイザーに鮮夜の所在を尋ねる。
「鮮夜? 僕と一緒に戦って……」
首をキョロキョロとさせるスプレッド・レイザー。
しかし、周りに鮮夜の姿も気配も無かった。
「一緒に戦ってたんだろ?」
「そうなんだけど、鮮夜より先にやられちゃっからその後のことはわからないんだ」
ごめんね、と悲し気な表情を――恐らくマスクの下で――したスプレッド・レイザー。
もちろんカルナに責めることなどできはしない。
自分は二人よりも先に倒れ、今の今まで眠っていたのだから。
「いや、俺の方こそ役に立てなくてごめん」
「そんなことないさ。あの獅子がとんでもなく強いってことだろ?」
互いに言葉を交わしているとそこへ足音が聞こえてきた。
カルナは《エクスカリバー・星炎》を構えてスプレッド・レイザーを庇うように立つ。
「敵か? まさかラ・イールが」
「……んー、この感じは敵じゃないと思うなあ」
スプレッド・レイザーの言うことに不思議そうな顔をするカルナ。
そして、ホールに響く足音は次第に大きくなり、ついに破壊された扉の陰から人が現れる。
「あ、鮮夜!」
スプレッド・レイザーの言う通り、敵ではなく捜していた鮮夜その人だった。
鮮夜はカルナの声にうるさい、と手を振った。
エティエンヌの戦闘からかなり時間が経ち、再び三人は合流した。
「何処に行ってたんだい?」
「何処って、もちろんあの野郎が行った場所だ。お前も扉をぶち壊したんだから覚えてるだろ」
スプレッド・レイザーはあはは、と頭を掻く。
「その場所にはもしかして」
カルナの予想を理解できたが鮮夜は首を横に振った。
「いいや。あの奥にはさらに部屋があって大きな扉があった。その扉の奥は長い廊下が続いていたんだ。行き止まりには何かがかけられていた」
「つまりそれが、ジャンヌ・ダルクの旗だったってこと?」
「そうだ、スプレッド。けど、お前は聞いていたか?」
「ううん。鮮夜はドクターを責めるつもり?」
「だってそうだろ。ここにジャンヌ・ダルクの聖なる旗が保管されているなんてわかっていれば、初めから守りを固められていた」
「確かにここはドクターの技術が利用されたセキュリティだけど、ドクター自身が管轄してるわけじゃない」
スプレッド・レイザーの言うように、このカーディフ・ミュージアムはドクターが女王に頼まれてセキュリティを担当していた。
しかし、ドクターは基本スーペリアーズのメンバーだ。常にヴィランズとの戦いに追われている。
故にセキュリティを設置した後は女王直轄の組織に任せていた。
「つまり、ドクターもここにジャンヌ・ダルクの旗があるなんて知らなかったってことか?」
尋ねるカルナにスプレッド・レイザーはきっとそうだろう、と話す。
聞いていた鮮夜は苛立ちを隠せない。
「くそっ! ドクターが知っていれば奴らを……」
「俺たち、またエティエンヌたちに負けたのか」
「まあ、仕方ないよ。敵さんは目的を達成したらすぐに逃げちゃうし、僕らは神現者を相手にしているんだからね」
下手なヴィランより相当厄介というわけなのだろう。
三人が項垂れているとスプレッド・レイザーが持つデバイスに通信が入る。
「はいはーい。こちら、スプレッド・レイザー」
《良かった。三人とも無事かい?》
噂をすれば影が差す。
ドクターからの通信だった。
「どうしたんだ、ドクター?」
《強大なエネルギアをカーディフ・ミュージアムから感知してね。そのエネルギアが動いていたんだ。追跡したが消えてしまって。君たちが追いかけているかと思ったんだけど》
「動いていた……。じゃあ、そいつが消えた場所がわかるのか!」
《あ、ああ。もちろん。消えたのはカーディフ南東にある……これは古びた教会だね》
鮮夜は確信した。
まだ、エティエンヌたちへのパスは消えていない。
「ドクター、その場所を教えてくれ」
《それはいいけど、一体何が起きているのか話してくれないか?》
そうして鮮夜は今まで起きたことをドクターに伝えることにした。