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第三幕 五十二話 The Cardiff/歪みの街

 鮮夜たちは一つ目のポイントであるカーディフに来ていた。

 どうしてカーディフなのか。

 実はここカーディフという街は神秘が集中する街でもあるのだ。

 何を言おうスーペリアーズのブレインであるドクターが地球に初めて降り立ったのは、このカーディフ。

 まぁ、時代は今よりも遙かに昔の二〇〇六年なのだが。

 スーペリアーズの専用機《キルグレイブ》でカーディフに到着して、目的のポイントに移動しながら鮮夜はかつてドクターから聞いた話を思い返していた。

 カーディフは昔から神秘が集まる場所だった。

 それはこの地に空間の歪みが存在しているかららしい。

 空間の歪みというのはもちろん一般人の眼に見えることは無い。

 他にも現代の科学技術を用いても不自然な点を見つけることはできない。

 空間の歪みを感知できるのはドクターの技術もしくは、神秘の存在のみだ。

 地球には〝マティリアライズ・ミィス〟という現象が起きる前から、既に神秘の存在が内包された星だ。

 それは歴史が証明している。

 古の時代には確かに異能者、魔術士、魔法使い、妖、神という存在が表舞台にいた。

 しかし、人間という卑しい生き物のせいで異能者、魔術士、魔法使いと言った者たちは自らを秘匿し、妖や神は合わせ鏡のようなこの星にある別の世界に移った。

 だからこそ、妖や神とはほとんど接触ができない。 

 だが、空間の歪みは別段隠されているわけではないのだ。気づかないうちに通ってしまうこともある。

 すると、その人物は表の世界から忽然と姿を消してしまう。

 これが神隠しの真実だ。

 また、ティーヴィー番組でよくやる未確認生物が目撃されるというもの。

 あれも、空間の歪みからこちらへ移動してきた妖や神だということだ。

 地球にはこうして空間の歪みが幾つかあり、一つがここカーディフにある。

 ということを鮮夜はカルナに説明してやった。


「なるほどね。だったら、もう一つの歪みがある場所は知ってるような気がする」


 それはカルナでなくとも鮮夜でも理解していた。

 彼もまた倭国日本からこちらに来たのだから。


「京都だな」

「ああ。京都は今でも妖が出てくるから」

「だが、厳密に言えばもう空間の歪みなんて関係ない。〝マティリアライズ・ミィス〟の影響で表と裏の世界を隔てていたものは無くなって、今や一つに繋がっているから」


 故に今の世界には神秘の存在が古の時代と同じように生きている。


「でも、それと今回の出来事と何の関係があるんだ?」

「関係があるなんて言ってない。ただ、空間の歪みがある場所の周囲がポイントになっていると思っただけだ」


 そんなことをカルナに説明していると、先行していたスプレッド・レイザーが何か喋っていた。


「二人とも早く早く!」

「うるさい。お前は騒がしいから嫌なんだ」

「そんなこと言って、僕がいなかったらカルナと二人話すこともなくて、ずっと静かな空気のままだったんだよ?」


 感謝してほしいよ、と変に胸を張るスプレッド・レイザーだが、鮮夜はそっちの方がずっと楽だったと内心思っていた。


「それでどうしたんだ、スプレッド・レイザー?」

「カルナ、ほらこれ見てよ」


 スプレッド・レイザーがこちらに差し出したのは彼のデバイスだった。

 ヴィジョンにはポイントに近づいている鮮夜たちが映っていた。

 ヴィジョンから視線を戻して周囲を見渡す鮮夜だが、何処にもおかしなところはなかった。

 いつも通りのカーディフの街並みだ。


「本当にここにエティエンヌたちが狙う何かがあるのか?」

「さぁね。僕はポイントを絞るところまではやったけど、これがラ・イールと繋がってるかまでは保証しないよ」

「お前、ここまで来てそれは無いだろう」

「でも、せっかくここまで来たんだ。何かないか探してみよう」


 カルナに言われて鮮夜も渋々承諾する。


「オレもスプレッド・レイザーも魔術や魔法の感知は無いから、お前が頼りだ。わかってるな、カルナ」

「ああ、任せてくれ!」


《エクスカリバー・星炎》を携えてカルナは張り切ってアリアの手がかりを捜索する。

 駆けて行くカルナの後ろ姿を見ながらスプレッド・レイザーは言った。


「今の言い方、まるで鮮夜がリーダーみたいだよね。いや、リーダーって言うより王様?」

「うるさい。ほら、さっさと行くぞ」

「はーい」


 彼らはまだ知らない。

 このカーディフで再び大きな戦闘が起こることを。

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