第二幕 二十一話 The Reverse/ジャンヌ・ダルクの魂
「ジャンヌ・ダルクを復活させるだと? そんなことが可能なのかドクター?」
沈黙を破った桜花からの質問にドクターは首を横に振った。
「今やマティリアライズ・ミィスの影響で世界は神秘で溢れるようになった。それでも死した者を甦らせることはできない」
ドクターははっきりと断言した。
その話を聞いていて鮮夜が悲しみの表情を浮かべていたことに気づいた者は誰もいない。
「なら、アンタの言うジャンヌ・ダルクの復活はあり得ないってことにならねぇのか?」
「そうだが……。クー、あり得ないなんてことはないんだよ。このユニヴァースにはね!」
それは一体どういうことなのだろうか。
部屋にいる誰もがドクターの言葉を待つ。
ドクターは怪我をしていても気にせずにニコッと笑いながら話を進めていく。
何が楽しいのかと思うだろう。
さらには不謹慎だとも。
けれど、ここにいる誰もがそんなドクターを非難したりはしない。
彼らは理解しているのだ。
これがドクターなのだと。
彼はただ、興味をそそられているのだ。
好奇心を抑えられない。
「ハウ・キューリアス! これだから僕は神秘と関わることを止められない!」
「あーあ、まぁたドクターの〝悪い癖〟が出たみたいだね」
エアクォーツの仕草をしながらスプレッド・レイザーが答える。
みたいだな、と鮮夜も頷く。
独り言――なのだろうか。
声のボリュームは大きなままドクターはぶつぶつと何かを呟いている。
鮮夜がそんなドクターに先を話すように促した。
「おっと、ソーリィ。つまりだ。エティエンヌたちの言う彼女の救済。それはジャンヌ・ダルクを救うと言う意味で間違いないだろう。なら、彼女を救うというのはどういうことなのか」
「ジャンヌ・ダルクが聖女であることを世界中に伝えるとか?」
「カルナ。ジャンヌ・ダルクは死後に復権裁判があった。だからこそ、今では聖処女として聖人認定されている」
「だったら、鮮夜はどう思うのさ?」
スプレッド・レイザーから投げかけられた言葉に鮮夜は、顎に手を当てて少し考えた後、自分の考えを述べた。
「意味は復活でも、ジャンヌ・ダルクそのままを復活させるんじゃないのかもしれない」
「ブリリアント! そういうことさ。多くの女性をターゲットに選んでいたことを改めて考えてみた。きっと、殺された女性たちはエティエンヌたちの目的に相応しくなかったんだろう」
不条理すぎる。
そんな理由でかつて誉れある戦いを繰り広げていた騎士たちが犯罪を犯すなんて。
「あくまでも推測だが、僕の頭脳を持ってすれば間違うことはほとんどない」
一般人がこんな科白を吐けば、嫌味にしか聞こえないだろう。
でも、ドクターは違う。
真実、彼は宇宙一天才なのだから。
これが当然のことなのだ。
そう認識していれば別段気に障ることもない。
「鮮夜も気づいたように死んだ者は生き返られない。だけど、この世界にはマティリアライズ・ミィスという現象がある」
「ってことは、俺やアリアのように具現化させるってことか?」
「それは無理じゃないのか、クー? おまえもアリアも自ら望んでこの時代に具現化したわけじゃないでしょ?」
そりゃそうだけどよ、と桜花のことを見ながらセタンタは答える。
「桜花の言う通り、マティリアライズ・ミィスは誰かが好き勝手に操れる現象じゃない。しかし、エティエンヌと一緒にいたジルが一体何者なのか覚えているかい?」
「えーっと、黒魔術士だよね?」
「スプレッド・レイザー、黒魔術士は何ができると思う?」
そんなことわからないとお手上げのポーズをするスプレッド・レイザー。
ヒーローの弱点が露見する。
魔術、魔法に関することをほとんど知らない。
「生贄があれば、その対価に見合った現象を起こせるってわけか」
鮮夜は一人納得したように声を出した。
「うん。クーや桜花、アリアならよくわかるんじゃないかな」
ドクターに話を振られてセタンタは指を鳴らす。
「なるほどな。大体読めてきた」
セタンタに全員の視線が集まる。
「つまり、アイツらはジャンヌ・ダルクの魂を引き戻そうってわけだ」




